第?話 求める者
暗がりの洞窟の中で少女は夢を見た。
「??ちゃん!起きないとまた遅刻しちゃうよ!もう??ちゃんたら!」
誰かの声が聞こえる。誰の名前を呼んでいるかすら分からないが
薄っすらと光が見え、あの子だと理解する。
「まだ……遅刻しないと思う……多分」
布団を深々とかぶり、声を遮る。
「いや……うん、そうなんだけど」
あの子が珍しく歯切れの悪い感じで毛布を揺すった。
何だろう……いつもと様子が違う気がする。
ただならぬ様子に布団をどけて、目を開けた。
すると懐かしい声はすぐに消えてしまった。
最近、眠るとこの夢を見せられ続けている。
そして、起きると唇から血が出るほどに噛んでいた。
微かに期待したのだろう、あの日に戻れたらと。
しかし、目を開ければ見れる光景は何も変わらなかった、何度見ても変わりはしない。
周りには朽ち果てた建物しかなく、動物や人間は居ない、ほぼ常に黒雲が立ち込めている最悪の場所。
「ふふ、やっぱり私に希望は似合わないのか?」
そんな最悪の場所で私は、誰かに問い続ける。それが誰かはもう少ししか覚えていないが。
「私は……お前を探してやるぞ、そして今度こそ……スノーお前を」
たった一度会っただけの少女、相手は覚えていなくても、私はもう一度あの顔が見てみたい、だからすべてを壊してでも。
私のいる場所は人が住む場所とは少し違う。この世界は魔女界と言われていて、人の入ってくる事が出来ない世界なのだ。ごく稀に入ってくる奴もいるが、大体は瘴気にやられてしまう。
「魔女様、スノー様を探すために発見できませんでした。一応それらしき人を見たと言うものが居たのですが、逃げられてしまい……」
洞窟から出て、家に着くと、黒いローブを着た女が居た。
昨日あの子を探せと命令したのが間違いだったのかも知れない、頭を抱えそう思った。
「し、しかしティーニアが追い詰めたと話してましたし、後少しで、見つかるかと」
「……もしかして、殺そうとしたりしてない?私の友達を・・・もし何かあったら……」
最後までは言わなかったが女はその先の言葉を理解し、頭を地面に打ち付け、許しを乞う。
「そ、そのような事は無いようにと思ってやっているのですが、なにぶん我々も集団ですので」
「統率が出来ていないのを自分のせいでは無く、仲間のせいだと?」
「ッ!そ、そのような事は」
額から血を垂らしながら、ひたすら、許しを乞う姿はとても腹立たしかった。
「もういい、下がれ、次は頼みます」
二度目のチャンスを貰え、女は喜び、くだらない忠義誓う。
「……違う、私が欲しいのは忠義ではない、ただ……一緒に居てほしいだけなのかも知れない」
瓦礫に座り、目を瞑り天を仰ぐ。
「スノー、お前にもう一度会いたいな」
この日少女は何百年ぶりに願いをこめた。