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8話

……体が怠い。それでも起きるしかないか。

「……」

まだ俺は気持ちの整理が出来ていない。

「……トレーニングでもするか」

そうして、俺はトレーニングルームに向かった。


廊下を歩いている時、トイレから春日さんが出て来た。

「あ、起きたんだね」

「はい」

「ちょっと談話室に行かない?話したいことがあるんだ」

「分かりました」

そのまま俺と春日さんは談話室に向かった。


俺と春日さんは談話室に入ると、春日さんがソファーに座ったので、俺も対面のソファーに座る。

「話って?」

「ああ、昨日聞き忘れてた事があってね」

「何ですか?」

「魂の具現化は出来るようになった?」

「……はい」

「そっか。それはよかった。今出来る?」

「多分出来ると思います」

「やってみてくれない?」

「分かりました」

俺はイメージした。あの無色透明な刀を。

ブンッ!

すると、腰の左右に1本ずつ刀が現れた。

「おお!これが君の武器か!」

春日さんは俺の武器をまじまじと見ていた。

「色は無色透明で、刀が2本か。すごく珍しいね」

「そうなんですか?」

「うん。普通は赤、青、緑、白、黒の5色なんだよ。それで、赤は遠距離型、青は中距離型、緑は防御型、白は剣などの武器を持った近距離型、黒は籠手などの武器を使った近距離型っていう風に分類されてるんだ」

「そうなのか」

「うん。でも君のは色は無色透明だからね。こんなのは初めてだよ。まあ刀だから近距離型なのは間違いないけど。それでも2本っていうのは珍しいね」

「他にいないのか?」

「僕は聞いたことないかな。銃ならいるんだけどね。剣を2本扱うのって難しいから」

「そうだな」

確かに俺も2本は扱えない。まあ俺の場合は剣なんて持ったこともないからな。剣道もやったことないし。

「そう言えば、この武器は人を斬っても血が出なかった。何故だ?」

「ああ、それは人の魂が具現化したものだから、人の魂にしか攻撃できないんだよ」

「そうなのか」

「まあ、偶に実体化出来る人もいるんだけどね」

「実体化?」

「実体化すると武器を人の魂以外、人の体や物にも攻撃できるようになるんだ」

そんな事が出来るのか……

「それより、少し調べさせてもらってもいい?」

「何を?」

「君はNo.0とNo.EXの2つの薬を投与したんだ。どっちの武器か、それとも両方なのかを調べたいんだよ」

そういう事か。

「いいけど、どうやって調べるんだ?」

「この機械を使えば調べられるんだ」

そう言って取り出したのは、箱型で真ん中にモニターがある機械だった。

「この機械のコードの端を君の胸に当てると、モニターに結果が出るようになってるんだ」

「そうか。まあいい。調べるか」

「じゃあこれを胸に当てて」

俺はコードの端を胸に当てる。するとモニターに結果が出た。

「どうやら君の武器はNo.0の薬のものみたいだね」

「そうか」

「まだNo.EXの薬のものは具現化出来てないか。まあ具現化できるかどうかも分からないけどね。何せ前例がないし、あの薬もNo.0と一緒で開発途中だったから」

確かにそんな事言ってたな。

「それで、今日もVRの世界に行って欲しいんだけど、頼めるかい?」

「……どうせ俺に拒否権はないんだろ?」

「まあそうだね」

じゃあ一々聞くなよな。

「はあ……行くよ」

「オッケー。それじゃあ準備しよう」

そうして、俺はまたVRの世界に行く事になった。


「準備はいいかい?」

「ああ」

「それじゃあいくよ」

春日さんはそう言って機械を操作し始めた。

「じゃあ頑張ってね」

俺の意識はそこで途絶えた。


また草木が生い茂る森にいる。このままシスターが拾ってくれるまで待てばいいのだろう。

「……」

俺はこれからどうするか考えていた。理亜を失った事は俺に絶望感を与えていた。しかし、このままってわけにもいかない。どうするか……

そんな事を考えていると、シスターがやって来て俺を孤児院まで連れて行ってくれた。その間も俺はこれからどうするか、そればかりを考えていた。


俺がこの世界に来て15年が経った。前は18歳で旅に出たが、今回はもう旅に出ようと思う。

15年経った今でもまだどうするかは決めていない。それでも、このままではいけないと思い、旅に出ることにした。

それにこの世界は前の世界とは違い、魂の具現化は一般的に知られているとシスターは言っていた。そして、魂を具現化できる人の事をこの世界では〈ソウル・リベレイター〉と言うらしい。

そんなわけで、この世界では広く知られていて、大会もあるらしい。

そんな世界を見るために、俺は明日から旅に出る予定だ。シスターに話した時は反対されたが、俺がどうしてもと言うと、シスターは折れてくれた。本当に申し訳ないが、今のままじゃ駄目だと思うから、何かを得るためにここを出て行く。

そうして俺は明日に備えて眠りに就いた。


「いつでも帰ってきていいからね」

「ありがとう、シスター」

俺は今、孤児院の前でシスターと話している。これから旅に出るので、シスターには今までお世話になったお礼を言わないといけない。

「今までお世話になりました」

そう言って頭を下げる。

「いいえ、私の方がいっぱい助けられたわ。ありがとう」

シスターはそう言ってくれるが、俺は何も出来ていない。本当に情けないと思う。

「それじゃあ行くよ」

「気をつけてね」

そのまま俺は孤児院を出た。


旅立ってから数ヶ月が過ぎた。

俺は色々な国に行き、実際に他のソウル・リベレイターを見た。みんな俺とは違い、慣れた動きで武器を操っていた。大会というのも観戦してみたが、それぞれが自分の武器で戦い、熾烈を極めていた。

俺は大会などには参加せず、旅をしていた。一応トレーニングはしていたが、あまり身が入らない。

そんな感じで旅をしていると、何となくこの世界で一番高い山に登ることにした。頂上は雲よりも高く、登山家には大人気の山だとか。

俺はトレーニングを兼ねて普通の登山コースではなく、険しい場所を登っていた。

そして雲が近くに見えてきた。もう後100メートルも登れば雲の上だろうと思って登っている時だった。

「……あれは?」

よく見てみると、家があった。何でこんな所に?登山コースは反対側のはずだ。

不審に思った俺は近づき、中を覗いた。しかし、誰もいない。そうして暫く覗いていた時だった。後ろから気配を感じたので咄嗟に飛び退くと、俺がいた場所に剣が振り下ろされた。

「ほう。今のを避けるか」

見ると、70代くらいのじいさんがいた。

「じゃが、泥棒には容赦せん」

そう言って俺の方に向かって来る。速い!

俺は咄嗟に魂を具現化し、刀で剣を受けた。

「何!?」

一瞬じいさんは驚いたが、すぐに剣を引き、再度攻撃してきた。最初のうちは躱したり受けたり出来たが、次第にじいさんの攻撃について行けなくなり、最後は肩口から斬られた。

「ぐはっ!」

ドサッ!

そのまま俺は倒れた。

「此奴、中々やりおるの」

じいさんは暫くその場で立っていた。

「面白そうじゃな」

そんな事を言って、顔に笑みを浮かべていた。

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