89話
俺とクラウスターさんは、みんなが待つという部屋の前へ来た。
そして、クラウスターさんがドアを開ける。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
俺はそう言って、中へ入る。
「あ、やっと来たわ」
「難波さん、一体何をしていたんですか?」
パトリシアとノセレさんにそう言われてしまう。
「すみません。書庫で本を読んでいて、遅れてしまいました」
俺はそう言って、席に座る。
「そうだったの。どこに行ったのかと心配したわ。これからは気をつけてね」
そうエルフィーさんに言われる。
「はい、すみませんでした」
「いいのよ。それより、みんな揃った事だし食べましょう」
そうして、食事となった。
「レイ様」
「何?」
メイリーが呼ぶので、俺は返事をする。
「書庫で何の本を探していたんですか?」
「いや、特に何かを探してたわけじゃないんだ。何か面白い本があるかなって思って、クラウスターさんに案内してもらったんだ」
俺はそう説明しておく。
「そうだったんですか。それで、何か面白い本はありましたか?」
「ああ、あったよ。魔界に伝わる七不思議って本が特に面白かったかな」
「あ、それ私も昔読みました。私が特に面白かったと感じたのは、3つ目の不思議でした」
「ああ、確かに面白かったな」
「レイ様はどの不思議が面白かったですか?」
「俺は5つ目かな」
「あ、あれって確か……」
そうして、俺とメイリーは2人で七不思議について語り、パトリシアとノセレさんはそんな俺達の話を興味深そうに聞いていて、魔王とエルフィーさんはそんな俺達を微笑ましそうに見ていたのだった。
俺は食事が終わると、自分の部屋に戻ろうとした。
「レイ様!」
そこで、メイリーに呼ばれた。
「どうしたんだ?」
「レイ様、私と修行する約束ですよね」
おっと、そうだったな。
「食べたばかりで大丈夫か?」
俺がそう聞くと、メイリーは頷く。
「はい、大丈夫です!」
「分かった。それじゃあやるか」
「はい!」
そうして、俺とメイリーが行こうとすると、パトリシアとノセレさんも声をかけてきた。
「あ、待って。私も行くわ」
「私も行きます」
「え、何で?」
「何でって、気になるからよ」
「そうです」
「気になるって、何が?」
「それはもちろん、どんな事をするのかに決まってるじゃない」
「ええ。この間、メイリー様に教えておられた事や、難波さんの実力からどんな事をするのか、とても気になります」
え、そんなに?
「普通なんだけどなあ」
「レイ様、よろしいではありませんか」
「いや、まあ、駄目ってわけじゃないんだけどな」
「それならいいじゃない。さあ、早く行きましょう」
「え、ああ」
パトリシアが急かすので、俺達はそのまま庭に向かったのだった。
そうして、俺はメイリーと一緒に修行をした。と言っても、軽めのやつだが。
それから、なぜかパトリシアとノセレさんも途中から参加してきた。後からノセレさんに聞いた話では、パトリシアは俺に負けた事がとても悔しいらしい。それで、少しでも強くなろうとしているようだ。
そんな事もあったが、俺達は修行をこなした。
そして俺は今、部屋のベッドの上で寝転んでいる。
「そろそろ、何か進展させないとな」
今日は書庫で何かないかと探したが、結局成果は得られなかった。
出来るだけ早く、この世界の事について何か分かるといいんだがな。
俺はそう思い、瞼を閉じて寝たのだった。
それから毎日、俺は行動していた。
魔王に直接聞いたり、書庫に行ったり、街を散策したりと色々とやったのだが、あまり成果は得られなかった。
そうして八方塞がりになりかけていた時だった。
「難波様、本日は来客がお見えになりますので」
「来客ですか?」
クラウスターさんは、朝早くに俺の部屋を訪れると、そう言ってきた。
「はい。その方は、人間界と魔界とを行き来されていて、人間界の動向を探っているのです」
人間界の動向を探ってる魔族か。そんな潜入捜査をやってたなんてな。
「ですので、お部屋から出られないよう、お願いします」
「ああ、そうですね。分かりました」
確かに、見つかると厄介な事になりかねないからな。
「ありがとうございます。それでは、私はこれで失礼します」
そう言って、クラウスターさんは仕事に戻る。
俺は窓の外を見る。
ここからだと、丁度魔王城の入口が見えるんだよな。
俺は窓から魔王城の入口を見る。
恐らく、あそこから来るんだろうな。
そんな事を思いながら、窓から視線を外す。
外に出られないので、俺はゆっくり寛ぐ事にした。
暫くベッドの上で寝転んでいると、外が騒がしくなった。
俺は体を起こし、窓から外を見る。
「あれか」
どうやら、来客とやらが来たようだ。
俺は窓からその様子を伺っていると……
「ん?」
来客は男性の魔族だった。しかし、俺はそんな魔族に対して、何かがおかしいと思った。
「何がおかしいんだ?」
俺はそう言いつつ、目を凝らして魔族を見る。
すると……
「……そうか。身につけている装飾品か」
魔族は金のネックレスや大きな指輪など、高価そうな装飾品を身につけていた。
「確か、クラウスターさんの話では、あの魔族は潜入捜査をしているはずだ」
それなのに、あのような派手な装飾品は目立つのではないか?
俺はそう思った。
「まあ、魔王に会いに来るからって、今回だけ身につけている可能性もあるが……」
俺は何となく、そうは思えなかった。
「調べてみるか」
俺はそう考えつつ、魔族の事を窓からずっと見ていた。
それから数時間後、来客である魔族は帰って行った。
そこで、クラウスターさんが俺の部屋を訪れた。
「難波様、来客の方がお帰りになられましたので、城内なら出歩いても構いません」
そう言ってくるクラウスターさん。
「あの、クラウスターさん」
「何でしょう?」
「さっきの魔族、少し調べてもらえませんか?」
「……どういう事でしょうか?」
俺はクラウスターさんに、先程感じた事を話してみる。
すると……
「……成る程。難波様がそう仰るなら、私の方で調べておきます」
「本当ですか?」
「はい」
クラウスターさんはそう言ってくれる。
「実は、私も怪しいと思っていたのです」
そうクラウスターさんは言う。
「随分前から、彼は身なりが段々と豪華になっていきました。それについて、魔王様は給料を使って買っているのだろうと仰っていたのですが……」
「もし違うとしたら、他に何か理由があるって事ですよね」
「はい」
クラウスターさんは頷く。
「それなら、お願いします」
「分かりました。それでは、失礼します」
そうして、クラウスターさんは出て行った。
さて、これで少しは進展があるといいんだがな……
俺はそう願っていた。




