最後まで卑怯だね。
「それでは続けます。手芸部で何があったのですか?」
生徒会長の質問が再開された。
「...はい、私は脅されて北川のハーレム等と言う馬鹿げた物を作る事を強...強制されて女子部員を差し出すように言われました」
山崎の言葉に出席していた事情を知らない周りのクラブ代表達に動揺が走った。
「そして私は北川の命令を聞いた振りをしながら...」
山崎の話は続いた。
他の部員を北川から守る為に嫉妬深い女を演じた事、北川は新入部員に目を付け手芸部に入った女子達をもっと貶す様に命令し、一方で助ける振りをしながらセクハラ行為を繰り返した事、演劇部の部長に女の子を宛がう様に命令された事を涙ながらに告白した。
「ほ、本当ですか?」
聴取していた別の生徒会役員が思わず確認する。
「事実です。被害を受けた演劇部の部員や手芸部を辞めた人達の証言を集めた調書がここに」
敷島はそう言うと1冊の冊子を生徒会長に手渡した。
冊子を捲ると被害の証言が細かく書かれていた。
「...何故そこまで放置したの?」
余りに酷い被害内容に冊子を見た会長を始め生徒会の人達も唖然とした。
「...全ては私の落ち度です。私は北川に嵌められ酷い写真を撮られてしまい、それをネタに...私の父親にバラされたくなければ言う事を聞けと...」
話が脅迫の核心になると山崎の体は震え始め、これ以上は聴取を続ける事が困難となった。
会議室内に山崎の泣き声だけが響いた。
「この事は校長や学校関係者に報告します。宜しいですね?」
「...はい、お父様..理事長にも全て話しました。如何様な処分も受ける覚悟は出来ております」
山崎は静かに頷いた。
「それでは今日の会合はここまでと致します」
会長の声に会議は解散となり、クラブの代表者達は会議室を後にする。
「それじゃ私達も行きましょうか」
清水の声に敷島も立ち上がり山崎を立たせようとするが力が抜けてしまったようで椅子から立ち上がらせる事が出来ない。
「俺が連れていきます」
「ありがとう、私達は一旦部室に戻るから小百合を宜しく」
秀一に後を任せて清水と敷島は会議室を出た。
「意外と呆気なかったな」
謙一はそう言いながら項垂れたまま動かない北川の手を縛っていた紐を解いた。
「ほら立て」
謙一が強引に北川の腕を掴んで立たせようとした時、
「ぐあ!!」
突然謙一は叫ぶとその場に崩れ落ちた。
「謙一!」
秀一は謙一の異変に駆け寄ると北川は口にくわえさせられていた紐をずらし、山崎の後ろに回り込むと羽交い締めにした。
「間抜け共が」
「貴様...」
「おっと動くなよ、これが何か分からない程馬鹿じゃないよな?」
北川は右手に握った黒い小さな箱を秀一に見せつける。
握られた箱の先は2つに分かれ、その間から電気がスパークする。
「スタンガンか」
「せいか~い、電圧50万ボルトだ。おい斎藤動けねえだろ?」
「く、糞が!」
床に這いつくばる謙一は体を動かそうとするが痙攣したように震えるばかりだ。
「便利だよな?ネットなら何でも買えちまうんだからよ、さあ立て!」
北川は山崎の腕を強引に掴んで首筋にスタンガンを押し当てた。
「何をするつもりだ?」
秀一は北川に言った。
「鍵を閉めろ」
「何?」
「鍵を閉めろ!早くしねえとコイツを小百合に喰らわせるぞ!」
北川はスタンガンの先を更に山崎の首筋に押し込んだ。
「分かった」
秀一は会議室の扉に鍵をした。
「閉めたぞ」
秀一は北川の方を振り返った。
「ご苦労さん」
北川が嘲るように言った次の瞬間秀一の目にスプレーが散布された。
「ツ!」
猛烈な激痛が秀一の目を襲う
「どうだ催涙スプレーは?スタンガンに催涙スプレーなんて俺って洒落てるよな?」
「し、秀一!」
顔を押さえてうずくまる秀一を見て謙一が必死で自分の体を起こそうとした。
「しぶといねぇ」
