二話 ファントム
「速報です。竹鶴市近郊で殺害事件が発生しました」
いきなり耳に飛び込んできたニュースに矢人は思わず振り返った。
「殺害は、ファントムによるものとみられ、現在も捜索を続けています。ファントムは非常に危険なので学生などは一人にならないように注意してッ―――」
「気を付けるんだぞ」と結茉に言おうとすると画面が暗転し、静寂をもたらす。ふと見やると、我が家の妹様が「おもしろくなーい」と言って電源を落としていた。
弁当の用意ができた矢人は、焼けたパンをかじりながら先ほどの事件についてかんがえる。
―――ファントム。今から200年前に異能力発生とともに現れた空想だけのもの、だと思われていたもの。言わば、妖怪や幽霊のようなものだ。基本的には、人間に害をなすものとみられていて、まぁ、そうじゃないファントムがいるとすれば、純粋な動物型ファントムか極めて希少な非攻撃型ファントムくらいだろう。まぁ、一番の目標はファントムとの共存らしいが。
「おにーちゃんは、部活はいるの?」
突然の結茉の質問にしばらくうなる。
「うーん……今まで特に入ってなかったし、家事とかもあるし入らないかなー」
「うん!わたしも~!」
「いや、お前はなにも用事ないだろ。楽したいだけだろ」
矢人の適確なツッコ…いや指摘に結茉は「にゃはー」とだけ生返事をしたが、特に悪びれた様子もなかった。結茉は「それより…」と続けて告げた。
「早くいかないとじゃない?」
「…………………………ん?」
しばらく脳の処理システムが機能しなかった。つまりは、今、7時50分。走ってぎりぎりかというところだった。
「なんでもっと早く教えないんだ!」
「いやだって今気づいたし」
能天気な妹に弁当を渡して兄妹達は一人は全速力で、一人は軽やかに彼らの学校、蓮星学園に走り出した。
なんか、まだ前回の引き続き感あってすいません。