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61話

次の日。俺達の所に郵便物が届いた。

「これ、学園からだな」

段ボール箱を開けてみると、制服や教材が入っていた。

「え、もう届いたの?」

「みたいだな」

俺達は早速それぞれの制服を手に取る。

「着てみないとな」

「そうだね」

「俺は脱衣所で着替えるよ」

「分かった」

俺は脱衣所に移動し、制服を着る。

国立グロリア学園の制服は、白を基調としたデザインで、青のラインが入っている。

鏡で見てみると、ぴったりだった。

コンコンコン。

「レイ、もう着替えた?」

外からアイリスがドアをノックし、そう聞いてきた。

「ああ」

「それじゃあ私も入っていい?」

「いいぞ」

俺がそう言うと、アイリスは入ってくる。

アイリスも白を基調としたデザインだ。しかし、男子の制服は青のラインなのに対して、女子の制服には赤のラインが入っている。

「うわあ!すごい似合ってるよ!」

「ありがとな。アイリスも似合ってる」

「ありがとう!」

「それじゃ、俺は着替えるから出て行ってくれ」

「え、もう着替えちゃうの?」

「ああ。汚したら嫌だし、どうせ月曜から毎日のように着るんだしな」

「それもそうだね。じゃあ私も着替えるね」

そう言ってアイリスは出て行った。

さて、俺も着替えるか。

そうして俺は着替えて、脱衣所を後にする。

「アイリス、もう入ってもいいか?」

「ちょっと待って」

「分かった」

その場で待つ事30秒。

「いいよー」

そう言われたので、俺はリビングに入る。

アイリスは、自分の制服を畳んでいる途中だった。

「それが終わったら、次は教材のチェックだな」

「うん」

アイリスが制服を畳み終わると、俺とアイリスは教材の確認をした。

「うわ、これ嫌だなあ」

アイリスがそう言うので見てみると、数学の教科書だった。

「ちゃんと勉強した方がいいぞ」

「うーん、分かってるんだけど、今までやった事ないから」

「アイリスなら出来るさ」

「そう?」

「ああ」

実際、アイリスは頭がいいからな。

「もし分からないところがあったら、レイは教えてくれる?」

「もちろんだ」

それぐらいは協力するさ。

「分かった、頑張ってみるね」

よかった、やる気になってくれたみたいだ。

「これが対魔族用戦術の教科書か」

見てみると、色々と魔族について書いてあった。

「これは!?」

教科書には、魔族を倒すためには武器の実体化が必須であると書いてある。

どういう事だ?

俺は教科書を読むと、そこには武器は具現化と実体化の2種類の方法で出す事が出来ると書いてある。

「どうしたの?」

「あ、ああ、ここを見てくれ」

そう言って、教科書をアイリスに見せる。

「え、武器の実体化なんて出来るの!?」

「そうみたいだな」

「レイは出来るの?」

「分からない」

「そうなんだ」

「ちょっとやってみるか」

「え?」

俺はそう言うと、武器の実体化に挑戦する。

実体化か……よし!

「マテリアライズ!」

ブンッ!

その瞬間、俺の刀が現れた。

「いつもと変わらないね」

「ああ」

そう言って、俺が刀掴むと……

これは!?

明らかに重さがある。今までは重さを感じなかった。それなのに今は刀の重さを感じる。

「アイリス、成功したみたいだ」

「え!?」

「ほら」

俺が刀を鞘から抜き、アイリスに渡す。

「え、触れる!?」

そう、普通なら武器は持ち主しか触る事が出来ない。それが他の人も触る事が出来るという事は、実体化が出来たという事だ。

「私もやってみる!」

そう言って、俺に刀を返してくる。

「ああ」

そうして、アイリスは何度も挑戦するが、結局出来なかった。

「何でだろう……」

「まあ、焦る事もないって。学園で教えてくれるさ」

「でも、レイは出来たじゃん」

「偶々だよ」

「そうかなあ?」

アイリスがそう言うが、本当に偶々だ。

そして、俺はその後も教科書を読む。

すると、驚愕の事実が書いていた。

武器の実体化。それは今までの具現化とは違い、実際の武器と同じように扱う事が出来るようになる。

今までの具現化なら、魂に直接ダメージが通るから体が傷つく事はなかった。でも、実体化となると話は違ってくる。実体化させた武器は、普通の武器と変わらない。つまり、人を殺す事も出来る。

