生徒会長かね?
「小百合...何だこれは?」
ある日の書斎で報告書を手に溜め息を吐くこの男、静嵐高校理事長山崎光一である。
「何と申しましても...広田秀一の報告書ですわ」
光一の質問に顔を赤らめているのが娘の山崎小百合、手芸部の部長にして前回ある男に脅迫をされて秀一達に危機を救って貰った1人だ。
「そんな事は分かっている。私が聞きたいのは内容だ、私は広田秀一の身辺を洗う様に言ったのだ」
「ええ、ですからこれを」
山崎小百合の言葉に光一は呆れた様にまた溜め息を吐いた。
「小百合...広田秀一の家族構成や誕生日、学校の成績等別にお前に調べて貰わなくてもこちらで把握している」
「ええ、ですから2枚目に秀一君の個人情報を」
「好きな食べ物や好きな動物、彼を慕う幼馴染みの情報か?」
「ええ、彼の趣味嗜好、更に人間関係まで完璧ですわ」
自信ありな顔で父親を見る小百合に光一は思った。
『駄目だこの娘、広田秀一の危険性を探る意図を全く理解していない』
光一は再度呆れた目で小百合を見た。
しかし娘の目は熱を持って父親を見つめていた。
「分かった...下がって宜しい...」
諦めた様に呟いた。
「ありがとうございますお父様、今後も秀一君の調査を続けます」
そう言うと嬉しそうに書斎を後にした。
「なんたる事だ...」
小百合の目を見た光一は今更ながら理解する。『娘は広田秀一に惚れている』
この瞬間この親バカ理事長の広田秀一に対する認識が、学校の危険人物であり更に娘にとっての危険人物でもあると改められた。
「なりふり構ってられんな」
そう呟く山崎光一は一人の生徒に連絡を取る事にした...
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「おい秀一、お前何をしたんだ?」
学校の寮の会議に出席していた斎藤謙一が夜遅くに戻って来るなり秀一の部屋を訪ねて聞いた。
「いきなり何だ?」
秀一は酷く動揺している謙一に聞き返す。
「今、寮の合同会議に行ってきたんだがいきなり女子寮の寮長が広田秀一の退寮を含めた聴取を要求されたぞ」
「何?」
謙一の言葉に今度は秀一が動揺する。
「お前の事だから何もして無いと俺は思うが厄介な奴を敵に回したな」
「厄介な奴?」
「ああ、お前も面識位あるだろ?あの屑を追い込んだ時に座っていた生徒会長を」
謙一の言葉に秀一は文化祭の最終打ち合わせの時に座っていた生徒会長を思い出そうとするが興味の無い人物の顔を覚えるのが苦手な秀一は思い出せない。
「すまん忘れた」
秀一はアッサリと忘れた事を謙一に告げた。
「お前は...あの生徒会長が女子寮の寮長だよ、下らんルールを作った張本人だ」
「下らんルール?」
それも忘れたのか?
「ああ」
秀一の全く気にしない性格を謙一は羨ましくなる。
「男子が女子寮に近づくと制裁とか馬鹿なルールだよ」
謙一の言葉に秀一は愛佳が以前言っていた事をようやく思い出す。
「聞いた気がするがなぜ俺が退寮なんだ?」
「知らんよ、男子寮の寮長は腰抜けで空気みたいな奴だから聞く事も出来んのだ。俺は副寮長だから会議の発言権は無い。涼子もな」
「涼子?」
「川井だ、川井涼子、お前自分のクラブの副部長の名前くらい覚えろ」
謙一の言葉に川井先輩の名前は涼子なのかと今更知る秀一だった。
「それで聴取は何時だ?」
「明後日だ。放課後に生徒会室で学校関係者も含めた聞き取りを行うそうだ」
「随分急だな」
「ああ、あの女は一筋縄ではいかんぞ」
「そうなのか?」
秀一はもう一度前回の文化祭の打ち合わせ会議の時に見た生徒会長を思い出そうとするがやはり思い出せないのだった。




