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こいつも馬鹿かね?

翌日の放課後少し遅れて秀一は生徒会室の前にいた。

愛佳は先程まで秀一の傍を離れようとせず川井先輩が『青山さん心配いらないよ』

何度もそう言われ愛佳は服飾部に連れて行かれ、そしてようやく秀一はたどり着いたのだ。


昨日と同じように秀一は生徒会室の扉をノックする。


「はい」


生徒会室の中から返事があったがその声は男性のものだった。


「広田です」


「入りなさい」


秀一が名乗ると中から返事が返ってきた。秀一は静かに扉をひらいた。


「失礼します」


扉を開けると生徒会室の会議テーブルはコの字に配置されており真ん中に椅子が1つ、そして囲む様に椅子が12脚並んでおり既に全員が着席していた。


「遅くなりました」


秀一は静かに頭を下げた。

 

「大丈夫だ、まあ座りなさい」


年配の男性に促され秀一は真ん中の椅子に座り周りを見た。

座るように促した人物は見覚えがある

(校長か)

秀一は頭の中で呟いた。


「それでは本日の聴取を始めたいと思います」


生徒会長山下桜の声が響き聴取は厳かに始まりを告げた。


「広田君、君は先日北川君に対して両肘の関節を外した後、腹に強力な一撃を加えた事に間違いないね?」


座るなり校長の向かいに座っていた1人の男性が秀一に詰問口調で問い質した。

(あれは確か理事長だったかな?)

秀一は横目でちらりと確認する。


「はい」


秀一はあっさり認めた


「君は無抵抗な人間に対して危険な行為を行うような人物かね?そのような危険人物は当校には相応しく無いと私は考えるが」


いきなり理事長が秀一に迫る。秀一は山下会長に視線を送る。山下会長は僅かに首を振る。

『秀一君今は静かに聞いておけ』

そう言ってる様だ。


「理事長、待って下さい。あのとき北川はスタンガンに催涙スプレーを所持しておりました。実際男子生徒と女子生徒もスタンガンの被害に遭い広田君も催涙スプレーで目を怪我されていた事はご存知でしょう?警察も広田君の行動に問題無しと判断されておりますよ」


校長の横に座っていた1人の男性が異議を唱えた。


「君は?」


理事長は睨むように尋ねる。


「体育教師の井藤です。あの事件の際に最初に会議室に駆けつけた者です、あの時一緒に行ったでしょうお忘れですか?」


井藤と名乗った教師は呆れた様に理事長を見たが怯む様子は全く無かった。

そんな事は問題では無いと言いたげだ。


「ああ、あの時の教師か。君も見ただろう、広田の狂暴性を。何故その事に気づかんのだ?まあだからあの(北川)が我が校に被害を及ぼしたんだろうな」


理事長は先程北川君と言っていたが『屑』に言い方を変え秀一の事は『広田』と呼び捨てになっていた。

理事長の馬鹿にしたような発言に井藤は顔を真っ赤にして立ち上がろうとするが校長と隣に座っていた別の教師が押し止める。


「それなら山崎さん。あなたは広田君はどうすれば良かったと?」


理事長の隣に座っていた男性が静かな口調で尋ねた。


「決まっている、屑を拘束して我々の到着を待てば良かったのだ!広田ならそれは容易だっただろ?わざわざ傷害を負わせる必要など無かった筈だ!」


理事長は唾を飛ばしながら言ったが男性は静かに首を振った。


「話にならんよ、教師や貴方が会議室駆けつける事が出来たのはカメラを設置してモニターで内部を確認出来たからだろう?広田君に分かるはずが無い。いち早く北川を無力化させる為あの行動は容認されると私は考えます」


男性はキッパリ理事長の言葉を否定した。


「敷島、貴様!!」


理事長は額に青筋を浮かべ隣の男性に迫った。

(敷島?演劇部部長の敷島さんの関係者かな?)

秀一は理事長に恫喝されてもまるで動じる様子の無い男性を見ていた。


「山崎さん落ち着いて」


校長は理事長に静かに諭す様に言うが、


「喧しい!」


理事長は校長に向かって叫んだ。


「私は広田が危険な男だと確信する理由は今回だけで言っておるのでは無い!

こいつは中学時代に教師に対する暴行容疑があったのだ!

私はここに広田秀一の退寮を提案する。

いや退学だ!広田秀一は今日で退学だ!」


「山崎さん、あなたは何の権限があって生徒の退学を決めるのか?保護者会で問題になっているんだよ。君の越権行為こそが問題行動では無いのか?」


理事長に敷島が迫る、『いい加減にしろ』と言いたいのを堪えているようだ。


「煩い!!問題をすり替えるな!俺が今言ってるのは広田の過去の問題行動だ!広田は過去にも教師に対する暴行容疑、いや暴行しているんだ!校長、それでも広田を庇うのか?次はあんた達を襲うかも知れんのだ!」


「そ、それは...」


理事長の告発に校長達教師側に動揺が走った。

確かに秀一には中学校時代に暴行の嫌疑は有ったが中学校側の報告書を読んだ高校は問題無しと判断したのだ。

重苦しい沈黙が生徒会室に流れた。


秀一は静かに目を閉じて黙っている。

その心中は誰にも分からない。


「どうだ広田、何か言い訳が出来るか?言えまい事実は変えられんのだ。諦めろ!」


理事長は畳み掛ける様に秀一に指を指して嘲笑した。


「理事長、あなたは何故広田君をそこまで危険と思うのですか?」


1人の女子生徒が理事長に向かい口を開いた。

生徒会長山下桜だ。


「お前は聞いとらんのか?一連の暴行だ!」


「聞いてますよ、でも事情が有っての事ですよね」


「何?」


理事長は山下会長を睨み付けるがまるで怯む事は無い。


「聞こえませんでしたか?事情が有って...」


「馬鹿にするな!事情等あるものか!こいつは狂暴な男だ!事情など知りもしないで適当な事を言うな!」


「あなたこそ事情も知らずによく言えますね!」


理事長の言葉に山下会長は大声で言い返した。


「な...」


「広田君の中学校時代の暴行容疑...それは私の為に起こしてしまった事件です!!」


山下会長の叫びに近い声が生徒会室に響いた



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