91話
「……何で、アイリスとヨセリアさんがここにいるんだ?」
俺が部屋の中へ入ると、そこにはアイリスとその友人であるヨセリアさんがいた。
何で2人がこんな所にいるんだよ?
俺は少し混乱していた。2人は本当なら、国立グロリア学園で授業を受けているはずである。それなのに、どうしてここにいるのだろうか?
すると……
「そんなの決まってるでしょ!レイを連れ戻しに来たんだよ!」
そうアイリスが言ってくる。
「俺を連れ戻す?」
どういう事だ?
「そうだよ!勝手にどこかに行っちゃうんだから!」
そう言って、アイリスはこっちに来る。
「ほら、帰ろう」
そして、俺の手を取ってくる。
そのまま俺の手を引いて、部屋から出て行こうとする。
しかし、俺はその手を払う。
「え?」
「悪いが、俺は帰らない」
「え、何言ってんの!?」
アイリスは俺の言葉に驚いている。
「俺は、やるべき事があるからここに来たんだ。だから、帰らねえよ」
俺がそう言うと、今度はヨセリアさんが言ってくる。
「難波君、私達は人間よ。ここでやるべき事なんてないわ」
ヨセリアさんはそう言う。
「そんな事ないよ。俺にはやるべき事があるんだ」
「それは、学園にいたら出来ない事なの?」
「ああ、そうだ」
俺がそう言うと、ヨセリアさんは困ったとでも言いたげな表情を浮かべた。
「何よ、それ……」
「アイリス……」
アイリスは、俺を真っ直ぐ見つめる。
「勝手に出て行って、連れ戻しに来たら帰らないって、どうして!?」
そう言ってくる。
「……確かに、勝手に出て行ったのは謝るよ。でも、それには理由があるんだ」
「その理由が、ここでやらなきゃならない事なの!?」
「そうだ」
「じゃあ、そのやらなきゃならない事って何なの!?」
「……人間と、魔族の共存だ」
そこで、魔王が口を開いた。
「難波レイは、私達と一緒に人間と魔族が共存する道を探すためにここにいる」
魔王はそう言って、口を閉ざす。
「……何よ、それ……」
それを聞いたアイリスは俯き……
「そんな事出来るわけないじゃない!」
顔を上げると、そう言った。
「私はあなた達魔族に両親を殺されたわ!他にも同じような経験をした人達がいる!そんなあなた達と共存なんて、出来るわけないじゃない!」
そして、アイリスは俺の方を見て言う。
「レイ、言ってくれたよね。一緒に魔族を倒すって。あれは嘘だったの?」
そう聞いてくる。
「……確かに言った。でもな、実際に魔族と会って話をして、俺は思ったんだよ。実は、魔族は悪いやつじゃないんじゃないかってな」
「そんなわけないじゃない!それなら、何で人間を襲ってくるのよ!」
「私達は人間を襲うような事はしていない」
そこで、魔王がそう言う。
「そんなの嘘よ!私のお父さんとお母さんは、魔族に殺されたんだから!」
そう、アイリスの両親は魔族にやられた。それはアイリスが住んでいた村で、運良く生き残った人が言っていた事だ。
「でもな、アイリス。どうやら、人間も魔族を攫っているらしいんだ」
「え?」
アイリスは驚いている。
「アイリス、聞いてくれ。この世界は、何かがおかしいんだ。だから、俺はそれを調べるためにここにいるんだよ」
俺がそう言うと、アイリスも何かを言おうとした。
しかひ、そこで突然ドアが開いた。
「レイ!」
「レイ様!」
部屋へ入って来たのは、パトリシアとメイリーだった。
「え、どうして2人がここに!?」
「あなたを連れ戻そうとしている人間が来たって、連絡があったのよ。だから早退して帰って来たの」
「レイ様、行かないでください!」
メイリーは、俺に抱きついてくる。