「どうしたの?」

俺が黙っていたからだろう、アイリスがこちらを心配そうに見てきた。

「ああ、ここを見てくれ」

俺はアイリスに再度教科書を見せる。

「……そうなんだ」

「ああ。つまり、俺達は魔族を殺さないといけない」

そう言うと、アイリスは黙って俯いてしまった。

そして数秒程経った時、アイリスは顔を上げた。

「それでも、私はやるよ」

「アイリス……」

「だって、もう私のような思いをする人がいなくなるように戦うって決めたから」

そう言うアイリスの目は本気だった。

「……分かった」

「レイはどうするの?」

「……俺もやるよ」

「いいの?」

「ああ」

「そっか、じゃあ一緒に頑張ろうね!」

「ああ」


その日の夜、俺はベッドの上で考え事をしていた。

俺はどうしたいんだ?

昼間、アイリスにはやると言ったが、内心ではまだ迷いがあった。

俺は今まで人を殺した事がないからな……

魔族に実際に会った事はないが、魔族は人間の姿をしていて、頭に角があると本に書いてあった。もしかしたら人の突然変異なのかもしれない。

俺は生まれてからずっと、人殺しなんてした事なかった。現実世界は殺人なんて犯せばすぐに警察に捕まるし、人を殺そうとすら考えた事なかった。このVRの世界でもそうだ。王国を守るため、賊と戦った時ですら誰一人殺さずに賊を無力化した。

……理亜を殺された時も、テロリストのやつらを殺しはしなかったな。

あの時は俺自身が死にかけだったのもあるし、理亜や理亜の両親をあのまま道端に放り出しておく事が出来なかったのもある。

だが、一番の理由は俺自身が人を殺す事に対して忌避感を抱いている事だろう。

俺は理亜を殺され、とても悲しかった。それこそ、感情が殆どなくなり、理亜との思い出を忘れないようにするために海馬が発達して、完全記憶能力を手に入れるほどに。

だから、例え誰かが俺を殺そうとしても、俺はその人を殺せないだろうな。

それにもし誰かを殺して、殺した人に家族がいれば、残された家族は悲しむだろう。そして、その家族は殺した俺を恨むだろう。

そうなれば、俺はあのテロリストと同じだ。

俺は、自分自身が味わった苦しみや悲しみを、誰かに味わわせるなんて絶対にしたくない。

俺は、隣で俺の腕に抱きついて眠っているアイリスを見る。

アイリス、お前は俺とは違って、同じ目に遭う人をなくすために、魔族を殺すんだな。

昼間の決意に満ちた目をしたアイリスが思い出される。

俺もやるしかないよな。

結局そうなり、俺はこれ以上は考えても無駄だと思って寝る事にした。


それから3日が経った。今日は月曜日だ。

今、俺とアイリスは朝食を取っている。

「ねえレイ、今日から学園生活が始まるね!」

「ああ、そうだな」

「楽しみだなあ」

アイリスはとても楽しそうだった。

まあ、初めて学校というものに通うんだ。こうもなるか。

俺は自分もこんな感じだったと、小学校の入学式の時の事を思い出した。

「どんな事するのかな?」

「午前中は座学で、午後は訓練だそうだ」

「そっかあ」

午前中は座学、午後は訓練という辺りは王立アセンカ学院と変わらないな。

今度は過去にこのVRの世界で過ごした学校の事を思い出す。

何でか、今日はよく過去の事を思い出すな。

俺はそう考えながら、朝食のパンを食べた。


俺達は学園に登校する準備をして、玄関にいる。

「それじゃあ行こっか!」

「そうだな」

俺とアイリスは玄関のドアを開け、外に出る。

ガチャッ。

ドアの鍵を閉め、鍵をポケットにしまう。

「よし。鍵も閉めたし、行くか」

「うん!」

俺とアイリスはそう言って、学園に向かって歩き出した。

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