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私も変わりたいよ。

色々考え事をしていると時間が経つのを忘れ、気がつけば辺りは薄暗くなろうとしていた。


「6時か」


腕時計で時間を確認すると謙二達と分かれて2時間が経っていた。


「それにしても遅いわね」


携帯を取り出そうとポケットに手を入れる。


「あれ?」


其処には携帯で無く代わりに充電のモバイルバッテリーが入っていた。

私は慌てて鞄のファスナーを開き中を探すと、果たして携帯は鞄の内ポケットで見つかる。

携帯をチェックするが画面は真っ黒のままだ。


「しまった!」


昨夜遅くまで真夏や愛佳とラインしていた私は携帯の充電を忘れていたのだ。

だからモバイルバッテリーを持ってきたのだがこれも充電がされておらず殆ど私の携帯はバッテリーが切れかけの状態だったのを忘れていた。


気がつけば学食の職員達も後片付けを済ませ私しか人がいない。

心細さが私を襲う。

昔から愛佳や真夏が迷子になる事があっても私や秀一がなる事は無かった。

これ程不安な気持ちになるとは知らなかった。


とにかく場所を変えようと私はテーブルの荷物を鞄に入れ、その場を離れる。

知り合いのいない場所で1人っ切り、勿論帰る事は出来るがこれは例えようのない心細さだ。


「遅かったな麻里」


高校の門を出ようとした私を呼ぶ声。

それは私の大切な、愛する人の声だ!


「秀一...」


声を聞くだけで心が満たされていく、何て安らぐのだろう。

顔が赤くなり下を向いてしまう。


「どうした?」


伺うような秀一の声に見上げると優しい微笑みを浮かべていた。

見た目余り変わらないが10年以上見てきた私だ。僅かな違いでも分かる。


「ううん、何でも無い。秀一こそどうして此処に?」


(あー、ここは抱き着くとこだろ!)

愛佳や真夏なら躊躇わず秀一に飛び付いているだろう。それなのに私には出来ない。


「謙二から麻里と連絡が着かないと電話があったんだ。校内放送して貰ったそうだが考え事をしている時の麻里には聞こえてないだろうと思ってな」


「うん」


昔から考え事をしている時は周りの喧騒は耳に入らない私の癖を覚えていてくれていたのか。


(嬉しい...)

心に灯った暖かな気持ちに我慢が出来なくなる。


「秀一!!」


私は生まれて初めて自分から秀一を抱き締めていた。

愛佳と真夏には悪いが我慢が出来ない、仕方無いじゃないか。


「落ち着いたか?」


少し驚いていた秀一だけど引き剥がす事はせず落ち着くまでそっとしていてくれた。

秀一の優しさに私は無言で頷く。


「真夏達は?」


「謙二と一緒に帰ったよ」


「愛佳は?」


「『麻里なら心配いらないね』と言って寮に帰ったよ」


「そう、心配かけたかな」


真夏や愛佳の気遣いを確かに感じる。

きっと秀一が私を見つけ出すのを予想していたのだろう。

なんて私は恵まれているんだ。

家族、親友、そして秀一...


「私、転入しても良いかな?」


「ん?」


秀一には何の事か分からなかったようだ。


「私秀一と一緒に過ごしたい!

同じ高校の同じ教室で過ごしたいよ!」


「ああ、勿論だ」


「良いの...?私...秀一に...」


「もう昔の事は言うな、お前は2年前の昔の麻里だろ?」


「うん」


秀一の言葉に私の目から涙が次々溢れ出す。

秀一も変わった、昔の秀一はここまで私や愛佳、静嵐高校の皆に気遣える人では無かった。

愛佳も謙一も皆変わったんだ!

素晴らしい人、魅力的な人間に。


(私も変わろう、もっと素直な人間に...)


「ありがとう、私頑張るよ」


「ああ、勉強頑張れ。待ってるぞ」


そう言って秀一は私の頭を優しく撫でた。


(秀一、頑張るのは勉強じゃないよ。

素直になって秀一に告白出来るように頑張るんだ。

秀一...愛してる)


私は心の中で呟いた。

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