68話
俺とアイリスが国立グロリア学園に入学して1ヶ月が経った。
その間にアイリスはどんどん強くなっていき、今では俺も剣技を使わないと勝てなくなってきている。
学園生活の方も、1ヶ月もあればクラスにも馴染んでくる。アイリスにも友達が出来て、一緒に遊びに出かける事もあった。
そして、俺はというと……
はあ……
思わず、内心で溜息を吐くほど退屈な毎日を送っていた。
1ヶ月経っても、結局この学園の授業や訓練に慣れずにいた。そして、クラスの女子とは交流があるが、男子とは模擬戦の事があり、今も目が合えば睨まれる。
まあ、男子と交流しようとは思わないからいいんだが、どうにもこの学園での授業や訓練がな……
やはり、どうしても合わない。それどころか、こっちまで弱くなってきたんじゃないかと錯覚する程だ。
どうしたもかねぇ……
俺は正直言って、退屈な毎日を過ごしていた。これなら孤児院で修行していた方がいいと思うくらいに。
だからって、この学園をやめるわけにはいかないんだよな……
俺はアイリスと一緒にここで学ぶと決めた。実際にアイリスはこの学園を気に入っている。それなら、俺はそれに最後まで付き合おうと思う。
まあ、あと3年弱の我慢だな。
俺はそう思いつつ、午前の授業を受けていた。
そして事件は起こった。
ガラガラ!
「難波君、ラピスさん!」
昼休みになり、俺とアイリスが昼食を取ろうとしたところでユゼリア先生が慌てて教室に入って来た。みんなも驚いている。
「魔族がこの国に現れたの!」
「え!?」
「魔族が!?」
「今すぐに出動するわよ!」
「分かりました!」
「はい!」
俺とアイリスは立ち上がって先生の所に行き、そのまま教室を出た。
遂に魔族が現れたのか!
俺は魔族の特徴や行動パターンなど、授業で習った事を全て思い出しながら、ユゼリア先生とアイリスと一緒に廊下を進んでいた。
俺達、魔族討伐隊は全員校門前に集まっていた。
「みんな、準備はいいわね」
全員が頷く。
「それじゃあ行くわよ」
そうして、俺達は出発した。
魔族が現れたのは、俺とアイリスが最初にこの国に来た時に通った所で、少し行くと平原が見える。
そしてそこでは、既に戦闘が始まっていた。
あれが魔族か。
見た目は頭に角が生えている事以外、殆ど人間と一緒だ。
隣にいるアイリスを見ると、少し顔が強張っている。口ではああは言っても、やはり本物を見るとこういう反応になるよな。
「アイリス、大丈夫だ」
「レイ?」
「俺がいる。危なくなったら、絶対に助けるから」
「レイ……」
「な?」
「うん!」
アイリスの表情が普段通りになる。もう大丈夫だろう。
「あそこで戦っているのが、国家戦士の人達よ」
そう言ってみてみると、20人程の戦士がいた。
「行くわよ!」
そうして、俺達は走り出した。
「すみません!」
「ん?ああ、メリス先生!」
「私達も参加します!」
「それは頼もしい。おや、新人ですか?」
「はい、この2人はかなりの実力者ですよ」
「メリス先生がそこまで言うなんて珍しい」
「それ程なのよ」
「そうですか。私は国家戦士のレジーロ・デスパだ」
「難波レイです」
「アイリス・ラピスです」
「よし、それなら5人にはあの魔族を倒す手伝いをしてもらおう」
デスパさんが指差すのは、1体の魔族だった。それに対して、国家戦士6人で戦っている。
「分かりました。行くわよ!」
俺達は魔族の所に行く。
「私達も手伝います!」
「メリス先生!」
「助かります!」
「それじゃあ構えて!」
俺達は予め武器を出していたので、そのまま構える。
「いつでもどうぞ!」
「分かりました!デルバート君!」
「撃ちます!」
デルバート先輩の武器は狙撃銃だ。魔族に狙いを定め、そのまま撃つ。
バン!
