56話
俺とアイリスはセントメイルを目指して出発した。俺達は今、孤児院を出てすぐの平原を歩いている。
「ねえねえ、ここからセントメイルまでどのくらいあるの?」
「そうだな……歩いて行くと、恐らく3ヶ月はかかるな」
「3ヶ月!?」
俺達のいた孤児院からセントメイルまで地図で見たところ、陸続きではあるがかなり遠かった。だから歩いて行くとなると3ヶ月はかかるだろう。
「それって、どうにかならないの?」
「どうにかって言われてもなあ」
うーん。この世界だと馬車を使うぐらいしかないんだよな。
「……走るのは?」
「走るって……」
「修行がてら走ろうぜ。恐らく、俺達が本気で走れば1ヶ月半ぐらいで着くんじゃないかな」
「え、そうなの?」
「ああ」
「……じゃあ走ろうかな」
「そんじゃ、リベレイト!」
「はっ!」
俺達は武器を出した。これにより、身体能力が向上するので、普段よりも格段に速く走ることが出来る。
「行くか」
「うん」
そうして、俺達は走り出した。
俺達は毎日走った。途中で町や村に寄りながら、2人でセントメイルまで向かう。もちろん修行も欠かさずにしていた。
そんな日々を過ごす事1ヶ月。
予定よりも早くセントメイルに着きそうだった。
そして俺達は今、木陰で休憩をしている。
「ねえレイ、もうそろそろセントメイルに着きそう?」
「ああ、そうだな。あと3日もあれば着くと思う」
「本当!」
俺がそう言うと、アイリスは嬉しそうだった。
「レイはどんな人がいると思う?」
「そうだな……俺より強い人がいたらいいなとは思う」
「えー、レイより強い人ってよっぽどだよ」
「そんな事ないさ。俺はまだまだだよ」
「そんな事ないと思うけどなー」
アイリスはそう言うが、俺は自分の事をまだまだだと思っている。
そう考えている時だった。
「もし魔族が出たら、私達も戦う事になるのかな?」
そうアイリスが聞いてくる。
「……そうだな。その可能性はあると思う」
「やっぱり……」
「でも、余程の事がないとそうはならないさ。何のために戦士がいると思ってんだよ」
「……それもそうだね」
「そうさ。だから余計な事は考えなくていいんだよ」
「うん」
「そんじゃ、そろそろ行くか」
「そうだね」
そうして、俺とアイリスは休憩を終えて、セントメイルへ向けてまた走り出した。
それから3日経ち、予想通りセントメイルに着いた。
「さて、ここがセントメイルだな」
「うわあ!」
アイリスはセントメイルの街並みを見て、目をキラキラさせていた。
「ねえ、あれ何かな!?」
そう言ってアイリスが指差すのは、クレープのような食べ物を売っている屋台だった。
「食べるか?」
「え、いいの?」
「もちろんだ」
俺はそう言って屋台の所に行く。そこにはクレープと書いてあった。
中々に種類もあるな。
「どれが食べたい?」
「うーん……じゃあこれ!」
そう言ってアイリスが指差すのは、生クリームとチョコレートのクレープだった。
「分かった。すみません」
「いらっしゃい」
「これとこれください」
「はいよ」
俺がそう言うと、店員さんはクレープを作り始める。
「レイは何頼んだの?」
「これだ」
俺が指差したのは、イチゴジャムと生クリームのクレープだ。
「あ、私もいいなと思ってたんだ」
「そうなのか。じゃあ半分やるよ」
「え、いいの?」
「ああ」
「じゃあ私のも半分あげるね」
「ありがとな」
そう言っている間にクレープは出来上がった。俺は店員さんにお金を渡し、クレープを受け取る。
「毎度あり」
俺とアイリスはクレープを持って、空いているベンチに座った。
「何これ!すっごく美味しい!」
クレープを食べたアイリスがそう言って立ち上がる。
「おいおい、落ち着けって」
「あ、ごめん」
そう言って、少し恥ずかしそうに座るアイリス。
「美味いか?」
「うん!すごく美味しい!」
「そうか、よかったな」
そう言うと、アイリスは不思議そうに俺を見る。
「あれ、レイは食べないの?」
「ああ、アイリスに半分あげるって言ったからな。俺が食べたやつは嫌だろ?」
「あ、私は食べちゃった。レイは食べかけは嫌?」
「ああ、俺はいいんだよ。全部食べていいぞ」
「それじゃあ悪いよ。それなら、お互いに食べかけのクレープを交換しよう」
「え!?」
「だって、それなら公平でしょ」
「それって公平なのか?」
「いいじゃん!ほら、レイも食べて」
「あ、ああ。分かった」
いまいち納得出来なかったが、仕方なく俺は食べる事にした。
「うん、美味い」
「でしょ!」
「ああ」
クレープなんて久しぶりに食べたな。
そうして、お互いにクレープを半分食べたところで交換して食べた。
「それじゃあ行くか」
「うん!」
俺達はクレープを食べ終えたので、立ち上がって歩き出した。
暫く街を歩いていると、大きな建物が見えた。
「あれ何かな?」
「恐らく、あれが戦士育成機関じゃないか」
「え!?」
あの建物には俺のよく知る学校などの特徴が見られる。恐らく、あそこが戦士育成機関だろう。
「あそこに行ってみるか」
「そうね」
俺とアイリスはそうして大きな建物に向かった。
「ここだな」
「大きい!」
アイリスは建物を見上げ、そう言う。
「早速行くか」
「うん!」
俺達は門の所にいる警備員の人に話しかけた。
「すみません」
「何の用ですか?」
「あの、ここって戦士育成機関ですか?」
「そうです。ここは戦士育成機関の国立グロリア学園です」
やっぱりか。
「あの、見学させてもらう事は出来ますか?」
「少し待ってください。確認しますので」
そう言って警備員の人は確認しに行った。
「中に入れるかな?」
「それは分からないけど、入れるといいな」
そう話していると、警備員の人が戻って来た。
「許可が出ましたので、中へどうぞ」
「本当ですか!」
「ありがとうございます」
俺とアイリスは警備員の人と一緒に中に入った。
「ここで少々お待ちください。案内役の人が来ますので」
「分かりました」
「それでは失礼します」
「ありがとうございました」
そして警備員の人は警備に戻り、俺とアイリスは言われた通りその場で待つ。
すると、建物の方から女の人が歩いて来た。
「あなた方が見学希望の方ですか?」
「はい、そうです」
「私、この学園で講師をしているレイラ・メリスと申します」
メリスさんは、身長170センチ程の長身で、金髪を後ろで括っていて、メガネをかけた美人な人だ。
「突然の申し出で申し訳ありません」
「いえ、入学希望や見学希望の方は大歓迎ですよ」
俺が謝ると、メリスさんはそう言ってくれる。
「ありがとうございます」
「いいんですよ。では、早速ご案内いたしますね。ついて来てください」
「はい」
「はい!」
俺とアイリスはメリスさんの案内で、学園内を回る事になったのだった。




