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4話

草木は生い茂り、木々の間から木漏れ日が差し込んでいる。心地よい風が吹き、草木がそれに合わせて揺れる。

……ここがVRの世界。

見た感じでは現実と変わらない。これはすごい技術だ。発表すればノーベル賞を取れるんじゃないか?いや、絶対取れるな。

「……」

起きようとしたが無理だった。自分の体を見てみると、小さくなっていた。そう言えば生まれてすぐと言っていたな。なら今は赤ん坊という事か……仕方ない。このまま待つか。

暫く待っていると。

「あら、こんな所に赤ちゃんが!?」

近くを通ったのか、おばあさんが俺を見つけた。

「取り敢えず、孤児院に連れて行きましょう!」

そのまま俺は連れて行かれた。どうやら無事に孤児院へは行けそうだ。

そのまま俺は孤児院へ連れて行かれた。中には誰もおらず、静まり返っていた。

そんな孤児院で俺の人生はスタートした。


VRの世界に来て18年が経った。俺はシスターに育てられ、すくすくと育った。この世界では難波レイと名乗っている。春日さんに俺の言動を監視されてるかもしれないから本名は避けた。姓は俺の地元である大阪の難波とNo.をかけて、名は0をレイと呼んだだけだ。シスターは俺が大人びていると言っていたが、元々が17歳なので仕方ないだろう。そうして18歳となった俺は、明日この孤児院を出て行こうと思う。いつまでも世話になってはいられないし、折角だから旅をしてみたいからな。

その事をシスターに言うと、シスターは少し寂しそうな顔をしていたが、俺がやりたい事をやりなさいと背中を押してくれた。本当にいい人だ。

そんなわけで俺は旅をすることにした。


「じゃあシスター、行ってくるよ」

「ええ。気をつけてね。それから、偶にでいいから帰ってらっしゃい」

「分かった。本当にありがとう。お世話になりました」

「こっちこそ、あなたがいて楽しかったわ。ありがとう」

俺は目頭が熱くなるのを感じながら、シスターに1度頭を下げ、すぐに頭を上げるとそのまま歩き出した。

考えてみれば、現実で過ごしたのは17年間。しかも小さい頃の記憶は朧げだ。それに対して、この世界では18年間過ごし、ここに来た時からの記憶がある。もうここは第2の故郷と言っても間違いないだろう。

そんな事を思いながら、俺は歩いていた。


旅立ってから1ヶ月。

俺はまず向かうのは日の国という国に向かっていた。ここはシスターから聞いた話だと、日本にとても似ている。島国ではないが、食べ物や文化がとても似ているんだ。それを聞いてから、1度行ってみたいと常々思っていた。

そういうわけで、今はその途中の町の宿で休んでいる。ここから日の国までは遠くないので、明日には着くだろう。

あと、この世界では所々でテロや戦争が起きていて、途中で寄った町でも戦争の跡が見られた。そういう所では復旧に忙しく、人手不足だったので俺は手伝った。俺はこの世界でもトレーニングをしていたため、現実よりも筋肉があり、土木作業も普通にこなせた。そんなことをしていると、割と稼ぐことが出来た。そのおかげでこうして野宿せずに済んでいる。

そんなことを考えながら、睡魔が襲ってきたので俺は目を閉じ、そのまま眠るのだった。


朝。俺は早速出発した。今日は天気もいいので、このままだと夕方には日の国に着くだろう。

そうしてひたすら歩くと、陽が傾いてきた。そろそろ着くはずだが……

そう思っていると、遠くに建物が見えた。

「あれか!」

そうして急いで向かう。そして漸く辿り着いた。

「ここが日の国か!」

そこは和風の建物が多く、現実の一昔前の日本のような感じだった。

通りを歩いていると、屋台が目に入った。そこにはおでんと書いてあった。こっちにもおでんがあるのか。

さらにたい焼き屋や甘味処もあった。その風景はとても懐かしい。

「さて、宿屋を探そう」

そう思っていると、旅館という字が目に入った。

「……ここでいいか」

見た感じではそこそこ大きく、時間も時間なのでこの旅館に入ることにした。

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

中には玄関番の女の子がいた。茶色の髪を後ろで束ねた可愛い女の子だった。

「1人です。お部屋の方は空いていますか?」

「……」

何だ?玄関番の女の子が固まったぞ。どうしたんだろう?

