屑の最後だね。
「やっと諦めたか」
バイクの後ろに座る北川武志は後ろを振り返りながら呟く。
先程まで秀一が鬼の形相で追いかけていたのだ。
「とりあえず戻りますか?」
北川は前部座席でバイクを運転する男に声を掛けるが男は無言で走り続ける。
やがてバイクは人気の無い雑木林に囲まれた小屋に着いた。
バイクを停めて2人は小屋に入る。
おそらく工事現場の休憩所に使われていた物だろう。長い時間放置されていたらしく小屋のガラスは割れて鉄は所々が錆びていた。
「ただいま~元気だったか?」
ヘルメットを外し北川は懐中電灯を照らし小屋の中に転がる2人の男に話しかける。2人の男は両手両足を紐で縛られ口には猿轡をされていた。
それは和田翔と立花純一の哀れな姿だった。
「なんだよ、もうくたばっちまったのか?」
北川は和田達に近づいた。
「うわ臭っ!漏らしてるのか?トイレに行けよって縛られたら無理か」
馬鹿にしたように鼻を摘まみ北川は後ずさった。
ぐったりした2人は僅かに開いた目で北川を見るが力無く涙を流すだけだ。
「お前らも馬鹿だな、勝手に俺達から逃げて玲美に助けを頼もう何て考えるからこんな目に合うんだよ」
北川はそう言いながら和田の腹を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた和田は何も出来ず床を転がる。
「止めろ!吐いて窒息でもしたらどうする!」
ヘルメットを被ったままの男は北川を止めて呻く和田の猿轡を外した。
「た、助けてください...」
咳き込みながら力無く和田は言った。
「ば~か誰が助けるかよ。そうだ良い事を教えてやる。玲美は助けに来ねえぞ、俺達がボコってやったからな」
醜悪な笑みを浮かべ北川は言うと和田と立花の顔に絶望が浮かんだ。
「良いねその顔、広田や斎藤にもさせてやるぜ」
「お前は終わりだ」
北川の様子を黙って見ていたヘルメットの男は後ろで呟く。
「何ですって?」
北川は慌てた様子で男に振り返る。
「お前は終わりだ北川、玲美を連れて来れなかったばかりか、わざわざ自分が犯人だと名乗ったんだ。
広田達が来たのも玲美とお前が従兄弟だと知ったからだろう...馬鹿が」
「そ、そんな...」
北川の顔に絶望の色が浮かぶ。
その様子を見た男は
『今まで気づかないこいつは馬鹿か?』そう思った。
「お、俺はどうしたら?」
「諦めろ。お前の復讐は終わりだ」
「あなたはどうするんですか西...」
北川が何かを言おうとした瞬間、男は北川の腹を蹴り飛ばした。
その威力は先程の北川の蹴りの比ではない。
北川は数メートル吹っ飛ばされ壁に激突した。
「余計な事を喋るな!」
男はそう叫んだ。
「あ、あ...」
北川は苦しそうに呻く。一撃で戦意が喪失した様だ。
「来い」
男は北川の髪を掴み立ち上がらせる。
「や、止めて」
「駄目だ、後は俺1人でやる。俺の事を喋られた困るからな」
「お、俺は言いません」
「信用できん」
男は北川を引き摺りながら小屋を出ていく。
暫くすると何度か激しく地面に何かを叩きつける音と北川の叫び声が響いた。
小屋の中でその音を聞きながら和田と立花は恐怖で気を失いそうになる。
やがて男は1人戻って来た。
男のレーシングスーツは何かの液体で濡れていた。
「た、助けて...」
掠れる声で和田が呟く。
男は黙ったまま携帯を高く投げ捨てた。
天井に引っ掛かった携帯は電源が入っているのか僅かに光を放っていた。
男は黙って和田達を見ると小屋を出ていく。
やがてバイクの音が聞こえた。
「た、助かったのか?」
和田は呆然と呟いた。
翌日北川の携帯の電波を探知した警察により放置された小屋にいた和田と立花、そして外で意識不明の北川が発見された。




