全て真実よ。
ついに迎えた池島高校入学式。
立花純一は朝から浮かれていた、中学ではリア充のグループの中心に属し女子生徒の人気も高かった。
和田翔の様に特定の彼女は作らず言い寄る女子は全て食い漁って来たのだ。
もっとも広田秀一がグループに入ってからその様な事は無くなり秀一から受験勉強を教わったり、クラブ活動を頑張る等、健全なリア充グループになっていたが。
「さあて受験も終わったし、邪魔な奴はいないし俺達の天下だ!」
そう言って純一は家を出た。途中で玲美と亮、翔達と合流する。
「オッス」
「よう」
「おはよう」
4人は簡単な挨拶をする。
「早速2人で登校か仲が良いな」
純一は亮をからかう。
「まあな玲美は俺の女だって周りに分からせないとな、勘違いした馬鹿が来ねえとも限らないし」
亮は少し着崩した制服の袖を捲った。
その様子をウットリ見ている玲美。
「あれ麻里はどうした?」
麻里がいない事に純一は気づく。
「ああ、今日は少し寄る所があるから先に行っておいてくれってよ」
翔は少し淋しそうに言った。
「まあたまには別の女も行けよ、昔みたいにな」
「そうだな!」
「ちょっと純一、翔!」
「まあ良いじゃないか大丈夫、俺は玲美だけだよ」
浮かれて話す純一と翔を諌める玲美に亮は優しく口づける。忽ち顔を赤らめる玲美だった。
周りの生徒達の白い目にも気付かずに。
学校に着いてそれぞれの教室に入る。純一は翔と同じクラス、亮と玲美はそれぞれ違うクラスになった。早速純一は可愛い女子生徒に目をつける。
「おはよう」
「はあ」
「名前は?」
「何故教えなきゃ駄目なんですか?」
純一の囁きに心底気持ち悪そうな態度で逃げる女子。純一は首を捻る。
「あれ?」
「何だよ純一?勘が鈍ったのか?」
「うるさい!」
「こうやんだよ」
「ねえちょっと....」
「はい?」
「少し良いかな?」
そう言いながら少し覗き込む様に女子生徒に近づく。
「止めて気持ち悪い!」
女子生徒は翔を突き飛ばして行ってしまった。
さすがに何かおかしい、そう思う純一と翔。
しかし、いきなり男子生徒に声をかけられてホイホイ女子生徒がついていくはずもない。
そんな事も分からない2人だったが、本当におかしいと感じていたのは玲美だった。
亮と違うクラスになり1人教室に入る。
その中に同じ中学校の知り合いが他のクラスメートとお喋りしているのを見つける。
「おはよう」
玲美は声をかけるが相手の反応は完全な無視だった。
「あれ?気づかないの北川だよ北川玲美。2年の時に同じクラスメートだったじゃない」
そう言いながら再度聞く、今度は相手の肩を触りながら。
「触らないで!」
無視をしていた女子生徒が大声で玲美の手を叩く。
「え?」
「気持ち悪いよ!」
「なにが....」
訳が解らず呟く玲美。
「分からないの?教えてあげる、あなた秀一君と付き合っていたでしよ?」
「うん、でも別れて...」
「あんたが2股かけて秀一君を一方的に捨てたんでしょ!
一生懸命勉強の応援で世話になっておきながら信じられない!」
女子生徒の声に何も言い返せない玲美、全て真実なのだから。
「だ、誰から聞いたの?」
「教えないよ」
「教えてよ!」
必死にすがり付く玲美、しかし逆に騒ぎが大きくなり他の生徒の注目を集めてしまう。
「おい、あの女子」
「ああ校門前でキスしてた」
「嘘、信じられない」
「何でも自分から告白して飽きたら次の男と浮気だってよ」
「うわっ!最低!」
「その浮気相手の男もこの高校らしいぜ」
「何でも寝取るのが趣味とかで彼氏持ちしか興味ないらしいわよ」
「止めて!」
周囲の噂話に耐えきれず玲美は教室を、学校を飛び出して帰るのだった。
同じ頃亮は教室に入ってから異様な空気を感じていた。
明らかな敵意である。
「おい何だよ!」
堪らず亮は凄むが周りの反応は無い。
「何とか言えよ!入学一発目からシカトかよ!」
更に椅子を蹴り飛ばし威嚇する。
「黙れ」
静かに立ち上がった大きな生徒190近くあるだろう。
「な、何だよ!」
喚きたてる亮に対して全く動じすに静かな目をしている
「お前が佐藤亮か?」
男は聞いた。
「そ、それがどうした」
「そうかお前が広田秀一の彼女を寝取った佐藤亮か!」
大男は大きな声で言った。
「誰だよお前は?」
混乱しながら亮は男に聞いた。
「寝取り男に名乗る名はない。言えば俺の周り女が全て不幸になるからな。
まあ俺には彼女はいないから良いか、俺は謙二だ」
そう言って笑った。
「ふざけるな誰が寝取り男だ!玲美から来たんだぜ、詰まらん男と別れたいからお願いってよ」
秀一の名前を聞いたとたん謙二は亮の前に立ちはだかる。
「おい、秀一が何だって?」
先程までの嘲る声で無く相手を威圧する声だ。
(ヤバイ)
そう思った亮は正拳を男の腹に撃ち込む、しかし全く効かない。
「みんな見たな、最初に怒鳴ったのはこいつ、
先に手を出したのもこいつ」
謙二は周りに確認した。
「大丈夫だ録音したよ」
「俺、動画とったから」
「ふざけるな!」
逆上した亮は他の生徒に掴みかからんとする。
「こら!」
謙二は亮の首根っこを制服ごと掴むと軽く持ち上げ、下に叩きつけた。
亮は失神してしまい、保健室に運ばれ入学式には出席出来なかった。