45話
夏休み初日。俺は家の横の空き地で修行をしていた。
みんなと話し合った結果、1週間後にミカのいるエード王国に行き、3週間後にエーレのいるテトラ王国に行くことにした。
学院の夏休みは7月25日から8月31日までだ。今回のスケジュールだと、学院が始まるぎりぎりまで旅行する事になる。
まだ1ヶ月しか経っていないのに、懐かしく感じるよな。
国際試合が終わって、エーレ達が帰ってから1ヶ月程しか経っていない。それなのに、その時の事を思い出すと懐かしく感じる。
不思議なもんだな。
俺はそう思いながら、刀を振り続けた。
俺は修行を終えて、シャワーを浴びて服を着替えた。
時間は正午だ。学校がないと暇だな。
「さて、何をするか」
そう思って何をするか考えようとした時だった。
「ん?」
何か遠くで大きな音がした気がした。
「気のせいか?」
そう思い、俺は椅子に座った。
「……いや、気のせいじゃないな」
今度は悲鳴が聞こえた。
「何かが起こったのか?」
俺は椅子から立ち上がり、外に出た。外の風景は何も変わっていない。特に何かが起きたようには見えない。
「音のした方に行った方がよさそうだな」
俺は音のした方向に向かって走った。
俺は今街に出たのだが、みんな逃げようとしているようだ。
「何があったんだ!?」
俺はそう思い、近くを通った男の人に聞いてみた。
「すみません、何があったんですか?」
「あんた、聞いてないのかい?」
「何をですか?」
「賊が出たんだよ!」
「え!?」
賊だって!?
「今、この王国に賊のやつらが押し寄せて来てるんだよ!さっき見たってやつがいたんだ!」
マジかよ……
「あんたも早く逃げた方がいいぜ!」
「逃げるって、どこに?」
「分からねえ!けれど、賊は南から攻めてきてるって話だ!だから北に行けば何とかなるはずだ!」
賊は南から来ているのか……
「分かりました。ありがとうございます」
「ああ!じゃあな!」
そう言って、男の人は行ってしまった。
「賊が来てる……」
詳しい事は分からないが、何かが起こってるのは間違いないな。
「国王陛下の所に行ってみるか」
俺は詳しい事情を聞くために、国王陛下がいるであろう城に向かって走り出した。
俺が城に向かって走っている時だった。
「あ、レイ君!」
「アリア!」
俺はアリア達と会った。
「どうしてこんな所にいるんだ!?」
「僕達、賊が来ているって聞いたんだよ。それで学院に向かってて」
「そうしたらみんな集まったってわけか」
確かに周りを見ると、学院の生徒っぽい人が学院に向かって走っている。
「レイ君も学院へ行くんですか?」
「いや、俺は城へ行く」
「え、何で?」
「詳しい事情を国王陛下から聞くためだよ」
「それなら、俺達も行っていいか?」
「分かった。一緒に行こう」
そうして、俺達は城へ向けて走り出した。
「着いた!」
俺達は城の前にやって来た。
「ちょっと待っててくれ」
「分かった」
俺は衛兵の人に中に入れてもらうため、話しかけた。
「すいません」
「ん?ああ、君は確か学院の生徒だったな」
「はい」
「今忙しいんだが、何の用だ?」
「今、賊が来ているという情報が街で流れているんですが」
「もう広まっているのか!?」
「はい。それで、国王陛下に詳しい事情をお聞きしたいと思いまして」
「今は国王陛下もお忙しいからな。それは無理だと思うんだが」
「そこを何とかお願い出来ませんか?」
「そう言われてもな……」
俺と衛兵の人がそんなやり取りをしていると、城の方から誰かが来た。
「レイさん!」
「ラルカさん!」
来たのはラルカさんだった。
「レイさんならここに来ると思ってました」
「それでここまで来てくれたんですね」
「はい。それでは中にご案内します。あなたは引き続き見張りをお願いします」
「分かりました!」
「あの、俺の友達も来ているんですが」
「それならご一緒にご案内します」
「ありがとうございます。少し待っててください」
俺はそう言って、トーレス達の所に戻る。
「中に入れてくれるぞ」
「本当か!」
「ああ」
「それじゃあ行こう!」
そうして俺達は、ラルカさんに城の中へ案内してもらった。
「うわあ!」
「すごいな!」
「これがお城の中なんですね!」
「豪華だね!」
みんなは城の中を見て、とても驚いていた。
「こちらでございます」
そう言って俺達が案内されたのは、俺が前に国王陛下と会った部屋だった。
「こちらでお待ちください」
