87話
メイリーは試合が終わると、ステージから下りた。
「お疲れ様」
「とても素晴らしい試合でしたよ」
そう言ってメイリーの所に来るのは、パトリシアとノセレだ。
「ありがとう、お姉様、ノセレ」
メイリーはそう言う。
「それにしても、最後の攻撃はレイに当たっていたわよね?」
「確かに。それなら、なぜ難波さんは倒れなかったのでしょう?」
パトリシアとノセレは不思議そうにしている。いや、パトリシアとノセレだけでなく、2人の試合を見ていた先生や生徒達はみんなそう思っていた。
「いえ、最後の攻撃は当たっていないわ」
そんな中、攻撃をした本人であるメイリーだけは分かっていた。自分の攻撃が、レイに当たっていないという事が。
「どういう事かしら?」
「私には当たっていたように見えましたが」
そう他の人が見れば、メイリーの攻撃は当たっていたように見える。しかし、攻撃をした本人だけは分かる。なぜなら、手応えがないからだ。
「私の攻撃は、レイ様にギリギリのところで避けられていたの。そして攻撃が終わった瞬間、レイ様に斬られたわ」
メイリーがそう言うと、2人は驚いていた。
「そんな事出来るの?」
「あんなに速い攻撃に対して、そんな事が可能なんでしょうか?」
「私には出来ないわ。でも、レイ様は実際にそれをやったわ」
2人は信じられないと思う気持ちで一杯だった。
「お姉様、レイ様はすごく強いわよ」
メイリーは、パトリシアにそう言う。
「ええ、分かってるわ」
パトリシアはそう返す。
「パトリシア様、頑張ってください」
「ええ、ありがとう」
そうして、パトリシアはステージへ向かって行った。
さて、次が最後か。
初等部の成績優秀者であるバフィトくんと、中等部の成績優秀者であるメイリーとの試合は終わった。
残すは高等部の成績優秀者だけである。
「それじゃあ、最後は高等部の成績優秀者の子よ」
学園長がそう言い、俺の次の対戦相手の生徒がステージに上がって来た。
「……予想してた通りだな」
「あら、違う方がよかったかしら?」
そう、やはりと言うべきか、高等部の成績優秀者はパトリシアだった。
「いや、そんな事ないよ。よろしくな」
「ええ、よろしくね」
そうして、お互い挨拶をし、俺達は距離を取る。そして、パトリシアは武器である銃を出した。
「準備はいいかしら?」
「ええ」
「はい」
「それじゃあ始めて」
その瞬間、俺は横に飛ぶ。
次の瞬間……
バンバンバン。
俺のいた場所を、銃弾が撃ち抜く。
「よく避けたわね」
パトリシアがそう言ってくる。
「まあ、すぐに終わるわけにはいかないからな」
俺はそう言いつつ、刀を構える。
そして、俺はパトリシアに向かって歩き出す。
バンバン。
もちろん、パトリシアは銃で撃ってくるが、俺はそれを横にずれて避ける。
それを繰り返し、少しずつ俺はパトリシアに近づいて行く。
すると、パトリシアは銃で撃ちつつ、俺から距離を取るために移動する。
しかし、特に俺は焦らずに、そのままゆっくりと近づいて行く。
すると……
「!?」
気づくとパトリシアは、ステージの端に来ていた。
作戦通りだ。
俺は、過去にも銃を扱うやつとは何度も戦ってきた。その時、普通に戦うのは少し厳しい。やはり、銃と刀では間合いが違いすぎるからだ。
だが、ステージでの試合になると話は変わってくる。
ステージで試合をする場合、移動範囲に限界がある。それなら、上手く相手を誘導する事で、ステージの端に追い詰める事で、一気にこっちのペースに持っていく。
俺はパトリシアをステージの端に追い詰めた瞬間、一気に走り出す。
パトリシアも銃で撃ってくるが、俺はそれを躱しつつ近づいて行く。
そして、俺とパトリシアの距離が2メートル程となった。
これならパトリシアが銃を撃つより、俺が刀を振るう方が速い!
そう思い、俺は一気に飛んで刀を振るう。
しかし……
「はあっ!」
「なっ!?」
俺が刀を振るった瞬間、パトリシアは俺を飛び越えた。
そして、そのまま俺の後ろに回り、銃を構える。
そして、そのまま撃ってきた。
まずい!
俺は無理矢理体を捻り、銃弾を避ける。
そして、俺は飛んでステージの端から中央に戻ろうとする。
しかし、パトリシアも銃で撃ってくるので、俺は転がって何とか避ける。
俺は体勢を立て直そうとするが、パトリシアはこちらに向かって撃ってくるので、中々それが出来ない。
こうなったら、本気で行く!
俺は一気に飛んで、少し離れた所に着地する。
そのままパトリシアに向かって一気に走る。
パトリシアはそんな俺に銃を向けるが……
「え!?」
俺は縦横無尽に激しく動き回り、狙いをつけさせない。
「くっ!」
パトリシアは銃を撃つが、俺には当たらない。
そうしている間に、俺はパトリシアの近くまで来た。
俺は刀を上段に構える。
「!?」
パトリシアは俺の方を向くが、もう遅い。
俺は一気に刀を振り下ろす。
そして振り下ろした後、すぐに移動して刀で斬りつける。
これが心証流の奥義である連撃だ。
「心証流奥剣ー吹雪」
「うっ……」
そして、パトリシアは膝をついて倒れた。
「……あ、そこまでよ!」
そう学園長が言い、試合は終わったのだった。
試合が終わったので、俺は刀を鞘に納める。
そして、パトリシアを抱えて声をかける。
「大丈夫か?」
「……ええ、何とかね」
俺が聞くと、パトリシアは目を開けてそう言う。
「悪いな。パトリシアが強かったから、つい本気を出しちまった」
俺がそう言うと、パトリシアは笑う。
「ふふっ、何で謝るのよ。試合なんだから、勝ちに行くのは当たり前でしょう」
「まあ、それもそうか」
「ええ。それより、下ろしてもらえるかしら?」
「ん、ああ」
パトリシアにそう言われて、俺はゆっくり下ろす。
「ありがとう」
そこで、学園長がこちらに来た。
「……あなた、本当に強いのね」
そして、そう聞いてきた。
見ると、周りの生徒達も驚いていた。
「自分ではそう思いませんけどね」
そう言うと……
「……もし、あなたみたいな人間ばかりなら、魔族が人間に勝てるわけないわ」
学園長は深刻な顔でそう言う。
「ああ、そんな事ないですよ。この学園の生徒の方が、人間の学生より遥かに強いですよ。実際に通ってた俺からすれば、圧倒的と言える程に」
俺がそう言うと、学園長は驚いていた。
「……それは、本当なの?」
学園長は訝しんでいる。
「ええ、本当ですよ。まあ、だからと言って人間界に攻め込まれても困りますけどね」
俺がそう言うと、学園長は心外だとばかりに言う。
「そんな事しないわよ。私達は人間と戦うために子供達に学ばせてるんじゃないもの」
そう言う学園長は、本心でそう言っているようだ。
「まあ、そうですよね」
俺がそう言うと、そこでこの話は終わった。
「それはそうと、今日の合同練習はここまでね」
学園長はそう言い、俺とパトリシアはステージから下りて、学園長が合同練習の終わりを生徒達に告げた。
こうして、合同練習は終わったのだった。




