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67話

試合が始まると、アイリスは一気に走り出した。

しかし……

バン!

「ぐっ!」

思うように近づけなかった。シャローザさんが牽制して、思うように進めない。

何とかして近づかないと……

アイリスはそう思い、少しずつ前に進む。しかし、アイリスが前に進むと、それと同時にシャローザさんも後ろに下がる。それによって距離が全然縮まらない。

このままでは、いつか拳銃で撃たれてしまう。そうなれば動きが鈍くなり、その隙に何発も銃弾を食らうだろう。そうなれば、確実に負ける。

それだけは駄目!

アイリスは無理矢理前に進もうとする。

しかし、シャローザさんもそうはさせないと拳銃で的確に牽制している。

このまま膠着状態が続くかと思われたその時だった。

アイリスがジグザグに走り出した。

「!?」

その不規則な動きに対して、シャローザさんは拳銃で牽制しようとするが、全て避けられる。

そして遂にアイリスがシャローザさんを剣の間合いに捉えた。

「はああ!」

「くっ!」

そのまま斬り払いをするが、シャローザさんは何とか避ける。

しかしアイリスは追撃する事で、シャローザさんに攻撃の隙を与えない。

そして決着の時は来た。

「!?」

シャローザさんは躓いてバランスを崩した。

「はあ!」

その隙を逃さず、アイリスは一気に剣を上段から振り下ろした。

「ぐあっ!」

そうして、攻撃はシャローザさんに決まった。

「そこまで!」

メリス先生のその声で、試合は終了となった。

「勝った……」

アイリスは驚いていた。今まであんな動きをした事がなかったが、今回の試合で見事に成功した。

「私、確実に強くなってるんだ……」

その事が、アイリスにとっては嬉しかった。

まだまだ強くなれる!

アイリスは、これからも頑張ろうと思ったのだった。


それから俺達は訓練をしていた。

主な訓練内容は、個々の実力を伸ばす事と連携の確認だった。

俺とアイリスが入った事で、戦術の幅が広がった。それに合わせて連携の仕方も少しずつ変えていくらしい。

そして俺は先生に聞いてみたのだが、魔族討伐隊が出動するのは多くて年に3回程だそうだ。毎回国家戦士と一緒に戦い魔族を倒す。

そして、先生から武器の実体化が出来るか聞かれたので、俺は出来ると答えた。そうしたらみんなに驚かれた。

何でも、実体化を教えてもらうのは3年生からで、出来るようになる人は殆どいないらしい。先輩達も出来ないとの事だ。そのため、今までは魔族を倒すサポートをしていたらしい。

そうした感じで、初日の訓練は終わった。訓練が終わった後、俺とアイリスは帰宅したのだった。


そして現在、俺はアイリスと一緒にベッドで寝ている。俺の隣で腕に抱きついているアイリスは幸せそうだ。

そして俺は今日の出来事を思い出していた。

今日、俺とアイリスは魔族討伐隊に加わった。そして魔族討伐隊の先輩達と戦ったり連携したりと、色々やった。その時に思った事がある。

学園で優秀な人が集まってるって言ってたが、どうにもなあ……

俺が薄々感じていた事が、今日の魔族討伐隊での訓練で確信に変わった。

この世界の人達は、過去のVRの世界で戦った人達より弱い。

俺はそう感じた。俺が強くなったというより、この世界の人達が弱いんだ。

あれで魔族なんて、本当に倒せるのか?

俺はそれが最も気になっている事だ。まだ魔族を見た事がないから何とも言えないが、話を聞く限りではそんなに弱くはなさそうだ。

いや、この世界の人の基準での強い弱いは当てにならないな。

そう考えると、魔族も大した事ないのかもしれないな。

俺はそう思った。

ふと時計を見ると、もう午前1時になっていた。

そろそろ寝るか。

そうして、俺はそのまま寝たのだった。


それから俺とアイリスは、学園での毎日を過ごしていた。

学園の授業は、殆どが魔族の特徴や魔族に対する戦術についてだった。

俺はそれらを聞いていたが、あまり役に立ちそうもないと思っていた。魔族の特徴は殆どが外見の事と単体で行動するというもので、それは確かな証拠があるわけでもないのに語られている。そして、魔族に対する戦術については、殆どが集団で1体の魔族を倒すというものであり、その時の役割や動き方についてばかりで、もし魔族がこちらと同じくらいの数を揃えて襲撃してきたらどうするのかなどは書かれていない。

今まで集団で襲撃してきた事が1度もないからと言って、これからもないとは限らないんだけどな。

相変わらずの授業を真剣に聞いている生徒達を見て、俺はこの世界で得られるものはないかと半ば諦めていた。


その後、午後の訓練も受けるが、こちらもあまり得られるものがない。相変わらず同じクラスの男子は俺を敵視しているが、もう手出ししなくなってきていた。恐らく、俺には勝てないと思っているのだろう。

そのため、俺の訓練の相手はアイリスばかりだった。

これじゃあ、孤児院にいた時と変わらないんだよな……

俺は内心でそう思いつつ、アイリスと訓練を続けていた。


放課後は魔族討伐隊での訓練がある。俺とアイリスは一緒にビッグアリーナに行き、訓練を受ける。

しかし、そこでの訓練も俺には得られるものがない。一応先輩やアイリスと受けるが、何ともつまらない。

そうしているうちに、訓練も終わった。


そんな毎日を繰り返す。

俺は毎日学園に行き、授業を受け、訓練をして帰る。そんな毎日を過ごしていた。

「ねえ、レイ」

「何だ?」

学園での訓練中、アイリスが話しかけてきた。

「私、最近強くなってきたような気がするの」

「そうだな。確かにアイリスは強くなってきてるな」

俺は得られるものがないと思っている学園での生活でも、アイリスは確実に強くなっていた。

アイリスにとってはこの環境が合ってるのかな。

実際、そうなんだろう。アイリスは魔族から人々を守るという目標がある。それが結果につながっているのだろう。

それなら、俺は……

俺はどうなんだろうか。俺も強くなるために、この世界で生きているはずだ。それなのに、この学園に来てからは毎日が停滞しているように感じる。

王立アセンカ学院にいた時は、こんなんじゃなかったんだけどな……

俺は王国にいた時を思い出す。あの時は毎日が楽しかった。

みんながいたからか?強いやつらがいたからか?それとも……

恐らく、全部だろう。トーレス、ミリーナ、アリア、シュウといった同じクラスの友達。メリーさんやダラスさんといった先輩。そして、エーレやミカ、ターレにテレスといったライバル達。そんなみんなと過ごす毎日が楽しかった。充実していた。

同じ学校でも、環境が違うとこうも変わるんだな……

俺は改めて周りの環境の大切さを思い知らされた。

「どうしたの?」

俺が黙っていたから気になったのだろう、アイリスがそう聞いてきた。

「ああ、いや、何でもない」

「そう?」

「ああ」

俺がそう答えると、アイリスはそれ以上は何も言ってこなかった。

そして、その後も俺は訓練を続けたのだった。

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