「あ、ああ、大丈夫だから。俺はまだ帰る気はないから」
俺がそう言うと、メイリーは安心したようで、一旦俺から離れる。
「本当ですか?」
「ああ」
そう聞いてくるので、安心させるために頭を撫でる。
すると……
「……へえ、そういう事」
アイリスが怒っていた。
「え、どうしたんだよ?」
「帰る気はないって、その子達がいるからじゃないの?」
「え?」
何かおかしな事になってきたぞ。
「レイ、勝負よ!」
「はい?」
「私が勝ったら、大人しく帰るの。あなたが勝ったら、諦めてあげるわ」
ええ……何でそんな事に……
「難波君、こうなったらやるしかないと思うわ」
ヨセリアさんまでそう言ってくる。
「ふん!レイ様、あんな人間、さっさとやっつけちゃってください!」
「何だか楽しそうね」
メイリー、煽らないでくれ。それとパトリシア、全然楽しくないからな。
「さあ、早く」
気がつくと、アイリスは既に剣を持っていた。
「……はあ、分かったよ」
俺は刀を出す。
「あの、この部屋で戦わない方がいいですよね?」
俺は魔王にそう確認する。
「いや、構わん。ここでやりなさい」
まさかの許可が下りた。
「……分かりました」
俺は刀を構える。
アイリスも剣を構えた。
「行くわよ」
「いつでも来い」
そうして、俺とアイリスの勝負が始まったのだった。
勝負が始まると、アイリスは俺に向かって一気に走って来た。
速い!?
この前戦った時よりも、明らかに走る速度が速くなっている。
「はああ!」
「くっ!」
その上、剣を振るう速度も速くなっているようだ。
俺は何とかアイリスの剣を刀で受け止める。
しかし、アイリスは剣が刀に触れた瞬間、そのまま押し込まずに一旦引き、更なる斬撃を放ってくる。
俺はそれを後ろに飛んで躱すが、すぐにアイリスは追って来る。
そして、そのまま上段に構えた剣を振り下ろしてきた。
「ぐっ!」
俺はそれを刀で弾くが、すぐに次の攻撃を繰り出してくる。
そのまま、アイリスのペースに持って行かれてしまった。
このままじゃ、やられる!
そう思った俺は、出し惜しみせずに剣技を放つ事にした。
「ふっ」
「!?」
俺は上に飛び、刀の切先をアイリスに向ける。
そしてそのまま一気に落下した。
「心証流秘剣ー雫」
しかし、アイリスは咄嗟に後ろに飛ぶ事で、俺の攻撃を避けた。
やっぱり避けられるよな。
前に戦った時ですら避けられたんだ。今回決まる事はまずないだろう。
だからって、このままやられるわけにはいかない!
俺は一気に走り出す。
そして刀を上段に構えて、振り下ろした。
それをアイリスは剣で受けようとする。
しかし、俺は左手から刀を落とし、下に添えていた右手に持ち替える。そしてそのまま水平斬りを放った。
「心証流秘剣ー歪」
しかし、アイリスはこれを横に飛ぶ事で避けた。
これも決まらないか。
俺は少し厳しいと感じていた。
そう考えている間にも、アイリスはこちらに向かって来ていた。
「はあああ!」
そのまま袈裟斬りを放ってくる。
俺はそれを刀で受けようとするが……
「はあ!」
「なっ!?」
急に剣の向きを変えて、俺の刀を避ける。
そして、そのまま剣が俺に当たりそうになるが……
「くっ!」
俺は何とか体を捻って避ける。
そのまま後ろに飛んで、距離を取った。
やばいな……
俺の剣技が通用しなくなっている。
どこまで強くなってんだよ……
そう心の中で思っていた。
仕方ない、やるか。
俺はそう思い、もう1本の刀を手に取る。
「……何、それ?」
「二刀流さ」
俺はそう言って、刀を構えた。
さあ、勝負はここからだ!




