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帰ろうかね。

秀一が寮に帰る時が来た。

先程から真夏が秀一の袖を引っ張りながらグズっている。


「ほら泣かないの」


「だって...」


駅のホームで優しく真夏の涙を拭く麻里を見て秀一は2人は完全に和解した事を実感する。


「真夏ちゃん、また夏休みに帰るから」


愛佳も優しく真夏の頭を撫でる。

3人の中で一番小柄な真夏はよくこうして頭を撫でられていた。


「もう愛佳ちゃん、私は中3だよ!」


「あら、今でも秀ちゃんにして貰ってるんでしょ?」


真夏の言葉をまるで気にしない愛佳は秀一との秘密のお楽しみをあっさり言った。


「そうなの?」


「もう愛佳ちゃん!」


麻里にも知られて顔を真っ赤にしながら真夏は頬を膨らませる、そんな3人を微笑みながら秀一は真夏を呼ぶ。


「真夏」


「何?」


「ありがとな、夏休みには必ず帰るよ」


秀一は優しく真夏の頭を撫でた。

こうして穏やかに帰る事が出来るのも真夏のお陰であるのは間違いない。

そして秀一自身の気持ちの変化をもたらした事も。


「に、兄ちゃん」


撫でられながら真夏は秀一が理想の兄になった事を神に感謝した。


「良いなあ...」


そんな2人の様子を見ていた麻里が思わずこぼす。


「え?」


「麻里....」


麻里の言葉に真夏と愛佳は驚きの声を上げる。

昔から真夏や愛佳が秀一に甘えていても麻里は素直になれなかった。


「ご、ごめんなさい...」


愛佳と真夏の視線に頭を赤くして麻里は言った。

秀一は静かに麻里に近づく。


(秀一が麻里の頭を撫でるのか?)


そう思ったが秀一は麻里に右手を差し出した。


「またな」


秀一は優しく麻里に笑った。


「うん」


麻里も微笑み返しながら秀一の手を握る。

その様子を見て愛佳は秀一と麻里の和解を実感した。

同じくその様子を見た真夏は自分は特別(撫でて貰えて)と思った。


やがて電車がやって来た。

とうとう我慢出来ずに真夏は涙を流す。


「じゃあな」


秀一は真夏の頭に右手を左手を麻里の頭に置いた。


「え?」


麻里の目が大きく見開かれた。


「真夏を頼むぞ」


「秀一...」


(秀一の期待を裏切る事は出来ない)

麻里はそう誓うのだった。


「行っちゃったね」


走り出す電車を送りながら真夏はポツリと呟く。


「ええ」


麻里もそう言った時にホームに走って来た人がいた。


「秀一の奴...待ってろって電話したのに」


息を切らして走り去る電車を見る斎藤謙二だ。


今回帰省している事を謙一から聞いて秀一と電話で話していた2人だった。(会う事は上手く予定が噛み合わず出来なかった)

今日見送りに行く事を事前に約束したが、当日になって謙二に用事が出来てしまい、遅れる事を伝えようと何度か電話をしたが秀一の携帯は鞄の奥底に仕舞われていた(しかもマナーモード)



「げ、筋肉達磨」


謙二を見た真夏は顔をしかめる。


「誰が筋肉達磨だ...って麻里もいたのか...何か雰囲気が戻ったな」


「ありがとう、もう大丈夫よ」


麻里は謙二にそう言って頭を下げた。


「そうか、良かったな真夏」


「気安く呼ぶな筋肉!」


「誰が筋肉だ?」


「それなら達磨!」


「おい!」


真夏と謙二の掛け合いを見ながら麻里は昔の様にまた皆一緒に過ごせる日々が来る事を夢に見るのだった。


その頃電車の中では秀一は愛佳の頭を撫で続けていた。


「幸せ....」


「...手が疲れた」




ぼちぼちですが更新します。

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