表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/277

48話

気がつけば、真っ白な空間にいた。

「ここはどこだ?」

俺は確か賊と戦っていて、最後は結局何も出来ずに死んだはずだ。

「死んだはずなのに、ここはどこだ?」

いつもなら、死んだ後はすぐに現実に戻るはずだ。しかし、ここはただの真っ白な空間で、現実ではないのは確かだ。

しかも、足が地面についている感覚もない。まるで浮いているようだ。

「いや、これは浮いてるな」

俺はそう思いつつ、ここはどこなのかを考える。

「おい」

すると、声がした。

「何だ?」

確かに声が聞こえた。でも、ここには俺しかいないはず……

「ここだ」

「うお!?」

後ろから声がするので、振り返ると50代ぐらいの男性がいた。

「あの、あなたは?」

「私か?私はクルー・ミリアスだ」

「クルー・ミリアス……って、まさか!」

「私を知っているのか?」

「ミリアス王国の初代国王ですよね?」

「いかにも、そうだ」

やっぱりか!初代国王について書かれた本を読んだ時に、初代国王の名前も書かれていたから覚えていたんだ!

「君は難波レイ君だな」

「え、どうして知ってるんですか?」

「君の事を見ていたからな」

「見ていた?」

「ああ。私は気がつけばここにいた。そこに窓があるだろう。そこから地上の様子を見る事が出来たんだ。それで偶々君を見つけてね。それからは君を観察していたんだ」

あ、本当だ。地上の様子が映っている。それにしてもマジかよ。それだと、かなり長い時間ここにいたんじゃないのか?

「それって、どのくらいの期間ですか?」

「君が王国に来た日から、今までだ」

それだと4ヶ月弱か。

「あの、ここってどこなんですか?」

「すまない。私にも分からないんだ」

「そうなんですか……」

まあ仕方ないよな。他の質問をするか。

「それじゃあ、どうして俺を観察していたんですか?」

「それは君の考え方に共感したからだ」

「考え方?」

「そうだ。君はいつも誰かを助けるために剣を振るっていた。それが私と同じだと思ってね」

成る程。

「俺も初代国王について書かれた本を読んだ時、似てるなって思いました」

「そうか」

「でも、俺は初代国王と違って助けられなかった」

「それは、先程の賊の襲撃の事か?」

「はい。俺は王国を守るって言いながら、結局守れなかった。それどころか自分も死んで、友達まで死なしてしまった」

俺は結局、誰も助けられなかった。

「何を言ってるんだ?」

「え?」

「君は死んでない。それに、友達も死んでない。まだ終わっていない」

……何を言ってるんだ?

