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98話

俺達は家に着き、今中に入ったところだ。

俺は床に国家代表を下ろし、縄で縛る。

「おい、起きろ」

俺はそう言って、国家代表の体を揺する。

すると、国家代表は意識を取り戻す。

「……はっ!ここは!?」

「家の中だ。それより、あんたにやってもらう事がある」

「なっ!?貴様、私を誰だと思ってる!」

「金と権力に溺れた哀れなおっさんだろ?」

「ふざけるな!」

国家代表は怒鳴る。

「おいおい、本当の事を言っただけだろ?あんた達は魔族を使って、今まで金と権力を得てきたんだからな」

この世界は、国家代表や政治をしているやつらが魔族を使って、金と権力を得ている。そして一般市民は魔族は悪いやつだと認識させられ、国家代表や政治をしているやつらを信頼している。自分達は騙されていると気づかずに。

「あんたらは、今まで魔族を利用した」

「でも、レイ。文献には魔族が人間を襲って来たって……」

アイリスがそう言ってくる。

「文献なんていくらでも書き換えられる。それに、過去に本当に魔族が襲って来ていたとしても、それは一時的なものか、一部の魔族の仕業だ。今はそんな事をする魔族がいない」

「え?」

「どうしてそう言えるの?」

俺は2人に説明する。

「もし過去に魔族が襲って来ていたとして、今襲われていないのは何でだと思う?」

「え、それは人間のソウル・リベレイターの実力が上がったからでしょ?」

「違うよ。人間ソウル・リベレイターの実力は上がっていない。今人間が魔族と戦えば、確実に負ける」

「え、どうしてそんな事が言えるの?」

「俺が実際に魔族と戦ったからだよ。魔族の学生は、国立グロリア学園の生徒より遥かに強い。それに、魔族1人に対して集団で戦わないといけない事からも、人間の方が弱いのが分かる」

「じゃ、じゃあ何で襲って来たなんて……」

「それは恐らく、その時の人間が感じた劣等感と恐怖心が原因だろうな」

「劣等感と恐怖心?」

「どういう事?」

「人間は弱く、魔族は強い。当時の人間は、それを認識したんだ。そして、それが劣等感となった。どうして俺達は魔族より弱いんだってな。すると、今度は恐怖心が芽生えた。俺達がこの事に気づいたって事は、魔族もそのうち気づくだろう。そうなれば、俺達は蹂躙されるんじゃないかってな」

「そんな……」

「そんな事があるの?」

「あるさ。そしてそうなれば、蹂躙される前に魔族を排除する方向に向かう。そして魔族は何が何だか分からないまま、人間に排除されていったんだ」

「そんな戯言、誰が信じると思ってる!」

国家代表は俺にそう言う。

「分かるんだよ」

「何がだ!」

「俺には分かる。原初の魔王がどんな魔族だったのかがな」

「何を言ってる!」

「見せてやるよ」

俺は呪文を唱える。


「我、手にするは魔王の力」


「闇を纏い、光を飲み込む」


「我が魂、その力を使い」


「暗く深い闇の深淵へと葬り去る」


「サタン・ソウル・ドライブ!」


その瞬間、俺は闇を纏った。

それが晴れると俺は闇を纏い、黒いマントを羽織った姿になり、刀も黒く染まっていた。

「な、何だ!?貴様、さっきもその姿だったな!?一体何なんだ!?」

国家代表は俺の姿に驚く。

「俺は魔王の力を手に入れた。これは魂の上書きだ。そして、それ程の力には編み出した人の性格や感情によって大きく変わってくる。この魔王の力もそうで、能力は防御力の向上だ。これには、魔王の優しさが溢れてる」

