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79話

俺とパトリシアは話し終えると、再び俺がパトリシアを抱えて、走り出した。

「そう言えばさあ」

「どうしたの?」

俺は走りながらパトリシアに問いかける。

「パトリシアって、ソウル・リベレイターじゃないのか?」

「私もソウル・リベレイターよ」

そう答えるパトリシア。

「それなら、俺が抱えて走らなくても、自分で走れるんじゃないか?」

「無理よ。こんな速さで走る事なんて出来ないわ」

そう言われてしまった。

「そうか。それなら、パトリシアの武器は何なんだ?」

「私は銃よ」

銃か。

「強いのか?」

「そうね。私は魔界でも有名な学校である、国立デクリア学園を首席で入学したわ」

「え、それすごくない」

首席で入学って、かなりの実力だろ。

「そうね。でも、あなたには負けると思うわよ」

「そうなのか?」

「ええ」

戦ってみないと分からないと思うんだけどな。

「もしよければ、学園を案内してあげるわ」

「それじゃあ、そん時は頼むわ」

「ええ、任せて」

そんな話をしつつ、俺は走り続けた。


そうして走り続け、夜になったので俺とパトリシアはテントを張って休む事にした。

「早くゼディンに行かないとな」

「そんなに焦らなくても、あと2日もあればゼディンに着くわよ」

俺が呟くと、隣にいるパトリシアがそう言ってきた。

「それならいいけどな」

「ええ、だからもう寝ましょう」

「そうだな」

そうして、俺とパトリシアは寝る事にした。

「……何でくっつくんだ?」

俺の右腕にパトリシアが腕を絡めてくる。

「このテントが少し狭いからよ」

「いや、この前はそんなにくっつかなくても寝る事は出来たぞ」

「私、低体温なの」

「え、マジ?」

「ええ」

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃないわ。だから、こうして腕にくっついているの」

そう言って、俺の右腕にさらにくっつく。

何か、アイリスの時もこんな事があったな……

俺は一瞬、セントメイルで突き放すような形で別れたアイリスの事を思い出した。

駄目だ。アイリスの事を思い出すと、決心が揺らぎそうになる。

俺はそう思い、アイリスの事を考えないようにした。

そして、パトリシアの方も離れてくれそうにないので、そのまま寝るのだった。


次の日。

俺とパトリシアは朝起きてから朝食を取り、少ししてからテントを鞄にしまう。

「よし、そんじゃ行くか」

「ええ」

俺はパトリシアを抱えて、走り出す。

「ねえ」

「何だ?」

「今更だけど、あなたってずっとすごい速さで走ってるじゃない?」

「そうだな」

「疲れないの?」

「俺は昔、山の上で毎日トレーニングしてた事があるんだ。それに比べたら、全然大した事ないよ」

パトリシアは少し驚いていた。

「そうなのね。だからこんなに筋肉が……」

そう言って、胸板を触ってくる。

「何してんの?」

「ちょっと触ってみたくなっただけよ。気にしないで」

気にしないでって……

「走るのに集中したいから、そういう事はやめてくれ」

俺がそう言うと、パトリシアは少し迷って……

「……分かったわ」

頷いてくれた。

悩むところじゃないと思うんだが……

俺はそんな事を思いつつも、走る事に集中したのだった。


そうして俺はずっと走り、村を出てから3日経った。

今日も朝から走っていると……

「あれか」

遠くに建物が見えてきた。

「ええ、あれが魔界の主要都市であるゼディンだわ」

そうして、遂にゼディンに到着したのだった。


俺とパトリシアはゼディンに入る。

すると……

「あ、パトリシア様!」

「本当だ!」

「パトリシア様!」

そう言って、近くにいた魔族達がこちらに来る。

しかし……

「え、人間!?」

「何!?」

「に、人間だ!」

「パトリシア様!後ろに人間が!」

魔族達は俺を見た瞬間、そう叫ぶ。

「みんな、聞いて!」

そんな中、パトリシアが魔族達に呼びかける。

「この人は私が連れて来たの!」

それを聞いて、魔族達は混乱する。

「パトリシア様が連れて来た!?」

「ど、どういう事だ?」

そして、パトリシアは説明を続ける。

「みんなも知ってるでしょ。この人が魔族を見逃してくれた人よ」