「あのー」

「あっ!すみません!お部屋の方は空いておりますよ!」

「そうですか。では何泊出来ます?」

「何泊されるご予定でしょうか?」

「そうですね……取り敢えず1週間はこの国に滞在しようかなと思っているんですが」

「1週間ですね。お部屋の方は1週間お泊まりいただいても構いませんが、どうなされますか?」

「じゃあ1週間お願いします」

「畏まりました。ではこちらへどうぞ!」

そのまま女の子の案内で部屋の前まで来た。

「こちらのお部屋でございます」

「おお!」

中は和室だった。畳が敷かれ、掛け軸もある。

「お気に召されましたか?」

「はい!」

「ありがとうございます。それでは後ほどお料理をお持ちしますね」

そう言って、女の子は戻って行った。

「はー、和室は久しぶりだな」

孤児院は洋室ばかりなので、和室はとても久しぶりで、懐かしい。

そうして寛いでいると。

「お客様、お料理をお持ちしました」

戸が開き、さっきの女の子が料理を持ってきてくれた。

「では、私はこれで。何かあればお申し付けください」

「ありがとうございます」

そのまま女の子は戸を閉める。

料理は和食だった。米もある!

「久しぶりの和食だな。いただきます!」

そう言って1口食べる。

「うめー!」

久しぶりの和食は、現実のものと変わらずとても懐かしい味だった。

そして食べ終わって暫くすると、さっきの女の子が来た。

「お下げしますね。お風呂のご用意も出来ておりますのでどうぞ」

「分かりました。ありがとうございます」

そのまま風呂に行くことにした。


「うお!露天風呂か!」

そう!露天風呂があった!これにはテンションが上がる!早速入ろう!

「はあー、やっぱ露天風呂はいいなー」

俺は露天風呂を満喫したのだった。

「ふう」

風呂から上がり、部屋へと向かう。

「あれ?」

部屋の戸を開けると、さっきの女の子がいた。

「おかえりなさいませ。お風呂はどうでしたか?」

「ああ、すごくよかったよ」

「ありがとうございます。お布団を敷いておきましたので、ごゆっくりお休み下さい。それでは失礼します」

そう言って出て行った。

「何か悪いな。何もかもしてもらって」

それから暫く魂の具現化の練習をしていた。実は俺はまだ魂の具現化が出来ていない。このままじゃ、あの女の子を助けるのは無理だ。何としてでも出来るようにならないといけない。

「……無理か」

今日も出来なかった。

「はあ、こんなんじゃ駄目だよな」

そう思いながら疲れていたのか、俺はそのまま眠った。


朝起きてトイレに向かうと、あの女の子がいた。

「あ、お料理をすぐお待ちしますね」

「ありがとう」

そのままトイレに行く。トイレから出ると、40代くらいの男の人と女の人がいた。恐らくこの旅館の人だろう。

「あら、あんたが昨日から泊まってるっていうお客さんかい?」

「はい、多分そうです」

「へぇ」

何かめちゃくちゃ見られてる。どうしてだ?

「昨日からお前の事を世話してる娘がいるだろ?」

隣の男の人が話しかけてきた。

「はい」

「あれは俺達の娘なんだよ」

「あ、そうだったんですか。何から何までしていただいて、申し訳ないです」

「いいんだよ。あんた名前は?」

「難波レイです」

「レイか。いい名前だね。あたしは相沢梨紗。よろしくね」

「はい!」

「俺は相沢冬士だ」

「よろしくお願いします」

そんな感じで挨拶を交わした。

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