65話
「これは……」
「嘘でしょ……」
「こんな事ってあるんだ……」
レイ対4組の殆どの男子という模擬戦、誰もがレイに勝ち目はないと思っていた。よくて半分倒せるかどうかだろうと考えていた。しかし、結果はレイの圧勝。これにはみんな驚いていた。
「やっぱり、レイはすごい!」
そんな中ただ1人、アイリスだけはレイが勝った事に喜んでいた。
俺の周りには倒れた4組の男子達がいる。挑まれた模擬戦は俺の勝ちだった。
今先生がみんなを保健室に連れて行くため、どこかに連絡している。
それにしても弱かったな。
俺はそう思っていた。すごく嫌なやつに思われるかもしれないが、これは本音だ。エリート学校の生徒って言うから、もっと強いやつが集まってると思っていた。
今回は剣技を確認のために使ったが、本来なら使わなくても十分倒せるだろうな。
俺はそう思いつつ、アイリスの所に向かって歩き出した。
「レイ!」
俺がアイリスの所に戻ると、アイリスが俺に抱きついてきた。
「あの人数に勝つなんて、やっぱりレイはすごいね!」
「ああ、ありがとな」
俺とアイリスがそんなやり取りをしていると、ユゼリア先生がこちらに来た。
「難波君、あなたの実力がこれ程とは思わなかったわ」
「ありがとうございます」
俺は素直にお礼を言う。
「そこまで強いなら、恐らくこの学園の魔族討伐隊に加わる事になると思うわ」
「魔族討伐隊?」
「ええ。この学園では、魔族を討伐するための討伐隊があるの。討伐隊は魔族が現れた時、国家戦士と一緒に魔族討伐をするの。それで、魔族討伐隊には優秀な生徒しか入る事が出来なくて、今は3年生が2人と2年生が1人いるわ。今まで1年生で魔族討伐隊に入った子はいなかったんだけど、あなたなら大丈夫だと思うわ」
成る程、魔族討伐隊か。それは興味深いな。
「その魔族討伐隊に、俺も入る事が出来るんですか?」
「ええ。私が推薦するわ」
「それでは、俺も魔族討伐隊に入ります」
そしてアイリスの方を見ると、何か考え込んでいた。
そしてユゼリア先生の方を向き、口を開く。
「先生、私も魔族討伐隊に参加させてもらえませんか?」
「え、ラピスさんも?」
「はい」
……確かに、アイリスがこの学園に入ったのは魔族を倒すためだからな。この魔族討伐隊に入る事で、魔族と戦う事が出来る。
だが、そんなに焦る必要もないと思うんだがな。
アイリスの顔は真剣だ。真っ直ぐに先生を見ている。
これは言っても聞かないだろうなあ。仕方ない……
「先生、俺からもお願いします」
「難波君?」
「レイ!」
「アイリスの実力は確かです。それは俺が保証します。ですから、アイリスも推薦してもらえませんか?」
「……分かったわ」
「先生!」
「ありがとうございます」
俺はそう言って頭を下げる。
「ええ。それじゃあ、この話はここまでにしましょう。そろそろ訓練を再開するわ」
気がつくと、俺が倒したやつらは保健室に連れて行かれたようで、もういなかった。
「はい」
「はい!」
そうして、俺達は訓練を再開したのだった。
午後の訓練が終わり、俺達は教室に帰って来た。
「人が少ないね」
「まあ、俺が倒したからな」
今、このクラスには男子が俺しかいない。
この半分程空席の状況、小学校の時にクラスでインフルエンザが流行った時を思い出すな。
「それではホームルームを始めますね」
そうして、クラスの男子が殆どいない状況でのホームルームが始まった。
ホームルームが終わり、俺とアイリスは家に帰るため、歩いていた。
「ねえ」
「ん?」
「今日の訓練の時のレイの動き、今まで見た事なかったんだけど」
「ああ、今まで使ってなかったからな」
今までアイリスとの修行で剣技を使用した事はなかった。そのため、アイリスが俺の剣技を見たのは初めてだったはずだ。
