88話
俺は合同練習が終わった後、パトリシア達と一緒に魔王城へ帰った。
帰ってからは昨日のように食事をして、俺は風呂に入った。
そして、今は部屋でゆっくりしている。
「はあ、今日は中々よかったな」
国立デクリア学園では、パトリシアやノセレさんのおかげもあって、何とかみんな俺の事を受け入れてくれた。
それに、合同練習ではバフィト君、メイリー、パトリシアの3人と戦った。久しぶりの実力者との試合はとても有意義なものだった。
「まあ、パトリシアとの試合は予想外だったけどな」
まさか奥剣を使う事になるとは思わなかった。
心証流の奥義である吹雪は、相手を撹乱しつつ接近して何度も斬りつける連撃技だ。それを使わされるとは、正直思ってなかった。
やっぱり、強いやつと戦うのはいいな。
そんな少し戦闘狂のような事を思いつつ、俺は部屋で寛いでいた。
そして次の日。
俺は朝起きると、そのまま部屋を出てみんなと朝食を食べていた。
「レイは今日も学園に来るでしょう?」
隣に座るパトリシアがそう聞いてきた。
「いや、今日はいいよ」
「え、どうして?」
俺がいいと言うと、パトリシアは驚いて理由を聞いてきた。
「今日は少し修行でもしようと思ってな」
「修行?」
「そう、修行。パトリシアとここに来るまでの間、全然してなかったから、そろそろやろうと思ったんだ。少し体が鈍ってきたような気がするし」
「レイ様、私もレイ様と修行がしたいですわ」
俺がパトリシアに説明すると、パトリシアとは反対側の隣に座るメイリーがそう言ってきた。
「ああ、いいぜ。それじゃあ、メイリーは学園から帰って来たら、一緒にやろう」
「はい!」
俺が了承すると、メイリーは笑顔で返事をしてくれた。
そして朝食を食べ終えると、パトリシア達は学園へ向かった。
俺は庭を貸してもらい、そこで刀を振るう。
そして俺は刀を振るいつつ、考え事をしていた。
さて、ここに来て3日目だが、これからどうするか……
そう、ここには魔族について調べるために来た。運よく魔王の娘であるパトリシアと一緒だったので、隠れながらの調査はしなくて済んだ。
ここまではいいんだけど、この後どうするかだな。
俺は昨日、パトリシアと一緒に魔族が通う学園に行った。ただそれは遊ぶためではなく、調査が目的だ。魔族はどんな教育を受け、どんな風に過ごしているのか。それを確認しに行った。
俺はてっきり、人間に対しての事を学んでいるのかと思っていたのだが、そんな事はなかった。
他の学校もそうなのか、それとも国立デクレア学園だけがそうなのかは分からないが、授業内容は一般的なものだった。
正直なところ国立グロリア学園よりも、国立デクレア学園での授業の方がいいように思えた。なぜなら、国立グロリア学園では魔族への対抗手段が授業内容の大半を占めているのに対して、国立デクレア学園は普通の学業を主に学んでいた。ソウル・リベレイターの育成ももちろん行なっているのだが、割合は半々といったところで、バランスが取れている。
俺の感覚では、国立デクレア学園の方が学校らしかったな。
結果、俺はそう思った。
それに、疑問もあるんだよなあ。
その疑問とは、魔族は人間を襲う事をしないんじゃないかという事だ。
昨日、学園長にそれとなく言った時も、そんな事はしないって言ってた。
それが本当かどうかは分からない。だが、俺は本当だと思っている。
また、人間が魔族を攫っているというのも、おかしな話だ。そんな事をしても、特に得られるものはないからな。それに、昔は人間と魔族は仲がよかったって、ジエンさんも言ってたし。
一体、この世界はどうなってるんだ?
俺はこの世界がどうなっているのか、皆目見当もつかなかった。
俺は修行を終え、城の中を歩いている。
クラウスターさん、いないなあ。
俺はクラウスターさんを探していた。理由は、この城に書庫のようなものがあるのか聞くためだ。
書庫があるなら、色々調べられると思うんだよな。
そこで、この城で働くメイドさんを見つけた。
「あの、すみません」
「え、あなたはパトリシア様がお連れになられた……」
「はい、難波レイです。お仕事中すみません。クラウスターさんを探しているのですが」
「メイド長なら、先程この廊下を通って、あちらに行かれましたよ」
メイドさんはそう言って、廊下の先を指差す。
「ありがとうございます」
俺はお礼を言って、クラウスターさんが行った方へ歩き出す。
俺はクラウスターさんを探して、城の中を歩き回る。
すると……
「あ、クラウスターさん」
やっとクラウスターさんを見つける事が出来た。
「難波様、どうされました?」
「あの、この城には書庫のような場所はありますか?」
「書庫ですか。それなら、この城の地下にございますよ」
「そうなんですか。あの、もしよろしければ、そこに入る許可をいただけませんか?」
「ええ、構いませんよ」
俺が聞くと、あっさり許可してくれた。
「ありがとうございます」
「いえ。それでは、ついて来てください」
そう言って、クラウスターさんは歩き出す。
俺はクラウスターさんの後をついて行く。
そうして階段がある場所に来て、俺とクラウスターさんは階段を下りる。
下りて地下に来ると、かなり暗かった。
クラウスターさんはそのまま廊下を歩いて行くので、俺もそれについて行く。
そうして少し歩くと、クラウスターさんがドアの前で止まった。
「ここでございます」
見た感じでは普通の部屋と変わらないドアだ。
ガチャッ。
クラウスターさんがドアを開ける。
「どうぞ」
そう言われて、俺は中へ入る。
「真っ暗ですね」
中は真っ暗で何も見えない。
「今明かりをつけます」
クラウスターさんが明かりをつけてくれた。
「おお」
明るくなった中はかなり広く、本が沢山並んでいた。
「ご自由に閲覧ください。それから、この部屋を出る際は明かりを消してください。それでは、私は仕事に戻りますので」
「ありがとうございます」
「いえ。それでは、失礼します」
そうして、クラウスターさんはドアを閉めて行ってしまった。
「さて、どれから読むかな」
俺は手前にある本棚から、適当に本を手に取って読み始めた。
書庫に来てから数時間。
俺はかなりの数の本を読んだが、何か手がかりになりそうなものは特に得られなかった。
「はあ、この本も違うな」
因みに、今俺が読んでいた本は魔界に伝わる七不思議というタイトルの本だ。
「中々面白かったけど、人間と魔族については書いてなかったな」
俺は本を本棚にしまう。
そして、次は何を読もうかと思っていると、ドアが開いた。
「難波様、ここにおられましたか」
そう言って入って来たのは、クラウスターさんだ。
「クラウスターさん、どうしたんですか?」
俺がそう聞くと、クラウスターさんはこちらに来る。
「お食事のご用意が出来ましたので、その事をお伝えに参りました。もう皆様はお揃いですよ」
「あ、もうそんな時間ですか。すみません、行きますね」
そう言って、俺はクラウスターさんと一緒に部屋を出る。
そして、そのまま歩いていると、クラウスターさんが話しかけてきた。
「お昼のお食事もせず、ずっと書庫におられたのですか?」
「ええ、少し夢中になってしまって」
「そうですか。夢中になるのは構いませんが、お嬢様方が心配されますので、程々になさってください」
クラウスターさんに、そう窘められてしまう。
「はい。以後、気をつけます」
俺がそう言うと、クラウスターさんは、それ以上何も言わなかった。
そうして、俺とクラウスターさんはみんなが待つ部屋へ向かって歩いていた。