「君は死んだからここに来たんじゃない。ただ意識をここに飛ばしただけだ」

「どういう事ですか?」

「君はここに意識を飛ばしただけだ。そして君が来てから今まで、地上の時間はここの何百分の一しか流れてないようだ。だから、まだ終わっていない」

「そんな事があるんですか?」

「ああ。恐らく、君はもう少ししたら地上で目を覚ます。そうしたら、まだ賊に蹴られているところだろう」

マジか!?てっきり終わったと思ってた。

「……でも、このまま意識を取り戻しても、何の解決にもならないですよ。俺はそのまま死ぬだけです」

そう。戻ったところで一緒だ。

「そうだな。このままだと死ぬだけだろう」

「……」

「だが、君は誰かを助けようとした。勇敢に賊に向かって行った。そんな君に、力を授けよう」

「力?」

「そうだ。私の本を読んだ時、呪文のようなものが書かれていただろう」

「呪文……」

そういえば、そんなものがあったな。

「あの呪文を唱えるんだ」

「唱えると、どうなるんですか?」

「それは自分で確認するといい」

「……分かりました」

「それと、1つ注意がある」

「注意?」

「呪文を唱えるには、呪文の通り君の魂が王の魂に相応しくなければならない」

「王の魂……」

「君にとっての王とは何だ?」

王……

「俺にとっての王とは、強くて優しくて、そして民のために全力を尽くす人です」

「そうか。それなら、その事を忘れない事だ。そうすれば、君は力を手に入れる事が出来るだろう」

「分かりました。絶対に手に入れてみせます」

もう、過去と同じ過ちを何度も繰り返すわけにはいかないからな。

「それでは、そろそろ時間だ」

「もうですか?」

「そうのんびりはしていられないだろう?」

「確かに、そうですね」

今この瞬間も、みんなが危険に晒されているからな。

「では、しっかりな」

「はい!ありがとうございました!」

俺はお礼を言って、頭を下げる。

「それではな」

その瞬間、俺は意識を失った。


俺は意識を取り戻した。

「ぐはっ!」

痛え!蹴られてる最中なの忘れてた!まずはこの状況から脱出しないと!

「うわあああああ!」

「な、何だ!?」

「急にどうしたんだ!?」

「おかしくなったのか!?」

よし!大声を出せば驚くと思ったぜ!

俺はその隙に脱出する。

「あ、あいつ逃げやがった!」

「追え!」

賊は俺を追ってくる。

今のうちだ!

俺は初代国王から言われた通り、呪文を唱え出した。


「我、手にするは王の力」


「光を纏い、闇を照らす」


「我が魂、その力を持って」


「光り輝く未来を切り拓く」


「キング・ソウル・ドライブ!」


その瞬間、俺の体を光が包んだ。

「何だ!?」

「何が起こってるんだ!?」

光が収まると、俺は金色の光を纏い、金色のマントを羽織っていた。そして刀も金色に染まっていた。

これは、すごいな。

力が湧き上がってくるのを感じる。

これならいける!

「何だ!?」

「何がどうなってんだよ!?」

賊がそんな事を言っているが、今は無視する。

俺はすぐにトーレス達の所に行く。

「なっ!?」

「いつの間に!?」

俺はトーレスとアリアとミリーナの3人を回収して、すぐにその場を離れる。

「何!?」

「速え!」

俺は少し離れた所にトーレス達を寝かせ、今度はシュウの所に行く。

「何だ!?」

俺はシュウを回収して、トーレス達の所に戻る。

「大丈夫か?」

みんなに声をかける。

「うう……」

「痛い……」

「くっ……」

「ああ……」

どうやら意識はあるようだ。

「少しここにいてくれるか?」

「レイ……か……」

「ああ」

「レイ……」

「ごめん……なさい……」

「気にするな」

「その姿は……」

「ああ、ちょっと色々あってな。少し待っててくれ。すぐに終わらせてくる」

「無理だ……」

「逃げて……」

「大丈夫だよ」

俺はそう言って、刀を両手に持って歩き出す。

「お、おい、何してるんだ!」

「そうだ!あいつをやれ!」

賊はやっと再起動した。そして俺に向かって来る。

遅いな。

俺は構わず歩き続ける。

「うらあ!」

「おらあ!」

2人がかりで襲いかかってくる。両方剣で、左右から斬りかかってくる。

俺はそれを少し体をずらして躱す。

「何だと!?」

「馬鹿な!?」

俺は2人に向かって両手の刀でそれぞれ斬りつける。

「ぐはっ!」

「がっ!」

そうして、2人は倒れた。

「何だ、あいつ……」

「さっきと全然違うじゃねえか……」

「どうなってんだ……」

賊の動きが止まった。

今がチャンスだな。

俺は走った。

「え?」

すぐに一番前にいた賊の前に来た。そのまま斬りつける。

「ぐあっ!」

そのまま倒れた。

「な、何だよ!?」

「に、逃げろ!」

そう言って逃げようとする。

おいおい、この程度で逃げるなよ。

俺は逃げようとする賊に一瞬で肉薄する。

「なっ!?」

「はっ!」

「うぐああ!」

また1人倒した。

これじゃあ埒が明かないな。一気に行くか。

俺はそう決めると、賊が固まっている所に向かって走る。

「こっちに来た!?」

「逃げろ!」

逃すかよ!

俺は一気に駆け抜けて、後ろからどんどん斬りつけていく。

「うああ!」

「ぐああ!」

「ぐはっ!」

「かはっ!」

「あああ!」

そのままどんどん斬りつけていく。

そして気づけば、俺に向かって来ていた賊を全員倒していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