54話
うっ……
気がつくと、そこは研究所だった。
「お、戻ってきたね」
「……春日さん」
俺の横に春日さんがいた。
「そろそろ戻ってくる頃だと思ってたんだ」
「そっか」
「うん、それじゃあ外すね」
そう言って、春日さんは俺から機械を外していく。
……何だか、懐かしい感じがするな。
VRの世界では何十年と生きても、こっちでは数時間程度しか経っていない。その差が、俺に懐かしさを感じさせる。
「よし、外せたよ」
「ありがとうございます」
俺はそう言って立ち上がる。
「もう休むかい?」
「そうですね、軽くトレーニングしてから休みます」
「分かったよ」
俺はそのまま軽くトレーニングをして、その後は休んだ。
俺は今ベッドで横になっている。
今回のVRの世界では何とかなったな……
俺は今回、賊に襲撃された時にみんなを失ってもおかしくなかった。
だが、王の力で何とかなった。
俺は真っ白な空間で、ミリアス王国の初代国王であるクルー・ミリアスさんに会った。その時、王の力というものがある事を教えてもらい、その力で賊を倒した。
それで何とかなったけど、あの時は本当に浅はかだったな。
今でも、みんなを危険に巻き込んでしまった事を悔やんでいる。
本当に、何回繰り返せば気が済むんだよ……
俺は自分に呆れつつ、そう思う。
……そろそろ寝るか。
俺はそのまま寝た。明日、また別の世界に行く事になるんだろうなと思いながら。
そして1週間が過ぎた。
俺はあれからVRの世界に行っていた。特に何も起きず、平穏な人生を送っては死んで現実に戻り、次の日にまたVRの世界に行く。これを繰り返していた。
俺は今日も朝からトレーニングに励んでいた。
相変わらず、この体は重いな。
俺は現実の体とVRの世界の体との差を感じつつ、ランニングマシンで走り込みをする。
そうしてトレーニングをする事3時間。
俺は休憩がてら、昼食を取っていた。
「あ、今日も研究室に来てね」
ドアを開けっ放しにしていたので、トレーニングの前を通った春日さんがそう言ってきた。
「分かった」
「よろしくね」
そのまま春日さんは研究室に向かった。
さて、俺もさっさと食べて行くか。
俺は急いで昼食を終えたのだった。
俺は研究室のドアを開け、中に入る。
「春日さん」
「ああ、来たね。じゃあ早速VRの世界に行ってもらおうかな」
「ああ、分かった」
俺はソムニウムに座り、春日さんが準備するのを待つ。
「準備出来たよ」
「こっちはいつでもいいぜ」
「分かった。それじゃあいくよ」
そう言ってスイッチを入れた。
「じゃあ頑張ってね」
そうして、俺はまた意識を失った。
木漏れ日が差し込んできて、とても眩しい。
俺はまたVRの世界に来た。いつもと変わらぬ光景を見つつ、シスターが来るのを待つ。
さて、今回はどんな世界に来たのか……
ランダム生成されるVRの世界では、俺は自分で情報を手に入れていくしかない。だから現時点では、ここがどんな世界なのか分からない。
俺はそんな事を考えつつ、シスターが来るのを待っていた。
それから俺はシスターに拾われ、孤児院で過ごしていた。
そして7年が過ぎた時だった。
「レイ、今日からこの子もここで住む事になったから、仲良くしてあげてね」
シスターはそう言って、女の子を紹介してくる。
「私、アイリス・ラピスって言います」
女の子はそう自己紹介をしてくる。
「あ、俺は難波レイだ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
そう言って頭を下げてくるラピスさん。
「じゃあ私は夕飯を作るから、2人は遊んで来なさい」
そう言ってシスターは台所へ向かった。
どういう事だ?
俺は今まで20回程VRの世界で過ごした。そして必ず最初はシスターに拾われ、孤児院で生活をしていた。その時は必ずシスターと2人で生活していた。それが、今回はシスターが女の子を拾ってくるというイベントが発生したわけだが……
これはどういう事だ?俺1人用の孤児院じゃなかったのか?
そうなると、今まで偶々、俺1人だけがシスターに拾われていた事になる。
そんな事があるのか?
それか、今回が特別なのかもしれない。
「あの……」
そんな事を考えていると、ラピスさんが俺に話しかけてきた。少し考え込んでしまっていたな。
「ごめん、ラピスさん」
「あ、いえ。あの」
「ん?」
「私の事はアイリスって呼んでください」
「分かった。俺もレイでいいよ」
「はい」
「あの、会ったばかりで悪いんだけど、君の事について聞かせてもらっていいかな?」
出来るだけ情報が欲しいからな。
「え?」
「ああ、嫌ならいいんだ」
「……いえ、大丈夫です」
「本当?」
「はい」
「ありがとう。それじゃあ、あっちで話そうか」
そう言って、俺達は孤児院の庭にあるベンチに座った。
「それで、聞かせてもらえる?」
「はい」
そうして、彼女は自分の事を話してくれた。
どうやら彼女は最初から孤児ではなかったらしい。ここから近い村で、普通に今まで暮らしていたそうだ。
「そうか……」
俺は悟った。恐らく両親は事故か病気かで亡くなったのだろう。
そう思っていたのだが。
「はい。そして1ヶ月前に、私のお父さんとお母さんは……魔族に殺されました」
「……え?」
魔族?何だそれ?
「私の村は魔族に襲われて、その時にお父さんとお母さんは殺されたんです」
「ちょ、ちょっと待って。魔族って何?」
「え?知らないんですか?」
もちろん知りません。
「魔族は魔界に住んでいて、人間を襲うんです。だから、魔族は悪いんだって、お父さんとお母さんが言ってました」
「え、この世界には魔族って言うのがいるの?」
「はい」
マジか!?今までの世界ではそんな存在いなかったぞ!
「本当に知らなかったんですか?」
「ああ、シスターからはそんな事聞かされてないしな」
何か一気にファンタジーっぽくなってきたな。まあランダム生成されるこの世界の事だ。こういう事もあるんだろう。
「それじゃあ、君はどうやって助かったの?」
「私、その日は1人で出かけていたんです。その間に村が襲われたみたいで」
「そっか……」
何だか、この世界も一癖ありそうだな。久しぶりに何かが起きる予感がしながら、俺はこれからどうするか考える事にした。
次の日、俺は修行をしていた。今は刀を振っている。
「何してるんですか?」
そう聞いてくるのはアイリスだ。
「ああ、これは修行をしているんだ。今は刀を振って、型を確認してるんだよ」
「そうなんですか……あの」
「何?」
「レイの持ってるそれ」
「ああ、これは魂が具現化した武器なんだ」
「それ、私も欲しいです」
「え?」
「それがあれば、私も魔族を倒す事が出来るかもしれません」
「……魔族を倒すために武器を手に取るのかい?」
「はい。私のような子供がいなくなるように、魔族を倒します」
アイリスは、決意に満ちた目をしていた。
この歳でそんな目をするのか。
アイリスは俺と同じ7歳だそうだ。そんな少女が、ここまで決意に満ちた目をするのは、余程の事があったからだろう。
いや、あったんだよな。
両親を殺されるといった体験が、彼女にそう決意させたんだろう。
それなら。
「じゃあ、やってみるかい?」
「はい!」
そうアイリスは返事をしたので、俺はアイリスに武器を出すための方法を教える事にした。




