62話
俺とアイリスは学園までの道を歩いている。
天気は快晴で、とても気持ちの良い風が吹いている。
今は5月だ。気温も暑くもなく寒くもなくといった感じで、とても過ごしやすい。
家から出ると周りが空き地が多かったのが、少しずつ家やお店が増えていき、人通りも多くなってきた。
俺はそんな風に周りを見つつも、考えているのは昨日の事だ。
やるしかないと思ったが、やっぱりなあ……
昨日の夜はそう思ったが、やはり魔族を殺すのには躊躇いがある。
だが、この世界で生きていたら、いつか魔族と戦う事になるかもしれない。
その時、俺は魔族を本当に殺せるのか……
結局はそこに戻ってしまう。
「どうしたの?」
そこで、アイリスが声をかけてきた。
「ん、ああ、何でもない」
俺はそう言う。
「そう?」
「ああ」
そんなやり取りをしていると……
「そろそろ市場だね」
「そうだな」
市場が見えてきた。
俺とアイリスが住む家から、国立グロリア学園までの間には市場がある。この間クレープを売っていた屋台もその市場の中にある。
「またクレープが食べたいなあ」
「帰りに買うか?」
「え、いいの?」
「ああ」
「ありがとう!」
そう言ってアイリスは俺に抱きついてくる。
「おい、周りの人が見てるから!」
「えー、いいじゃん!」
そんな事を言って離れてくれない。
「おい、クレープ買わないぞ」
「それは困る!」
アイリスは俺からすぐに離れる。
はあ、何か今ので少し疲れたな。
俺は内心そんな事を思いながら、アイリスと一緒に学園を目指して歩いていた。
市場を抜けると、学園が見えてくる。
「相変わらず大きいね」
「だな」
本当に大きな建物だ。見える範囲でもかなりの大きさなのに、あの建物の後ろにアリーナやグラウンドがいくつかあり、学園の隣には寮まで併設されてるっていうんだから、とんでもない敷地面積の広さだ。
そうして歩いていると学園の門が見えてきて、寮から通っているのであろう生徒が登校していた。
「あんなに人がいるんだね」
「この間の見学の時は誰も校内にいなかったから、訓練中だったんだろう。全校生徒は500人程らしい」
「500人!?そんなにいるの!?」
「学校ならそれぐらいは普通だよ。いや、エリート校で人数を絞ってるのか、普通より少ないんじゃないかな」
「そうなんだ。私が住んでた村でも全員で100人ぐらいだったから、500人って聞いて驚いちゃった」
「まあここは村とは違って国だからな。規模が違うよ」
「それもそうだね」
そんな話をしていると、門の前まで来た。
……周りの生徒がこっちを見てくるな。
恐らく見た事がないからという理由と……
「おい、あの子すげー可愛くね?」
「うお、マジだ!」
「すげえ!」
……アイリスが可愛いからか。
「ねえレイ、さっきから何だか見られてるんだけど」
「ああ、俺達が見た事のない生徒だからだろ」
「そっか」
そうして校内に入る。
「あ、難波君とラピスさん!」
そう俺達を呼ぶのはメリスさんだった。
「メリスさん!」
「おはようございます」
「おはよう。あなた達を待ってたのよ」
「俺達、何も聞かされてませんからね」
「ごめんなさい、色々と手続きがあったものだから」
「いえ、いいんですよ。もしメリスさんがここで待ってなかったら、俺達は職員室に行ってましたし」
「ありがとう。それじゃあそこにあなた達の靴箱があるわ。そこで靴を履き替えたら、私について来て」
「分かりました。行こうか」
「うん」
そうして、俺とアイリスは靴箱で靴を履き替えて、メリスさんについて行った。
俺とアイリスはメリスさんと校内を歩く。途中、階段で2階に上がって少し行くと、職員室の前に来た。
「中へどうぞ」
そう言ってドアを開けてくれる。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
俺とアイリスはお礼を言って入る。
職員室の中は広く、何人かの先生がいた。
「こっちよ」
