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94話

俺は4人に、理亜について話し出した。

そこで……

「パトリシア様、ただ今戻りました」

用事があったのか、どこかに行っていたノセレさんが戻って来た。

「どうされたのですか?」

俺達の様子から、何かあったと感じたのだろう。

俺はノセレさんに経緯を説明する。

「そんな事が……」

「取り敢えず、ノセレさんも聞きますか?」

俺がそう言うと、ノセレさんは頷くので、俺はそのまま話し出した。

理亜と出会って、一緒に楽しく過ごして……それから理亜が殺された事まで。

設定として、俺はアイリスが来る前の4歳という事にした。

そうして話し終えると、みんな黙ったままだった。

「何だよ、そんなに暗くなるなよな」

「そんな事言われても……」

そうパトリシアが言う。

「まあ、あの時は俺に力がなかったからな。俺が悪いんだよ」

「そんな事ないと思います。難波さんは当時4歳の子供だったのでしょう?」

まあ実際は違うのだが、そういう設定だからな。

「それでも、俺に力がなかったのは事実だよ」

そう言って、俺は口を閉ざす。

すると……

「その人は、レイにとって大切な人だったんだよね?」

アイリスが聞いてくる。

「ああ」

「復讐しようとは、思わなかったの?」

そう聞いてくる。

「……前にも言ったけど、復讐は何も生まない。そんな事をしても理亜は喜ばないと思うしな」

「……それなら、何のためにそんなに強くなったの?」

「……もう、大切な人を失わないためだ」

「大切な人を……」

「ああ。アイリスやヨセリアさん、それにパトリシアにメイリー、ノセレさんも俺にとっては大切な人だ。だから、もう失わないために強くなった」

「……」

「アイリスもそうだろ?もう自分みたいな人がいなくなるように、俺と一緒に修行したんだろ?」

「……うん」

「俺達だけじゃない、みんなあるはずだ。失いたくないものが、人間とか魔族とか関係なく」

「でも、私の両親は……」

「魔族に殺された。でも、それはおかしいと俺は考えているんだ」

「え?」

「どういう事かしら?」

俺は、ずっと考えていた事をみんなに伝える。

「俺はずっと考えていたんだ。どうして魔族は人間を襲うのか。その答えは、初めて魔族と会った時に分かった。人間が魔族を攫っているんだ」

「でも、人間が魔族を攫う理由なんてないわよ?」

そうヨセリアさんが言う。

「確かにない、俺達にはな」

「どういう事?」

「魔族を攫う理由、それは魔族に人間を襲わせるためだ」

「え!?」

「何ですって!?」

「そんな事して、何になるの?」

「そうだな、順を追って説明しよう。先ず、魔族が人間を襲う。そうすると、人間は魔族を悪いやつだと思うよな」

「ええ、そうね」

「すると、魔族を倒そうとする人間が出てくる。そして倒せば、周りの人間から賞賛される。恐らく、それが狙いだ」

「どういう事?」

「一見、何の得もないように見えるが、実際は違う。襲ってくる魔族を倒せば、それは栄誉な事だ。だがまた魔族に襲われるかもしれない、だからその魔族を倒した人間は用心棒として雇われる。そして、魔族に襲われた街や村は、復興作業をしないといけないから雇用が増える。これを上の人間はどう思うか」

「あ!」

パトリシアは気づいたようだ。

「上の人間から見たらこうだ。先ず、実力のあるやつを手元における。そして復興作業により経済は活性化する。そして何より、魔族という共通の敵を倒すために、みんな団結する。これ程上の人間にとって都合のいい事はない」

「でも、それって魔族が襲って来ないと成り立たないわよね?」

「ああ。だから、魔族を攫うんだ」

「……成る程」

「どういう事?」

まだアイリスは分かっていないようだ。

「つまり魔族を攫えば、魔族は攫われた仲間を助けようと人間界に攻めてくる。それを実力者に討伐させる。そして襲われた街や村は復興作業に入る。それを繰り返すんだ」

「それって、自作自演じゃないの?」

「そうだ」

「そんな……」

「その攫われた魔族はどうなるの?」

「もちろん使い道はある。その魔族を街や村に放って、いかにも襲って来たように見せるんだ。そして、討伐させる」

「そ、そんな事って!」

「許せないわ!」

「でも、何で魔族は人間界に集団で攻めて来ないの?」

「それは、偽の情報を掴まされてるからだよ」

「偽の情報?」

「ああ。パトリシア、人間はすごく強いやつが大量にいるって聞いてるよな」

「ええ、そうよ」

「え、でも私達って、国家戦士の数はそんなにいないような……」

「ああ、そうだ。これが偽の情報だよ。人間はとても強いやつが大量にいる。だから攻め込んでもやられるだけだってな」

「え、でも、そんな事誰が……」

「それはな……裏切り者だよ」

「裏切り者?」

「ああ。魔族に裏切り者がいるんだ。そいつが偽の情報を流して、魔族を攫う手伝いもしているんだと思う」

「そんな……何のために……」

「金だよ」

「え……」

「恐らく、人間側から金を貰ってるはずだ」

「そんな……」

「まあ簡潔にいうと、共通の敵を作ってみんなで団結する。そのためには何でもするってのが、今の人間界の現状だ」

俺がそう締め括ると、みんな言葉が出ないようだ。

「……それなら、私の両親は……」

「恐らく攫われた魔族か、攫われた仲間を助けに来た魔族のどちらかに殺されたんだ。人間の企みによってな」

「そんな……」

アイリスはそのまま俯いて、泣いてしまった。

「どうして……そんな……」

「アイリス……」

ヨセリアさんが、アイリスを抱きしめる。

「そんな事になっていたなんて……」

「お姉様……」

「パトリシア様、大丈夫ですか?」

パトリシアもショックが大きいようだ。まあ、パトリシアは人間と仲よくなろうと頑張ってたみたいだし、無理もないか。

でもな……

「このまま、泣き寝入りするのか?アイリスは助けたいんだろ?パトリシアは人間と仲よくなりたいんだろ?」

俺はアイリスとパトリシアに問いかける。

「……そんな事言っても……」

「私にはどうする事も……」

2人は弱気になっている。

まあ仕方ないよな。それでも……

「俺なら何とか出来る」

俺はそう宣言する。

「え……」

「嘘……」

「嘘じゃないさ」

「でも、何をすればいいの?」

「そうです。流石に難波さんでも何とか出来るとは思えないのですが……」

ヨセリアさんとノセレさんもそう言う。

「レイ様……」

メイリーは心配そうに俺を見つめてくる。

「大丈夫だって。こういう事には慣れてる」

昔、国王を経験した俺は、この程度じゃ諦めないぜ。

「でも、どうやって……」

そうアイリスが言ったところで……

バン!

ドアが開いた。

「難波様、遂に証拠を見つけました」

そう言って入って来たのはクラウスターさんだ。

やっと見つかったか。これで動けるな。

「さて、やるとしますか」

俺はそう言って、笑みを浮かべるのだった。

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