92話
俺は両手で刀を持ち、構える。
そしてそのまま、アイリスに向かって走り出す。
「はあ!」
俺は左手の刀で斬り上げをする。
それをアイリスは剣で防ぐ。
しかし、俺は右手に持った刀で攻撃をする。
アイリスはそれを体を捻って避けるが、再び左手に持った刀で斬りつける。
それも避けられたが、また右手に持った刀で斬りつける。
それを繰り返すと、アイリスの表情は苦しそうになってきた。
「くっ!」
アイリスは防御するので手一杯で、反撃出来ない。
俺はそのまま連続攻撃をして、アイリスに攻撃させない。
そうして、少しずつ俺のペースになってきた。
「すごいわ」
「ええ」
試合を見ていたパトリシアとメイリーはそう呟いた。
「私達との試合では、まだ本気じゃなかったのね」
「ええ、そのようです。あんなに速い攻撃、私でも無理ですわ」
2人がそう話していたのだった。
「アイリス、頑張って」
一方で、ケーナはアイリスの応援をしていた。
「難波君には悪いけど、親友としてはアイリスに勝って欲しいのよね」
そうして、ケーナはアイリスの事を応援していたのだった。
「……」
「あなた、どうしたの?」
魔王とエルフィーも、レイとアイリスの勝負を見ていた。そこでエルフィーは、魔王が腕組みをして何も言わないのが気になって声をかけた。
「……難波レイは、このままだと負ける」
「え?」
魔王がそう言うので、エルフィーは驚いた。
「でも、難波さんの方が優勢よ?」
そう、今はレイが優勢だ。
「そう見えているだけだ」
しかし、魔王は違うと言う。
エルフィーは、魔王が適当な事を言わないのを知っている。だからこそ、なぜ魔王がそう言うのか分からなかった。
「そろそろだ」
魔王がそう言うので、エルフィーは視線をレイとアイリスの方へ戻す。
すると……
「え……」
そこでは、信じられない事が起きていた。
何だ!?
俺は驚いていた。
その理由は、アイリスが俺の攻撃に対処し始めたからだ。
俺は全力で斬撃を放っている。最初は俺の攻撃を避けるのが精一杯だったのが、段々俺の攻撃を弾くようになり、遂には反撃までしてきた。
まさか、これがアイリスの才能なのか!?
アイリスは、俺と会ってから今までずっと強くなっていた。そして、それは最後に戦った時も感じた事だ。その事から考えると、恐らくピンチに陥った事で、アイリスの才能が一気に開花したのかもしれない。
それなら本気でやばいぞ。このままだと、俺が剣を振るうスピードを超えられる。
そう考えていると……
「はああ!」
「ぐあっ!」
俺は弾き飛ばされた。
何とか体勢を立て直しつつ、刀を構えようとする。
しかし……
「ふっ!」
「!?」
アイリスは一瞬で肉薄して来た。
そこから俺は防戦一方になった。
「まずいわね」
「レイ様!?」
パトリシアとメイリーも、戦況がレイの劣勢になった事に驚いていた。
「お姉様、このままだとレイ様が!」
「ええ、負けるわ」
「何とかならないの!?」
「どうしようもないわよ。私達に出来る事はないわ」
「そんな!?」
メイリーは今にもレイを助けに行きそうだ。
「メイリー、駄目よ」
「でも!」
「レイを信じるのよ。レイはきっと大丈夫だから」
「お姉様……」
メイリーはその場で、祈るような気持ちでレイの勝利を信じたのだった。
アイリスは剣を振るい、俺はそれを刀で受けつつ、衝撃を受け流す。しかし、アイリスの攻撃の速さがどんどん上がり、次第に刀で受けられなくなってきた。
そして、俺は避けるしかなくなってきた。
しかし、遂に……
「ぐはっ!」
アイリスの攻撃を食らってしまった。
俺は斬られた胸を押さえると、アイリスは追撃をしてくるので、俺は慌てて後ろに飛んで避ける。
そして、俺は追撃が来ない事を確認して、体勢を立て直す。
しかし、このままだと負けるのは確実だ。
「ねえ、レイ」
そこで、アイリスが話しかけてきた。
「何だ?」
「もう降参してよ。私の方が強いの、レイも気づいてるでしょ?」
そう言われてしまう。
「ちょっと、あんたレイ様に何て事言うのよ!」
メイリーはそう言ってくれるが……
「いや、メイリー、アイリスが言ってる事は事実だ」
「レイ様!?」
「もう、俺の実力を超えられた。それは間違いない」
「そ、そんな事ありません!ほら、レイ様のあの技なら勝てます!」
メイリーは恐らく、吹雪の事を言っているのだろう。
「あの技って、もしかして奥義の事?それなら、もう私には通用しないわ」
アイリスはそう言う。
俺がアイリスに見せたのは紫電で、メイリー達に見せたのは吹雪だ。技は違うが、今のアイリス実力ならどちらも対処出来るだろう。
「そ、そんなのハッタリよ!」
「違うわ。ね、レイ」
「……ああ、そうだな」
「そんな……」
メイリーは愕然とする。
「このままじゃあ、レイ様が人間界に帰っちゃう……」
メイリーは俺によく懐いてくれていたからな。別れるとなると、寂しいのかもしれない。
恐らく、アイリスもそう思って俺の事を追いかけてきたのだろう。
本当、それは嬉しい事だよな。
誰かが俺を必要としてくれる、それは嬉しい事だ。
でも、だからって人間と魔族がこのままでいいとは思わない。
出来る事なら、アイリスにも魔族と仲良くなって欲しいし、知って欲しい。魔族にも、いいやつはいるんだって事を。
そのためには……
「なあ、アイリス」
「降参する気になった?」
「いや、勝負の結果についてだ。俺が勝ったら、アイリスもここで過ごそう」
「え!?」
「レイ様!?」
パトリシアもメイリーも驚いている。
「……まだ、私に勝つ気なの?」
「ああ、もちろんだ。俺は負けられないんだよ」
自分のやりたい事をやるために、俺は負けられない。
「……分かったわ。レイが勝ったら、私もここにいる。でも、私が勝ったら……」
「大人しく人間界に帰るさ」
「それじゃあ、再開しましょうか」
「ああ。俺の力を見せてやるぜ!」
そう言って、俺は刀を構える。
「行くわよ!」
「来い!」
その瞬間、アイリスはこちらに向かって来た。
そして、剣を振るう。
「はああ!」
俺はそれを避ける事に専念する。
「避けるだけじゃあ、勝てないわよ!」
そう言って振るわれる剣は、俺が反応出来るギリギリの速度だった。
それを何とか躱し、俺は言う。
「ああ、分かってるさ!だから、ここから反撃させてもらう!」
本当は使う気はなかったんだがな!
そして、俺は剣を避けつつ呪文を唱える。
「我、手にするは王の力」
「光を纏い、闇を照らす」
「我が魂、その力を持って」
「光り輝く未来を切り拓く」
「キング・ソウル・ドライブ!」
その瞬間、俺の体は光に包まれた。
「きやっ!?」
「何!?」
「どうしたの!?」
「何これ!?」
「これは……」
「何が起きてるの!?」
この部屋にいる全員が目を閉じる。
そして、次に目を開けると……
「な、何、それ?」
そうアイリスが聞いてくる。
それもそのはずだ、今の俺の体は金色の光を纏い金色のマントを羽織っていて、さらに刀まで金色に変化したのだから。
「これは王の力。俺の魂が王の魂になったんだ」
「王の……魂……」
「さあ、ここから反撃と行かせてもらうぜ」
俺はそう言って、刀を構えたのだった。