「はっ!魔王の優しさ?そんなもの、魔王にあるわけないだろう!」

「そんな事ねえよ!俺には伝わってくるんだ、この力で他の魔族を助けようとしてたってな!」

王の力は沢山の人を助けるため、仲間とともに敵を速攻で倒すために編み出された力だった。この魔王の力は魔族を危険から守るため、防御力を上げたんだ。

「……そう言えば、魔王城にあった絵画には確か、魔王が魔族の前に立っている姿が描かれていたわね」

ヨセリアさんがそう言う。

「そう、あの絵にも描かれていた通り、魔王は魔族のために努力していた」

それは、俺が魔王城で読んだ書物にも書かれていた。

「そして、今の魔族達も優しいやつが多かった。それなのに、あんた達は金や権力のために魔族を攫い、殺し、悪者にした」

そこで一旦、俺は俯き……

「てめえらのやり方は命に対する冒涜だ!俺は絶対に許さねえ!」

顔を上げ、国家代表にそう怒鳴る。

そして刀を鞘から抜き、国家代表の首元に当てる」

「ひえっ!?」

「さあ、ここで死にたくなければ、自分達の今までの悪事を世界中に広めろ」

俺はそう言う。

「そ、それは出来ない!そんな事をすれば、私は……」

「じゃあ、仕方ない」

俺は刀を振り上げ……

「じゃあな」

振り下ろす。

「ま、待て!分かった!言う通りにする!」

俺は刀を国家代表の顔の前で止める。

「本当だな?」

「あ、ああ、もちろんだ」

「もし、嘘をついたら……」

俺は刀を目の前に持って行き……

「命はないと思え」

「は、はい!」

「……よし、それじゃあ戻るか」

俺はアイリスとヨセリアさんにそう言う。

「え、戻るの?」

「当たり前だろ。こいつの持ってる証拠の資料もあるし、何よりもあそこなら偉いやつが全員いるからな」

俺のその発言に、アイリスとヨセリアさんは苦笑いだ。

「難波君って、絶対敵にしたくないわね」

「う、うん。でも、そんな事にはならないんじゃないかな、うん」

何か言われているが、気にしないでおこう。

「そんじゃ、行ってくる。2人は待っててくれ」

「うわっ!?」

俺は国家代表を担ぎ、玄関へ向かう。

「え、私達は行かなくていいの?」

「ああ、大丈夫だ。だからここにいてくれ」

「で、でも……」

「大丈夫。ちゃんと帰ってくるさ」

俺は笑顔でそう言う。

「……分かった」

アイリスは了承してくれた。

「行ってくる」

「うん、頑張ってね」

「気をつけなさいよ」

「ああ」

そうして、俺は再び国家戦士達のいる建物を目指したのだった。


「何とか着いたな」

人目を避けるために遠回りをしたが、何とか日没までに間に合った。

「おい、さっさとしろ。さっき言った通りにするんだぞ」

「は、はい」

そうして、俺は国家代表を担いで歩き出す。

街でもそうだったが、中でも国家代表が攫われた事で大騒ぎだった。

「よし、あそこだな」

俺は建物の側面から、国家代表がいた部屋に向かって飛ぶ。

「よっと、着いたぞ」

窓は俺が壊したため、開いていた。

「ほら、さっさとしろ。大声を出すんじゃないぞ」

俺はそう言って、国家代表を離す。

国家代表は素直に書類を出し、それを俺に渡す。

「こ、これです」

俺は中を確認する。

「……おい」

「は、はい」

「確かにこれは魔族を攫った証拠だ。だがな、あんた達がしてきた事を証明するものじゃない」

この書類には、どこにも国家代表や他の偉いやつらが指示したとは書いていない。

俺は刀を鞘から抜く。

「ひいっ!」

「おい、全部出せ」

「そ、それは……」

俺は刀を構える。

「早くしろ」

「は、はい!」

そうして、今度こそ国家代表は決定的な証拠となる資料を持って来た。そして、それを部屋の印刷機のようなものでコピーする。

「よし、行くぞ」

「え!?」

俺は資料をカバンの中に入れ、国家代表を担ぐ。

そのまま窓から飛び降り、俺は走り出す。

急がないとな。

俺は夕日を見ながら、急いで目的地に向かったのだった。

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