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受け取ったよ。

「それじゃ行きますか」


1つ気合いを入れて私は自宅の玄関を出る。

今日は静嵐高校の編入試験の日。

昨夜の内に必要な物を玄関に並べ、今朝荷物の最終チェックを行ったので忘れ物の心配は無い。

(もちろん携帯の充電もバッチリだ)


試験会場は静嵐高校では無く、家から電車で30分程の距離にある系列の大学を選択した。

試験開始時刻はどの会場も朝9時開始なので自宅から3時間以上掛かる静嵐高校での試験では朝5時代の始発に乗ってもギリギリの到着になってしまう。


さすがに現実的ではないので今回は別会場での試験を決めたのだ。

秀一に会えないがやむを得まい。


「...その方が燃えるわ」


心の中に燃えたぎる物を確かに感じていた。

思い返してみればここまで真剣に勉強をした事は今まで無かった。

それだけ今回は人生を賭けているのだろう。


「よう麻里」


駅に向かう道の途中で待ち合わせた人に会う。


「おはよう謙二」


「麻里、昨日よく眠れたか?」


「まあリラックスはしたよ、あとは開き直りかな?」


昨夜は興奮の余り眠れなかった。

目の下にクマが三重に重なっている。

謙二は私の顔を見て笑った。


「大丈夫だ、麻里なら問題ない。

秀一と一緒に過ごせるさ」


相変わらず謙二は気配りの男だ。

謙二が池島高校から静嵐高校への転入を聞いた女子数人が泣いていたのを知っている。

気が優しくて力持ち、顔もなかなかの男前な謙二は意外に女子にモテるのだ。

(本人は真夏以外眼中に無いが)


「ありがとう謙二、お互い頑張りましょう。

4月から私は秀一と、謙二は真夏と同じ高校になりたいもんね」


「な...まあ、そうだな...」


私の言葉に謙二は目を丸くしながら頷いた。

驚ろいたでしょ?私は素直になるのだ!

そうこうする内に駅が見えてきた。

時刻は朝7時25分、これで8時過ぎには会場に着く。


「麻里...」


駅の改札に向かうと見馴れた制服の女性が声を掛けてきた。

その制服は今私が着ている制服と同じ池島高校の物、その声に私の思考は急停止する。


(なぜ彼女がここに?)

混乱した頭でじっと彼女を見詰めた。


「先に行ってるぞ」


謙二が私の横をすり抜けて行く。

驚く様子もないという事は謙二の手引きだな。


「玲美...久し振りね」


私は意を決して話掛けた。


「うん...」


玲美は伏し目がちに私を見る。

一時の不健康さは消え昔の綺麗な玲美に戻りつつある。

その姿は秀一と付き合っていた頃を思い出させ私の心境は穏やかではない。


「それで今日は?」


思わず冷たく聞いてしまう。

まだまだ本当の和解は遠いのかもしれない。


「これを」


玲美はおずおずと小さなポチ袋を差し出した。


「これは?」


「それじゃ」


「え?」


私の問いに答えず玲美は走り去って行く。


「これって...」


ポチ袋の中に入っていたのは小さなお守り、合格祈願と手刺繍された可愛いお守り。

それは私が病んでいた時捨ててしまった物とお揃いで秀一が玲美に作ってくれたお守りだ。


「あの子捨ててなかったのね」


お守り袋を見た私は呟いた。

そのお守り袋が不自然に膨らんでいる事に気づいた私は中を見る。

確かお守り袋の中には何も入って無かった筈だ。


「ん?」


中には小さな紙が丸めて入っていた。

私は震える指先で紙を取り出し中を広げた。


[麻里へ

試験頑張れ!

合格を祈ってます。玲美]


[追伸、秀一と幸せに。

でも私は今も好きです。ゴメンね。]


「玲美...」


小さな紙に書かれた少し滲んだ文字、頬を伝う涙が止まらなくなる。


「ありがとう玲美、また友達になれるよね。

合格したらお守りを返しに行くよ」


私は合格への決意と玲美との和解を胸に誓うのだった。


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