「え、あの噂って本当だったのか!?」

「俺は嘘だと思ってたんだが」

どうやら、ジエンさんの話は沢山の魔族に伝わっているようだ。

「この人は、私を見ても襲わなかったわ。そこで、話をしたくて連れて来たの」

それを聞いた魔族達は……

「それは、本当なんですか?」

「信じられません」

そう言う。

確かにそうだろうな。いきなり人間が現れて、魔族を襲わないって言われても信じられないだろう。

「大丈夫よ。だから、ここを通して」

パトリシアがそう言う。

すると、魔族達は渋々道を開ける。

「ありがとう」

パトリシアは礼を言い、歩き出す。

俺もそれについて行く。

周りの魔族達は、じっとこちらを見てくるが、特に何もしてこない。

そうして、歩いていると……

「パトリシア様!」

こちらに向かって来る魔族の女性がいた。

「あら、ノセレじゃない」

「はい、パトリシア様が戻られたとの報告がありましたので、迎えに来ました」

「ありがとう」

どうやら、パトリシアの知り合いのようだ。身長は170センチ程で体は引き締まっており、銀色の髪はとても綺麗だ。

「全く、パトリシア様が人間界に行かれたと聞いて、魔王様はお怒りでしたよ。本当に、今回のような事はおやめください」

ノセレと言うらしい魔族の女性はそう怒る。

「え、護衛に途中までついて来てもらったって言ってなかったか?」

俺がそう言うと、パトリシアはこちらを向いて……

「あれは嘘よ」

そう言ったのだった。

おいおい、それじゃあ勝手に抜け出して来たのかよ……

俺が呆れていると……

「そちらは、もしかして人間ですか?」

「ええ、そうよ。レイ、自己紹介して」

パトリシアにそう言われた。

「え、ああ、分かった」

そうして、俺は前に出る。

「初めまして、難波レイです」

俺はそう自己紹介する。

「……もしかして、魔族を見逃した人間とは……」

「ああ、俺の事ですね」

「……本当に、私達を襲って来ないんですね」

そう言われる。

「ええ、まあ理由がないんで」

俺がそう言うと……

「そうか。私はノセレ。パトリシア様の護衛をしている」

パトリシアの護衛か。さっきの走り方から、中々強いと思われる。

「お互いの自己紹介も終わった事だし、魔王城に向かいましょう」

パトリシアがそう言うので、俺は頷く。

「それでは、私もご一緒します」

「ええ、お願いね」

そうして、俺達は魔王城がある場所に向かって歩き出した。


歩く事10分。

相変わらず、周りの魔族からは見られるが、パトリシアとノセレさんがいるからか、誰も何も言わない。

「レイ、あれよ」

パトリシアが指差す方向に、大きな城が見える。

あれが魔王城か。

城の外観は黒で統一され、その周りは高い塀がある。

そこに向かって歩いて行くと、城の入口に到着した。

「パトリシア様にノセレ様!」

そこで、俺達に気づいた衛兵がそう言いながら、門を開ける。

「ご苦労様」

パトリシアがそう言い、俺達は城の中に入る。

暫く中を歩いていると……

「おかえりなさいませ」

玄関の所に、メイドであろう魔族が立っていた。

「ただいま、クラウスターさん」

「はい、パトリシアお嬢様」

「レイ、紹介するわね。こちら、メイド長のクラウスターさんよ」

「初めまして、魔王様の元でメイド長をしております、クラウスターです」

そう言って、お辞儀をしてくるクラウスターさん。

「初めまして、難波レイです」

俺もそう名乗る。

「クラウスターさんは、俺を見ても特に何も反応しないんですね」

俺がそう聞くと……

「パトリシア様が人間を連れ来るだろうと、魔王様がおっしゃっていましたので」

「流石お父様ね」

成る程。魔王はパトリシアの行動を予測してたってわけか。だからノセレさんも俺を見ても、そんなに驚かなかったんだな。

それなら、城にいる他の魔族も知ってるんだろうな。

「それでは、こちらへ」

そうして、俺達は中へ案内された。

「魔王様がお待ちですので、お部屋へ案内します」

「え、お父様が?」

「はい、魔王様も王妃様も大変ご立腹でしたよ」

それを聞いて、パトリシアは少し焦る。

「そんなに?」

「はい」

「だから言ったでしょう」

ノセレさんもそう言う。

「……どうしようかしら」

パトリシアはそう呟いたのだった。

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