第11話 初めての野宿
家から出て、とてもはしゃいでいたチトは疲れたのかスノーの膝の上で小さな寝息を立てて眠っている。案外こうして寝ている姿を見ていると起きている時との差があり、知らない一面を知れたとスノーは微笑んだ。
「それにしても、何も変わらないね、景色」
「はい、全然変わらないですね」
いつもと違う環境でも、スノーにかしこまった言い方をしてしまい、なかなか距離が近づけないミーアだった。
「あの、御者さん、後どのくらいで街に着きますか?」
「う〜ん、どのくらいか〜、まぁ、後4時間位だと思うよ」
4時間という長さに少女達はため息をついた。
ミーアもスノーも4時間ずっと動き続けるのは得意なのだ、しかしずっと座っているのは初めてでとても疲れる。
「そろそろ、野宿しませんか?馬を休憩させないと」
辺りが薄暗くなってきた頃に御者は手綱を引き、そう言った。
「野宿ですか?私達は猫族ですから慣れてますけど、スノー様が」
貴族に野宿させるのは品質が疑われるかも知れない、ミーアはそれを見越してのことだった。
「ん〜、そう言われても、馬だって生き物だし、これ以上動かして疲れたら、2日3日動けなくなるかも知れないし」
申し訳なさそうに、無理という事を伝えられ渋々受け入れる。
「野宿、スノー様本当によろしいかったのですか?」
木に凭れ掛り、心配そうにミーアが私を見る。
「良いんだよ、こっちの方が楽しいし」
スノーは無垢な笑顔で大丈夫だと伝える。
「うんうん、私も楽しいにゃ〜」
十分寝たからなのか、とても元気に動き回っている。チトやミーアは本来夜行性なので、毎日大変らしい。
毛布を被り、3人の少女は体を寄せ合う。
初体験の事ばかりに胸をドキドキさせながら眠りについた。
・・・・
3人の少女が眠りについた所を見計らい僕は起きる。いや、寝てすらいなかった。あの屋敷から出てきた時から気になっていた少女。息殺し、そっと少女達に近付く。二人の猫族の少女に囲まれながら寝ている、少女を見て更に興奮する。
更に近付き、手を伸ばし頬を撫でる。白い肌のなめらかな触りに更に堪能したくなり、触れようとする。
「お前、私の友達に何してる?」
肩を掴まれ、おどおどとしたふりをして、ナイフを振る。
しかし、振ったと思った手は無くなっていた。
「深淵に消えていろ、人間!」
小さく囁くように言った、黒い服を着た少女。
突如、地面が無くなる、いや、地面が水に変わり成すすべなく落ちていく。
「スノー、あまり人間を信じるな」
黒い少女は寝ているスノーに向かって、呟いた。
そして、宝石の埋め込まれた花柄のネックレスを掛け、そこに最初から居なかったかのように消えた。