58話
「おいあの子、エイストスさんに勝ったぞ!?」
「嘘だろ!?」
「そんな事が!?」
「ニーナが負けるなんて……」
「あの子何者なの?」
この学園の生徒達はみんな驚いていた。
まあ、クラスで3番目に強いやつがやられたら驚くよな。
「まさか、勝ってしまうなんて……」
メリスさんも驚いているようだ。
そしてアイリスがこっちに来た。
「勝ったよ!」
「ああ、見てたよ。槍は初めてだから、少してこずってたな」
「そうなの!それに彼女、すごく強かったよ!」
そうだろうな。見てても分かった。中々いい動きをしていたからな。
「それでは、次はあなたの番ですね」
そこで我に返ったメリスさんが俺にそう言ってくる。
「分かりました」
俺はそう言ってステージに向かう。
ステージには既に相手の男子生徒がいた。
「君が俺の相手だね」
「はい」
「俺はガイ。ガイ・ルメイアだ」
「俺は難波レイです」
「よろしく」
「こちらこそ」
俺達はそう挨拶をして、お互いに距離を取る。
そして俺達は武器を出す。
「リベレイト!」
「はっ!」
ルメイアさんの武器はショートソードだった。
「何だあれ!?」
「え、透明!?」
周りの生徒達はそんな反応をする。
この反応も懐かしいな。
「難波君、君は……」
「ああ、俺のは少し特殊なんですよ」
俺はいつものようにそう誤魔化す。
「準備はいいですか?」
「はい」
「は、はい」
そうして、俺は構える。
さてと、どれ程の腕前か見せてもらうぜ。
「それでは、始めてください!」
俺達は動かなかった。お互い、相手の出方を見ようとした結果だ。
……仕方ない、行くか。
俺はルメイアさんに向かって歩き出す。
少しずつ近づいてくる俺に対して、ルメイアさんは警戒していた。
そして、俺がお互いの間合いに入った時だった。
「はっ!」
ルメイアさんが俺に剣で攻撃してきた。
俺はそれを体を横にして躱す。
すると、ルメイアさんはそこからラッシュを仕掛けてきた。
中々速いな。
恐らく、彼もこのクラスで上位の成績なのだろう。隙がなく、無駄のない動きだ。
俺はルメイアさんの攻撃を避けながら、動きを観察する。
「くっ!当たらない!」
俺に攻撃が当たらない事に焦ったのか、少し剣が大振りになってきた。
「はあ!」
俺は一旦バックステップで後ろに下がると、そのままルメイアさんと距離を取る。
さて、ルメイアさんの動きも分かったし、そろそろ終わらせるか。
俺は刀を構える。
……そうだ、この世界に来てから全然試してなかったし、剣技を使ってみるか。
アイリスが見ているが、どうせもう隠す事は出来ないので使う事にする。
俺は腕を伸ばして刀を構える。
「行きますよ」
「来い!」
俺は一気に走り出した。
そのまま真っ直ぐにルメイアさんに向かって行く。
そして、再び間合いに入った。
「はああ!」
ルメイアさんは、上段に構えた剣を俺に向かって振り下ろそうとする。
俺はタイミングを計る。そして、俺に向かって剣が振り下ろされた瞬間、思いっきり刀を剣にぶつける。
「心証流秘剣ー響」
「うああああ!」
そのまま剣を落として、腕を抑えて蹲るルメイアさん。
「そ、そこまで!」
そこで先生から終わりを告げられ、俺は刀を鞘に納める。
「な、何が起こったんだ!?」
「剣同士がぶつかっただけだよね?」
「あ、ああ、多分」
俺はステージから下りて、アイリスとメリスさんの所に向かう。
「レイ!」
「おう、勝ったぞ」
「レイなら絶対勝つと思ってたよ!」
そう言って、アイリスは俺が勝った事を喜んでくれる。
「それより、さっきのは何?」
「ああ、あれは剣に刀をぶつけて、その振動で腕が痺れて、一時的に使い物にならなくなったんだよ」
「え、そんな事出来るの!?」
「ああ」
かつては使えなかった剣技だが、今の俺は使えるようになった。
「あなた達は一体……」
そうメリスさんが驚いている。
俺には分かっていた。この人は俺達の実力を調べるため、この模擬戦を提案した。そしてクラスで上位の実力の生徒と戦わせ、もし生徒の相手になるようなら、戦士としての素質があるなぐらいに思っていたのだろう。
ここは魔族と戦う戦士を輩出する機関だ。そこの生徒はそこらのソウル・リベレイターよりも遥かに強い。
しかし、俺達はクラスでも上位の実力がある生徒を倒した。
その結果を見て、予想と違いすぎて驚いているのだ。
俺はもっと強いやつと戦った事がある。アイリスは8年間、俺と修行した。なら、俺達は負けないさ。
「学園の見学はここまでですね。俺達は帰ります」
「え?」
「え、もう!?」
「ああ」
「えー、もうちょっと見たかったなー」
「悪い悪い、帰りにまたクレープを買うからさ」
「え、本当!」
「ああ」
「それじゃあ仕方ないね。急いで買いに行こう!」
「分かったよ。メリスさん、そういうわけで、今日のところは帰ります」
「え、ええ、分かったわ。門まで案内するわね」
そう言って、メリスさんは俺達を門まで案内してくれた。
門に着く頃にはメリスさんの動揺も収まっていた。
「本日はありがとうございました」
「ありがとうございました!」
俺とアイリスが頭を下げる。
「いえ、いいのよ。それより、あなた達はどこかの育成機関で訓練か何か受けていたの?」
「いえ、俺達は今までどこかの機関や施設で訓練していたわけではないですよ」
「じゃあ、あなた達のその強さは一体?」
「まあ2人で修行してただけですよ」
「修行?」
「ええ。それでは、そろそろ帰ります。行こうか」
俺達はそうして帰ろうとする。
「あ、待って!」
「はい?」
そこでメリスさんに呼び止められた。
「あなた達、もしよかったらこの学園に入らない?」
そう提案してくるメリスさん。
「え、いいんですか!」
どうやらアイリスは乗り気のようだ。
しかし、問題がある。
「すみません、俺達は学費を払えないんです」
そう、単純に金がない。シスターが持たせてくれた金も、今までの出費で底をつきかけている。
よって、俺達には学費を払うだけの余裕がない。
「それなら大丈夫。あなた達の実力なら特待生扱いよ。特待生なら学費もいらないし、生活費も支給されるわ」
「本当ですか!」
「ええ」
「やったー!」
アイリスは喜んでいるが、俺はそうではない。
確かにこの学園に入れば、生活には困らない。それに卒業すればエリート戦士として就職出来るだろう。
だが……
なぜか分からないが、俺はこの学園に入学してしまったら、何かが起こる気がしてならない。
「ねえレイ、一緒に入ろう!」
だが、アイリスはもう学園に入学する気のようだ。
……仕方ない。
「分かった」
「決まりね!」
「それじゃあ書いてもらいたい書類があるから、ついて来てくれるかしら」
「はーい!」
そうして、俺達はメリスさんについて行った。




