66話
俺とアイリスは、整列している上級生の後ろに並んだ。
「それじゃあ、今日は……」
「先生」
「何かしら?」
一番前にいる女の子が、先生を呼んだ。
「あの、先ずは2人を紹介してもらえませんか?」
「あ、それもそうね。2人とも、悪いんだけど前に出て来てくれる?」
「分かりました」
「はい!」
俺とアイリスは前に出る。
「それじゃあ自己紹介して」
「はい。難波レイです。武器は透明な刀で、特技は剣術や料理など、様々な事が出来ます。よろしくお願いします」
「私はアイリス・ラピスです。特技は剣術です。よろしくお願いします!」
そうして俺達が自己紹介を終えると、拍手をしてくれる。
「それじゃあ、あなた達も自己紹介しなさい」
「では私から。私はナンシー・イサリア。魔族討伐隊の隊長をしているわ」
「俺はドルフィー・デルバートだ。よろしくな」
「私はシャローザ・エレクセンよ。これから一緒に頑張ろうね」
「はい。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
「それじゃあ、今度こそ訓練をするわね」
そうして自己紹介が終わり、俺達は訓練を行う事となった。
「それじゃあ、先ずは個々の実力を確かめましょう。イサリアさんと難波君、戦ってみて」
「え!?」
「いきなり隊長と!?」
「先生、それは流石に無茶では?」
先輩達がみんな驚いている。
まあ仕方ないよな。入って来たばかりの新人と、隊長がいきなり戦うってなったらそうなるだろう。
「難波君、無理かしら?」
「いえ、問題ありません」
俺がそう言うと、隊長は心配そうにこちらを見てくる。
「難波君、自分で言うのもなんだけど、私はかなり強いわよ」
「いや、この学園で1番強いから」
そうデルバート先輩が補足してくれる。
成る程、それなら好都合だ。
「いえ、大丈夫です」
「……本気?」
「はい」
「それなら、もう止めないわ。その代わり、全力で防御してちょうだい」
そう言って、隊長は立ち上がる。
「みんな、下がって」
先生の言葉で、みんなステージから下りる。
俺も立ち上がり、隊長と距離を取るため歩いて行く。
「それじゃあ始めましょう」
そうして、俺と隊長の試合が始まる。
ステージから下りた3人は、ステージの上に立つ2人を見ていた。
「おい、本当に大丈夫なのかよ」
そう言うのはドルフィーだ。彼はナンシーの強さを知っている。だからこそ、レイが心配だった。
「ラピスさん」
「はい?」
シャローザがアイリスに話しかける。
「難波君って、どれくらい強いの?」
「そうですね、昨日と今日は私達のクラスの男子を全員相手にした模擬戦で、余裕で勝つくらいには強いです」
「なっ!?」
「それ本当!?」
「はい」
2人には信じられなかった。クラスの男子と言えば、20人近くはいるはずだ。それをたった1人で相手にして勝つなんて、到底出来るはずがないからだ。
「それが本当なら、大変な事よ」
「そうだな」
話はそこまでにし、3人はステージで行われようとしている試合に集中するのだった。
「リベレイト!」
俺は刀を出す。
「……本当に透明なのね」
「ええ」
自己紹介の時に言った事を疑っていたんだろう。しかし、実際に見て真実だと分かったんだろうな。
一方、隊長の武器は剣だった。
「準備はいいかしら?」
「はい」
「もちろんです」
俺は刀の切先を地面すれすれに構える。
「それじゃあ、始め!」
その瞬間、俺は一気に弧を描いて走り出す。
すると、隊長もこちらに向かって走って来た。
俺は相手の動きをよく観察して、間合いを測る。
そして隊長の前に来た時、丁度俺の腕と刀が体で隠れる。
「!?」
「心証流秘剣ー焔」
俺はそのまま刀を振り上げる。
「くっ!」
しかし隊長は急停止し、無理矢理後ろに飛ぶ事で避ける。
流石魔族討伐隊の隊長だ。今のを躱すとはな。
「……どうやら、かなりやるみたいね」
「ありがとうございます」
俺はそう言いつつ、刀を正眼に構える。
「行くわよ」
「ええ」
俺がそう言うと、隊長はこちらに走って来た。
俺は腕を伸ばして刀を構える。
「はあっ!」
隊長が上段に構えた剣を振り下ろしてくる。
俺はそれにタイミングを合わせ、刀を振るう。
「心証流秘剣ー響」
「ぐっ!」
剣から振動が伝わり、隊長は剣を落としそうになるが、何とか持ち堪えた。
すごいな。腕は痺れてるはずなんだがな。
隊長は一旦バックステップで距離を取る。
「くっ……あなたの今の攻撃、かなり効いたわ」
「俺は今ので終わらせるつもりだったんですけどね」
「そんな簡単に終わるわけにはいかないわよ」
「そうですか」
俺はそう言いつつ、刀を正眼に構える。
「でも、腕はもう使えないんじゃないですか?」
「そんな事ないわ」
そう言って、剣を構える。
「まだやれるわよ」
すごいな。響を受けておいて、それでも剣を構えてくるか。
「それなら、俺も遠慮はしません」
そう言った瞬間、俺は走り出す。
そして刀を上段に構え、隊長に振り下ろす。
「はああ!」
それに対して、隊長は剣で受け止める構えだ。
しかし……
「え?」
俺は刀を左手から離し、下に添えていた右手で掴むと水平斬りを見舞う。
「心証流秘剣ー歪」
「かはっ!」
それにより、隊長は膝をついた。
「そこまで!」
メリス先生がそう言ったので、俺は刀を鞘にしまう。
見ると、ステージから下りて観戦していた先輩達は呆然としている。
「やっぱり、難波君は強いわね」
「ありがとうございます」
メリス先生がそう言うので、素直にお礼を言う。
「大丈夫ですか?」
俺は膝をついている隊長に言う。
「ええ、何とかね。あなた、最後に手加減したでしょ?」
「まあ、この後も訓練があるのに、隊長がいないのはどうかと思いまして」
「全く……完敗よ」
そうして、俺と隊長の試合は終わった。
「じゃあ次はラピスさんとエレクセンさんね」
「はい!」
「はい」
次はアイリスの番だ。
「頑張ってくるね」
「おう」
そうして、アイリスはステージに上がる。
「ねえ」
「はい?」
そう声をかけてくるのは、俺の隣で座っている隊長だ。
「ラピスさんって、あなたと同じくらい強いの?」
「いえ、今は俺の方が強いですよ」
「今は?」
「将来的には分かりませんから」
「あなたがそう言うなら、あの子も相当なものなのね」
それ以上は何も言わず、俺達は試合を見る事に集中した。
「よろしくね」
「はい!」
アイリスとシャローザは、そう挨拶して距離を取る。
「はっ!」
アイリスは剣を出して構える。シャローザの武器は拳銃だった。
銃かー、厳しいかな。
アイリスはそう考えていた。実際、剣と銃では距離が離れていれば銃の方が有利だ。
でも、やるしかない!これぐらいで厳しいなんて言っていたら、絶対にレイみたいに強くなる事も、魔族を倒す事も出来ない!だから、やらないと!
そう思い、アイリスは剣を構える。
「準備はいいかしら?」
「はい!」
「いつでもいいですよ」
「それじゃあ、始め!」
そうして、アイリスとシャローザの試合が始まった。