ラルカさんはそのまま国王陛下を呼びに行った。
そして俺達は座って待っていた。
「お待たせしました」
少ししてラルカさんが戻って来た。
「レイ君、久しぶりだね」
国王陛下はそう言って入って来た。
「お久しぶりです、国王陛下」
「そっちのみんなは、ちゃんと挨拶するのは初めてだね」
「は、はい!俺はトーレス・マーラルです!」
「わ、私はミリーナ・ケリーです!」
「僕はシュウ・ライザンです!」
「私はアリア・テレサと申します!」
みんなが自己紹介をした。
「うん、よろしくね」
そう言って、国王陛下はソファーに座った。
「それで国王陛下、今何が起こってるんですか?」
「実はね、賊がこの国に攻めてきているんだ」
「じゃあ、今街で流れてる噂は本当なんですね」
「街ではもう噂になっているのかい?」
「はい、実際に見た人がいるらしいです」
「そうか」
「それで、賊が何でこの国を攻めて来るんですか?」
俺が一番気になっている事を聞いてみた。
「そうだね、君達には話しておこう」
そう言って、国王陛下は話し始めた。
「3年程前かな。今の5つの王国の在り方について不満を抱くものが出てきたんだ」
「不満ですか?」
「うん。その不満とは、5つの国が戦争はしないという条約を結んでいる事なんだ」
「ですが、それはいい事なのでは?」
「だよな」
「確か戦争はしない代わりに、国際試合をするようになったんですよね」
「その通りだよ。毎年行われている国際試合は、戦争の代わりなんだ。だけどそうじゃなく、本当に戦争して、どの国が上か決めたいって人が出てきてね」
成る程。平和になれば、逆に戦争をしたいって人も出てくる事があるからな。どの世界でもそういった事はあるんだな。
「それで、今回はそんな人達が賊として謀反を起こしたんだ」
「そんな……」
「どのくらいの規模なんですか?」
「人数は2万人いるみたいだ」
「2万人!?」
「そんなに!?」
「うん。それでこちらの戦力は8000人程なんだよ」
「え、それってやばくないですか?」
「そうなんだ。それで困っていてね。何とか今、国民を避難させているんだ」
「国の防衛は?」
「……ほぼ不可能だろうね」
「そんな……」
「それじゃあ、この国はどうなるんですか?」
「もう、放棄するしかないと思ってる」
「マジかよ……」
みんないきなり国を諦めるって言われて、呆然としている。
「あの」
「何だい?」
「今、防衛に徹してる人は8000人いるんですか?」
「うん」
「その人達はどうなるんですか?その数を相手にして、何とかなるんですか?」
「……心苦しいけど、運がよければ生きて避難できるかもしれない。けど、恐らく……」
「それって、見捨てるって事ですか?」
「……そうなるね」
本当に悔しそうに、国王陛下はそう答えた。
くそっ、どうにかならないのかよ……そうだ!
「国王陛下、他国からの支援は?」
「それは無理だ」
「どうして!?」
「他国も襲撃を受けているんだ」
「え!?」
「さっきそう報告があったんだよ。だから、他国にも頼れない。それどころか、他国の王も国を諦めているんじゃないかな」
「そんな……」
嘘だろ……何でそんな事に……
「まさか、ここまで人数と戦力を揃えてくるなんて思ってなかった。本当に、僕は何をやってたんだろう……」
国王陛下はもう諦めているようだ。見れば、みんなにも絶望感が漂っている。
……こんな事で、諦めてたまるか!俺は、何のために力をつけたんだ?こういう時のためだろ!
「国王陛下、俺も戦います」
「え?」
「レイ!?」
「何言ってんだよ!?」
「俺は戦う。この国を守るんだ」
「何言ってんの!?」
「無理ですよ!?」
「無理じゃねえ!こういう時のために、俺は力をつけたんだ!絶対にこの国を守る!」
「レイさん、それは無茶です!レイさん1人が戦力として加わってどうにかなる問題ではありません!」
「そんな事、分からないじゃないですか!俺は行きますよ!」
「レイ君……」
「国王陛下、俺は行きます」
俺はそう国王陛下に宣言する。
「……分かった」
「国王陛下!?」
「ここはレイ君に任せよう」
「ありがとうございます」
「でもレイ君、これだけは守って欲しい」
「何ですか?」
「無理だと思ったら、絶対に逃げるんだ。君はまだ若い。死ぬのだけは駄目だ」
「……分かりました」
「うん」
「それじゃあ行ってきます」
そうして、俺はドアを開けて走り出した。