メリスさんがそう言うので、俺とアイリスはついて行く。
すると、1人の先生の前に来た。
「こちら、セリス・ユゼリア先生よ」
「セリス・ユゼリアです」
「難波レイです」
「アイリス・ラピスです」
俺達は自己紹介する。
「ユゼリア先生があなた達の担任よ」
「よろしくね」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
俺とアイリスは頭を下げる。
「こんな時期に入ってくる生徒は珍しいから、少し驚いたわ」
「まあそうよね。でも、2人の実力は折り紙つきよ」
「ええ、何回も聞いたわ」
メリスさんとユゼリア先生がそんな事を話す。
すると、ユゼリア先生が話を切り上げ、俺達の方に向き直った。
「お話はここまでにして、あなた達を私のクラスに案内するわね」
「はい」
「はい!」
「じゃあついて来て」
そう言ってユゼリア先生は立ち上がり、職員室のドアに向かうので、俺とアイリスもそれに続く。
「頑張ってね」
俺達が職員室を出る時、メリスさんはそう言ってくれるので、俺とアイリスは一礼してから職員室を出る。
「こっちよ」
ユゼリア先生が案内してくれる。
俺達は階段で3階に上がる。そのまま歩いて行くと、ユゼリア先生が止まる。
「ここよ」
そこには『1年4組』と書かれた札があった。
「今日からあなた達はここで午前の授業を受けるから、教室の場所を覚えておいてね」
「分かりました」
「はい!」
「それじゃあ今からホームルームだから、私が入ってって言ったら入って来てね」
「はい」
「はい!」
俺とアイリスが返事をすると、ユゼリア先生は頷いてから教室のドアを開け、入って行った。
「何だか、緊張するね」
「大丈夫か?」
「うん、多分」
まあ顔を見る限りは大丈夫そうだ。
そうして少し待っていると。
「それじゃあ、入って来て」
そう言われたので、俺がドアを開けて、アイリスと一緒に中に入る。
「おい、あの子!」
「朝の子だ!」
「あの男の子、かっこいいね」
「クールな感じがするよね」
クラスのあちこちからそんな声が聞こえる。
「では、自己紹介をしてもらいましょうか」
「それでは俺から。難波レイです。特技は剣術、勉強、料理などです。皆さん、よろしくお願いします」
パチパチパチパチ。
クラスのみんなが拍手をしてくれる。
次はアイリスの番だ。
「わ、私はアイリス・ラピスです。特技は剣術です。よろしくお願いします!」
そう言って頭を下げる。
パチパチパチパチ。
何とか上手くいったようだな。
アイリスもほっとしたようで、胸を撫で下ろしている。
「はい、それでは難波君は窓側の席の1番後ろ、ラピスさんはその隣に座ってくれるかしら」
「分かりました」
「はい!」
俺とアイリスは階段を上って、1番後ろの席に座る。
「隣同士だね」
「そうだな」
アイリスが話しかけてくるので、俺はそう返事をする。
「それでは、授業を始めます」
そうして、授業が始まった。
キーンコーンカーンコーン。
「それではここまでですね」
そうして、1限目の授業が終わった。
「終わったね」
「ああ」
対魔族用の戦術か……あまり参考にならなかったな。
何でも複数で1体の魔族を倒すのが鉄則らしい。魔族は大体が単体で襲って来て、集団で襲って来たとしても10体程だそうだ。
それにしても、何で魔族はもっと多くの集団で来ないんだ?
そこが疑問だ。多くて10体程度だと、こちらにやられるのは分かっているはずだ。
元々群れるというのを嫌っているのか?
そうであるなら集団で襲って来ないのも納得ではあるんだが……
俺がそんな事を考えていると……
「ねえ、難波君!」
「え?」
俺の所に女子が集まっていた。
「少しお話しない?」
「え、いいけど……」
そう言いつつ隣を見ると……
「ラピスさんはこの学園の前にはどこかの学校にいたの?」
「え、あ、その……」
アイリスも男子に囲まれていた。
何だこれ?
俺は何だか大変な事になったなあと思うのだった。




