第32話 嘘
私達は洞窟を出て、街に帰った。街は以前より活気づき沢山の人がひしめき合っている。
「すごい人の量ね、これじゃあ迷子になるかも」
スノーの手を握る。
「わ、びっくりした」
急に握られて、心臓がとても速く脈打っている。
「さて、これからどうするの?」
「どうしよ、私今までは二人が居たから平気だったけど、居ないからちょっと不安になってきた」
「ふっふっふ〜、なら私に任せなさい!私なら何とかできるわ、おそらくきっと多分だけど」
右手を胸のあたりに持っていき高らかに言った。
「お〜!じゃあ一生ついて行くよ!」
リーテは期待の眼差しで見られ、昇天しそうになるが何とか留まる。
リーテと手を繋ぎ街を散策していった。街には一度来ているので知り尽くしているつもりだったが、まだまだ知らないお店があり、ワクワクしている。
「ねぇリーテ、あれ何?」「ん?あ〜、あれは服屋さんだよ」「えっ、幸福が買えるの?」「違う違う、そっちじゃない、着てる方の服」
たくさんの物に興味を示し、指を指し聞いていくうちにあっという間に夕方になっていた。
愚痴を漏らしながら帰路を歩いていると男の子に出会った。宿の場所を教えてくれた男の子だ。
「ほう、お前そいつと行動してるのか」
意味有りげな言葉、それにリーテを知っている。(ちなみにリーテは姿を偽っている)
「あなたは、久しぶりだね」
一礼して横を通り過ぎようとするが通してくれない。
「まぁ待て、そう急ぐ事も無いだろ?なぁ、ファルシア?」
ファルシアさん?唐突に出てきた名前に再び、びっくりする。リーテは偽名だったのかな?
「やめなさい!私はリーテです、断じてそのような名ではない」
腰の剣を抜き、男の子に向ける。しかし顔色一つ変えずリーテ?を見つめる。
「ふっ、そうかまぁ、俺はお前に会いに来たんじゃない、スノーに忠告しに来たんだ」
スノーは理解出来ないのか、口を開けて男の子を見つめている。
「ちゅう・・・こく?」
「あぁ、そうだ、スノーその女に気をつけろ」
リーテの方に指を指す。先程までの楽しい空気はなくなり、張り詰めたような空気が辺りに流れている。
「好き勝手言いますね、なぜ私が危険だと?」
声のトーンを落とし、苛立っているのは確実だ。
「スノーなら分かるんじゃないか?」
「えっ?私・・・ん〜そんな事言われても」
全く見に覚えが無いので縮こまり、しょんぼりする。
「まぁいい、とりあえず忠告はした」
忠告なんてものとは違う、あれは本と同じ私を惑わしているだけ、あいつは私とスノーを離そうとしているだけ何も気にする必要ない。男の子は背を向けて帰っていく。
「スノーあんまり気にしないで、私達は友達でしょ」
友達を少し強調して言う。それは半分脅しのようなものだ、スノーがそれで逃げだせばそれでいい。スノーは前へと踏み出し男の子に怒った。
「リーテの事を悪く言わないで!リーテは優しい人で、かっこいい人なんだから、だから危険な人じゃない!」
舌足らずで何を言いたいのか、自分でも分からない。それでも前に出て何か言わないといけない、ただそれだけの意思で行動する。
「スノー、それはお前の理想だろ?現実じゃない、優しい?かっこいい?だから何だ、そんなやついくらでも見てきた。この世界にそんなやつ五万といるさ、そしてそいつらは危険なやつばかりだった、優しさやかっこよさはそう見せているだけで待っているのさ、お前みたいな鎌かけられるやつをな」
「違うよ、少なくともリーテは違う」
言葉では言い表せないけど、確かな確証があった。
「何故分からない、何故俺の言葉を信用しない?」
「当たり前だよ!嘘を信じるわけないでしょ」
「嘘なわけあるか!魔女は悪だ、そいつも悪に決まってる!」
何度も見た目だ、怯えたような目、確証もないくせに決めつける目見るだけで虫唾が走る。しかし今は怒りはない、むしろ安心している気までする。スノーが前に立っているだけで何故かとても安心してしまっている。まるで母親が守ってくれているような絶対的な安心感。
「悪悪って、リーテの気持ちも知らないでよく言えるね!好きでリーテは魔女になったんじゃないのに!」
「気持ちだと、ふふふあははは!くだらない、お前はそんな嘘に騙されたのかよ、よくそれで嘘信じるわけないだぁ?」
笑いが止まらないと言った感じで、お腹を押さえている。
「どういう意味ですか?」
「お前は、俺を笑い殺す気か?止めてくれよ、流石に俺もこんな所で死にたくはない」
冗談混じりの会話に苛立ち、スノーが気づいた時には手を白くなるまで握りしめていた。