「あの動き、すごく力強かった。それでいて、すごく綺麗だった」
「そう言ってもらえると、俺も今まで修行してきた甲斐があるってもんだ。ありがとな」
「私も、レイみたいに強くなれるかな?」
「……それは、俺の剣術を真似するって事か?」
「ううん、そうじゃないよ。そうじゃなくて、私もレイのように沢山の敵が襲って来ても、1人で誰かを守れるくらい強くなれるかなって……」
……驚いたな。
俺は正直、アイリスは今日の剣技を見て、自分にも教えろって言ってくると思ってた。
だが、アイリスの心に最も響いたのは、俺の剣技ではなく、俺が1人で同じクラスの殆どの男子を相手に立ち向かった部分のようだ。
俺はまだ勘違いをしていたんだな。あの日、アイリスの決意を目の当たりにしたのにな。
「アイリスなら、絶対になれるさ」
「本当?」
「ああ」
その決意があれば、どんな事があってもアイリスは大丈夫だ。
「それに、アイリスなら俺を超えられるかもな」
「……分かった。頑張ってみるね」
「おう」
そう言うアイリスの目はとても力強く、これからの彼女の成長を期待させるものだった。
次の日の放課後。
俺とアイリスはユゼリア先生の推薦により、今日から魔族討伐隊に加わる事となった。そのため、集合場所であるビッグアリーナへと向かっている。ビッグアリーナは、俺とアイリスが見学の時に訪れた場所だ。
「レイ、今日はクラスの男の子からすごい目で見られてたね」
「まあ仕方ないだろ」
アイリスの言う通り、今日は同じクラスの男子からすごい目で睨みつけられた。
「でも模擬戦を提案したのはあっちなのに、おかしいよ」
「まあアイリスの言う事は最もだが、あいつらはそう思ってないだろうな」
実際、今日も模擬戦を挑んできたしな。まあ返り討ちにしたけど。
「レイはいいの?」
「何が?」
「クラスの男の子と仲良くする気はないのって事」
「ああ、それなら別にいいよ。俺、元々友達は選ぶ方だからな。あんなやつらと仲良くする気はないよ」
「えー、でも困るんじゃないの?」
「何で?」
「だって、クラスのみんなで何かする時もあるでしょ。その時に仲良くないと困るんじゃない?」
「成る程。それは困るな」
「でしょ!」
「普通だったらな」
「え?」
「悪いが、俺は普通じゃない。あいつらと仲良くないと困るなんて事態にはならない」
「そんな事……」
「あるさ」
俺がそう言うと、アイリスはそれ以上何も言わなかった。
実際、俺は今までそうやって生きてきた。俺が国王になった時は、今なんかよりもっと酷かったからな。あれから政治はもうやってない。すごく疲れるからな。
そうして、俺とアイリスはビッグアリーナへ向かって歩いた。
ビッグアリーナに到着した俺達は、そのまま中に入って通路を進む。
そしてアリーナ中央のステージがある場所に来た。
「あ、来たわね」
そうして声をかけてきたのは、メリスさんだった。
「え、メリスさん!?」
「そうよ」
「どうしてここに!?」
「どうしてって、私が魔族討伐隊の顧問だからよ」
「ええ!?」
「あなた達なら、絶対に魔族討伐隊に推薦されると思ってたわ」
成る程、そういう事か。それなら、先生と言いつつ、授業が行われている時間に俺達に学園を案内していた事、俺達をこの学園に入学させたかった事、学園長と距離が近かった事など、色々な事に説明がつく。
「それなら、これからはメリス先生とお呼びした方がいいですか?」
「そうね」
「分かりました。メリス先生、よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします!」
俺がそう言うと、アイリスも慌てて言う。
「はい、よろしくね。それじゃあ2人は後ろに並んで」
「はい」
「はい!」
そうして、魔族討伐隊の訓練が始まった。




