44話
7月。このアセンカ王国では、現実の日本と同じで四季があり、殆ど日本の気候と変わらない。よって、7月ともなると気温は30度を超え、とても暑い日が続いていた。
「暑いなー」
「それ、言わないでよ」
「そうだよ、もっと暑くなるじゃん」
みんなこの暑さに参っていた。今、俺達は学期末試験のための勉強をしているのだが、みんなやる気がない。
「こんなんで勉強なんて出来るかよ!」
「そうだよ!」
「本当ですね」
「レイは暑くないの?」
シュウが、1人で黙々と勉強していた俺に聞いてくる。
「ああ、このぐらいの暑さなら平気だ。もっと暑いところで修行してたこともあるしな」
「マジかよ」
「よくやるよね」
「流石ですね」
アリア以外は呆れているが、俺はそれぐらいしないと強くなれないんだよ。
そんな事がありつつも、俺達は平和な日々を過ごしていた。
「もう少しで学期末試験だね」
「俺、勉強苦手なんだよな」
「私もー」
「私も得意というわけではないですね」
「えー、アリアっていっつも先生に当てられても、ちゃんと答えてるじゃん」
「そうだ!俺達はいつも答えられないんだぞ!」
「確かにトーレスとミリーナはいつも分かりませんって言ってるもんね」
「お前ら、それでよくアセンカ学院に入学出来たな」
「私、本番に強いから!」
「俺もだ!」
こいつら、これから先もこうやって、何だかんだ生きていくんだろうな。
俺も今まで数百年生きてきたから、そういうやつを何人も見てきたから分かる。
「あー、早く夏休み来て欲しいなー」
そんな事言ってる間にも、夏休みはすぐ来るさ。
「それでは、筆記試験の問題用紙と解答用紙を配ります」
今日から学期末試験が始まる。学期末試験は1週間かけて行われ、5日間は筆記試験、最終日に実技試験がある。
「それでは、始めてください」
そうして、学期末試験が始まった。
「あー、終わった終わった!」
「やっとだよ!」
今日が筆記試験の最終日だ。トーレスとミリーナはやっと終わったと喜んでいる。
「おい、まだ明日の実技が残ってるぞ」
「実技は大丈夫だろ」
「そうそう。私達、入学した時より強くなったからね」
「そんなんでいいのかよ……」
俺はそう思って呆れてしまった。
「ですが、確かにそうかもしれません」
「アリア?」
「考えてもみてください。私達はクラス対抗戦で優勝しました。それに、個々の実力も、国際試合で優勝したレイ君と対戦する事で、上がっています」
「そう言えばそうだね」
考えてみれば、確かにそうだ。ここ最近、みんなの実力が上がっているのを、俺も実際に感じていた。
「そうそう。だから大丈夫だって」
「そうだといいけどな」
そうして、俺達は実技試験の日を迎えた。
「それでは、実技試験を始めます」
そうして実技試験が始まる。実技試験は第3闘技場で全クラス合同でやる事になっている。順番はA組からアルファベット順となっている。試験内容は入学試験の時と同じだ。
そして、試験は進みミリーナの番となった。
「はあ!」
「ふっ!」
「そこまで!」
何と、始まってから3分間、ミリーナは攻撃を凌ぎ切った。割と余裕で。
「な、俺達は強くなってんだよ」
「マジか……」
俺はそう言うしかなかった。
「難波君、マーラル君、ライザン君、テレサさんは最後に試験をしますから、待っていてください」
「え、あ、はい」
「分かりました」
「はい」
「はい!」
「何でだ?」
「お前がまた先生を倒したら、後のやつらが試験できないだろ?」
「そうか。トーレス達は?」
「さっきのミリーナの試験で、俺達も先生を倒す可能性があると思われたんじゃないか」
「マジかよ……」
そうしている間にも試験は進む。そしてH組の最後の人が終わった。
「では、マーラル君、ライザン君、テレサさん、難波君の順番だ試験を行います」
「俺が最後かよ」
「仕方ないって。そんじゃ、行ってくるわ」
「ああ、頑張れよ」
「おう!」
そうして、トーレスの試験が始まった。
「うおお!」
「ぐうっ!」
「そこまで!」
トーレスは、先生を倒すまでには至らなかったが、1分で試験が終わった。
「やっぱレイを相手にしてる方が辛いわ」
そう言いながら俺の所に戻ってくるトーレス。
「そんな事ないだろ」
「いやいや、あるって」
そんな事を話していると、シュウの番になった。
シュウは試験が始まると、一気に先生に向かって銃で撃つ。
しかし、シュウの場合は銃なので、盾が相手だと厳しいだろう。そう思っていたのだが。
「これで!」
「ぐっ!」
「そこまで!」
シュウは先生の動きを読んで、銃弾を撃ち込む事に成功した。
そしてアリアの番となり、試験が始まった。
「はあ!」
「ぐあっ!」
「そこまで!」
アリアは30秒程で先生を倒してしまった。
「……みんな強くなりすぎだろ」
「お前がそれを言うのかよ」
そうトーレスは突っ込むが、俺からしたらみんなの方が強くなってると思うんだけどな。
「少し待っていてください」
そうして、先生が代わりの先生を呼びに行った。
少しして、先生は他の先生を連れて戻って来た。
「では、最後に難波君」
「はい」
俺は先生と対峙する。
「おい、あいつだろ」
「ああ」
「見た目はそんなに強そうには見えないけど」
「お前も国際試合を見ただろ。マジでやばいからな」
他のクラスからそんな声がする。
「お願いします」
「ああ、よろしく」
俺は挨拶をして、武器を出す。
「リベレイト!」
そして刀を抜き、構える。
「では、初めてください」
俺はその瞬間走り出す。
「はああ!」
俺は上段に構えた刀を振り下ろそうとする。
それを見て、先生は盾を構える。
「ふっ!」
「なっ!」
俺は先生が盾を構え終わるのを見て、上に飛んだ。
「心証流秘剣ー雫」
俺は刀の切先を下に向け、先生に向かって落下する。
「ぐああ!」
そして攻撃が決まり、先生は倒れた。
「そこまで!」
何とか終わったな。
俺はそう思いながら、トーレスの所に向かって歩いて行った。
「あー、やっと全部終わったな!」
「本当に長かったよねー」
「でも、筆記試験も実技試験もどうにかなりそうでよかったよ」
「そうですね」
俺はみんなの感想を聞きながら、考え事をしていた。
「レイ君、どうしたんですか?」
「ああ、ちょっとな」
「何だよ?試験は終わったのに、まだ何かあるのか?」
「いや、俺は特待生制度をまた受けられるのかなと思ってな」
俺はこの学院に特待生として通っている。もし次から特待生じゃなくなったら、俺は学院をやめないといけない。
「それなら大丈夫ですよ」
「そうそう。結局、先生も10秒もかけずに倒しちゃったもん」
「あれで学年1位じゃなかったら、誰も1位になれないよ」
「そうだぜ。だから安心しろよ」
「……そうだな」
俺はみんなの言う通り、自分が成績1位だと思うことにした。
「そうだ!明日から夏休みだよな!」
「うん!」
「楽しみだね!」
「そうですね!」
「みんな何か用事はあるのか?」
「俺はないな」
「僕も特にないよ」
「私も」
「私もありません」
「そっか。俺はこの夏休みの間に、エーレやミカに会いに行こうと思うんだが」
「あ、私も行きたい!」
「俺も!」
「僕も!」
「私も行きたいです!」
「じゃあみんなで行くか」
「そうしよう!」
「早速日程とか決めないとな!」
そうして、この夏休みにエーレやミカに会いに行く事が決まった。