北川が山崎を羽交い締めにしたまま斎藤に近づくと背中に再度スタンガンを押し付けた
「ぐあ!!」
謙一は再び床に倒れた。
「バーカ」
「ぐ!」
北川は笑いながら斎藤の脇腹を蹴りあげた。
「や、止めなさい!あなたはもう終わりよ!諦めて私と一緒に処分を受けなさい!」
ようやく山崎は震える声で北川に羽交い締めにされながら叫んだ。
「ふざけんな!よくも裏切りやがったな?まだ間に合うぜ、今からでもさっきの話は全て嘘でした、私1人のやった事ですって生徒会長達に言って来いよ。そしたら写真はバラ撒かないでやるよ」
「だ、誰が今さら従うもんですか!」
山崎は叫びながら北川のスタンガンを持つ右手
に噛みついた。
「痛っつう!何しやがる!」
北川は山崎の反撃に羽交い締めを解いたがスタンガンは手放さなかった。
「食らいやがれ!」
激昂した北川は山崎の体にスタンガンを押し付けた
「止めろ!」
ようやく流れる涙で視界が戻りつつあった秀一が叫んだ。
「ギャ!」
「思いしったか、糞が!」
北川は秀一の叫びに耳を貸さず山崎の背中にスタンガンをスパークさせた。
山崎は短く叫ぶと俯せに倒れたまま殆ど動かなくなった。
気は失われてはいないが強力な衝撃を背中に受け呆然としているのだろう。
「貴様...」
その光景を霞む視界で見ていた秀一は立ち上がり、静かに呟いた。
「何だもう動けるのか?」
北川は決して安易に秀一には近づかない。スタンガンがあるとはいえ秀一の間合い入るのは危険と覚っていた。
「....」
何も言わず秀一は北川に近づいた。
「馬鹿がもう一発食らいやがれ!」
北川が催涙スプレーを秀一に再び散布しようと引き金を引く。
「あ?あれ?」
しかし催涙スプレーは散布されず北川は間抜けな声をあげた。
北川の催涙スプレーは1回使い捨てを忘れていたのだ。
「く、来るな!」
催涙スプレー投げつけるが秀一は手で叩き落とした。
「あ、ああ」
北川はいつの間にか秀一に壁際に追い込まれていた。
「畜生!」
北川は最後の抵抗とばかりにスタンガンを秀一に向けた。
が、秀一は素早く北川の腕の間接を抱え込むと表情も変えずに逆方向に腕を捻る。
嫌な音と共に北川の右腕の肘はブラリと反対側に垂れ下がり北川の右手からスタンガンが手放され床に転がった。
「ギャー!!」
外れた右肘をを左手で抱えながら北川はしゃがみこむが、秀一は黙ったまま今度は左腕を掴んだ。
「や、止めろ秀一!」
謙一は必死で秀一に向かおうとするが体が上手く動かない。
...再び嫌な音が響いた。
「ギャ!!」
左腕の肘の間接も外された北川は芋虫の様に逃げようとするが秀一は髪を掴み立たせると静かに呟く。
「抵抗出来ない気分はどうだ?」
「ゆ、許して下さい...」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で北川は秀一に許しを乞いた。
「お前はそう言った人を許した事があるのか?」
秀一の右拳が北川の腹にめり込んだ
北川は崩れ落ちたが外された両腕では腹を押さえる事も出来ずその場に胃液を撒き散らした。
「........」
無言のまま秀一は北川に近づく。
「止めい!」
ようやく立ち上がった謙一は秀一にすがりつくがやはり痺れた体ではくい止める事は出来ない。
「あ、あ、ア....」
そう言いながら北川はその場で気を失う。しかし秀一は止まらない。
「止めて!」
その時、突如会議室の扉が開き1人の女子が秀一の体を押さえ込んだ
「秀ちゃんもう止めて...」
愛佳は涙を流して秀一を抱き止めた。
「愛佳...」
秀一の顔に表情が戻って来る。
「こ、これは...」
愛佳に続いて会議室に入る数人の生徒や教師の姿が見えると、
「大変な事になってしまったな...」
謙一は痺れる体を壁に支えながら立ち上がりそう思った。




