九話 あの双子は
沈黙。誰から始めるかという視線が、部屋を巡る。そう、そしてそのあと。
「ぇえと、ま、まず俺は栗山矢人、この部の部長を務めることになりました。よ、よろしくお願い、します」
先生のいない間自己紹介は始まった。緊張気味の挨拶を手早く済ませると急いで席に座った。次は椿だったはずだ。
「ボクはこの部の副部長、宝瓶 椿だ。部長と一緒に頑張ってこの部活を引っ張っていくよ、よろしくお願いするよ」
なんか、猫をかぶってる感が半端じゃなかった。というか、ほんとに副部長をやるらしい。まぁ、実は真面目で努力家なのを矢人は知っているので適任だとは思った。……むしろ部長をやってほしかったくらいだ。そういえば三年生はいないのだろうか、そんな疑問を抱えていた時だった。
「じゃあ、自己紹介をっするねー!」
「するねー」
声を上げたのはあの双子だった。二人同時に自己紹介するつもりらしい。
「えーっとじゃあ紹介するネ!私の名前は、双子郁佳っ!この子は、双子三李!見ての通り双子ネ!苗字なだけに!アハハハハハハ~」
空気が凍った。気がした。片方の三李という少女は郁佳という少女と対照的に物静か(というか、恥ずかしがってるように見える)で、たまに繰り返したりする程度だった。そろそろ次かと考えていた、その時。
「実は、皆より年上ネ。こーみえて三年生ネ」
ん?爆弾投下。さっきのが、凍り付く程度ならば、今のは金づちで頭を殴られたような衝撃だった。
「――――――――は、――――」
ここにいる全員が同じことを思ったであろう。この言葉を合図に。
『――――はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」
部屋に全員(三人)の声がこだました。
ちょっと今回短いです。