その音とともに、銃弾が発射される。
そして、そのまま魔族に当たった。
「ぐっ!」
それでも、魔族は倒れない。
「今だ!」
「うおお!」
しかし、魔族が今の攻撃で怯んでいる間に国家戦士の人達が一斉に魔族を倒しにかかる。
しかし、それでもまだ魔族は倒せない。
これは、魔族の方は強いな。
この世界の人達が弱い事を差し引いても、今までこの世界で戦った誰よりも魔族は強かった。
これなら集団で倒さないといけないのも納得だな。
俺がそんなことを思っていると……
「ぐあっ!」
「くそっ!」
「かはっ!」
魔族は国家戦士の人達を倒していく。
マジかよ!?
このままだと危ないと思い、俺は先生に言う。
「先生、俺も行きます!」
「それは流石に危険よ!?」
「そうです!」
「行かせてください!」
俺がそう言うと、先生は渋々頷いてくれた。
「分かったわ。でも、絶対に危なくなったら戻って来るのよ」
「はい!」
俺はそう返事をする。
「レイ……」
アイリスが心配そうにこちらを見てくる。
「大丈夫だ、心配するな」
俺がそう言うと、アイリスも頷いてくれる。
「絶対に勝ってね」
「ああ」
俺はそう言って、魔族の方を向くと走り出した。
「俺も戦います!」
「無理だ!」
「魔族は武器を実体化してくるんだぞ!」
「俺も武器の実体化が出来ます!」
「君、実体化が出来るのか!?」
「はい!」
「それなら手伝ってくれ!」
「分かりました!マテリアライズ!」
その瞬間、刀が重くなる。
よし、行くぜ!
俺は魔族の所まで一気に走る。
「何だ!?」
魔族が驚いているところに、俺は刀で袈裟斬りを放つ。
「ぐあっ!」
その瞬間、魔族の体から血が吹き出る。
俺はそれに一瞬気を取られたが、何とか戦いに集中する。
魔族のやつ、動かないな。
今までの国家戦士と戦って消耗していたところに、俺の攻撃が決まったからか、魔族は胸を押さえて動かない。
どうするか……
俺がそう考えていると……
「何で……人間はいつも……いつも俺達を襲うんだよ……」
魔族がそう呟いた。
それに対して、俺はすごく驚いた。
人間が魔族を襲う?どういう事だ?
俺の頭の中は疑問だらけだった。
「君、大丈夫か!?」
すると、後ろから国家戦士の人が声をかけてきた。
こうなったら……
俺は膝をつき、魔族に言う。
「今から急いで草原に向かって走れ。俺がそれを追いかける。そうして国の外に出たら、そのまま逃げろ」
さっき話してたから、言語は理解出来るだろう。
「え……見逃してくれるのか?」
「そうだ。早くしろ」
「わ、分かった」
そうして、魔族は走り出す。
「あ、逃すな!」
「俺が追います!皆さんは他の魔族をお願いします!」
「大丈夫か!?」
「もう瀕死でしたので、大丈夫です!」
「分かった!頼んだぞ!」
「はい!」
俺はそう言って、魔族を追いかけた。
そのまま、俺は魔族を追いかけて草原まで来た。
「おい」
俺がそう声をかけると、魔族は立ち止まる。
そして俺の方を向いて、聞いてきた。
「何で俺を逃したんだよ?」
「あんたが変な事を呟いていたからだ」
「変な事?」
「何で人間はいつも俺達を襲うんだ。そう呟いてただろ」
俺がそう言うと、魔族のやつも思い出したようだ。
「ああ、そうだ!俺達はいつもお前ら人間に襲われているんだ!」
「それは逆じゃないのか?」
「いや違う!お前達はいつも魔界に来て、仲間を攫うんだ!それで俺達が仲間を助けに行くと、集団で襲って来るんだ!」
え、どういう事だ!?
俺はこれは何かありそうだと感じ、もう少し話をする必要があると思ったのだった。




