43話
俺は今、表彰式に参加している。
「エーレ・テトラ、前へ」
エーレが呼ばれた。
「エーレ・テトラ。其方の国際試合における素晴らしき功績を讃え、ここに賞する。おめでとう」
そうしてエーレに楯が渡される。
「ありがとうございます」
そう言ってエーレは一礼して下がる。
「難波レイ、前へ」
俺は呼ばれたので、前へ出る。
「難波レイ。其方の国際試合における素晴らしき功績を讃え、ここに賞する。優勝、おめでとう」
俺に優勝旗が渡される。
「ありがとうございます」
俺はそう言って一礼して、優勝旗を掲げた。
わあああああ!
観客席が湧いた。
その後は閉会式をして、無事に国際試合は終わったのだった。
「あー、やっと終わったなー」
俺はそう言って伸びをする。俺、エーレ、ミカ、ターレ、テレスの5人で闘技場の通路を歩いていた。
「レイ、あなたは来年の国際試合には参加するのかしら?」
「そういや、毎年あるんだっけ?」
「そうですよ」
「みんなは出るのか?」
「僕は来年も出るよ」
「俺も出る。負けたままじゃ終われないからな」
「私も出るわ」
「私も出ます。今度こそ優勝したいですから」
「そっか。みんな出るんだな」
「その言い方だと、君は出る気はないのかい?」
「正直なところ、まだ決めてないんだよな」
「え、どうしてですか?」
「どうしてって言われてもなあ。まず、選手に選ばれないといけないし。それに来年の事だからな。気が向いたらってところかな」
「そうなんですか」
「ああ」
「私としては、来年も出て欲しいのだけれど」
「考えとくよ」
俺はそう返事をしておく。
そうして歩いていると、学院の門が見えてきた。
「それじゃあ僕は帰るよ」
「もう帰るのか?」
「うん。国でやる事もあるからね」
「そっか」
「俺も帰るな」
「テレスもか」
「私は今日はまだこの国にいるわ」
「私ももう1日泊まる事にしています」
「じゃあ一緒に帰るか」
「ええ」
「はい!」
そうして門の所に行くと、トーレス達がいた。
「あ、レイ君!」
「おう」
「それじゃあ僕達は行くよ」
「またな!」
「ああ」
「はい!」
「また会いましょう」
「あ、さようなら」
「またな」
「またね」
「またねー」
そうして、ターレとテレスは帰って行った。
「俺たちも帰るか」
「そうだね」
「今日もレイの家に行っていいかしら?」
「あ、私も行きたいです」
「またかよ……」
「だって、国に帰ったらレイの作った料理が食べられないもの。最後に食べておかないと」
「レイの作った料理は美味しいですから」
お気に召したのはいいんだが、5日間のうち3日も俺の家で食べる事になるんだが……
「まあ、今日で最後だしな。いいよ」
「ありがとう」
「ありがとう、レイ」
「やったー!」
「また美味い飯が食えるぜ!」
「やったね!」
こいつら……
「私もお手伝いしますね」
「ありがとな」
その後、みんなで食材を買いに行ったのだった。
「アリア、その野菜を切ってくれ」
「分かりました」
「エーレ、その肉を切るから取ってくれ」
「はい、これですね。どうぞ」
「ミカ、そっちの鍋はどうだ?」
「もう少しかかりそうよ」
「分かった」
俺は今台所で料理を作っている。
「よし。あとは俺がやるから、3人は座っててくれ」
「いいんですか?」
「ああ。もうここからは大した作業もないしな」
「分かったわ。行きましょう」
そうして、3人はリビングに向かった。
「さてと、作りますか」
俺は久しぶりに凝った料理を作る事にした。
「出来たぜ」
俺はそう言ってみんなの所に料理を運ぶ。
「あ、私達も手伝います」
「おお、ありがとな」
アリア達も料理を運ぶのを手伝ってくれた。
「うわあ!」
「何だこれ!」
「すごい!」
みんな初めて見るのだろう。料理を見て驚いていた。
「これ、何て言う料理なの?」
「これはパエリアだ」
「パエリア?」
「聞いた事ない料理ですね」
「まあそうだろうな」
「こっちは?」
「それは牛肉をトマトで煮込んだものだ」
「へえ」
「凝ってるのね」
「まあな」
今回はパエリアと牛肉のトマト煮込みとコーンスープを作ってみた。
「食べるか」
「そうしましょう」
そうして、俺達は料理を食べ始めたのだった。
「今日も美味しかったよ」
「美味かったぜ!」
「ごちそうさま」
「とても美味しかったです」
「学院を卒業したら、私の家でシェフをしない?」
「ミカ、それはもう諦めましょうよ」
「喜んでもらえてよかったよ」
俺達は食事を終えて、今はリビングで寛いでいる。
「あ、もうこんな時間だ」
ミリーナが時計を見て言う。時計を見ると、午後8時だった。
「そろそろ帰らないとね」
「そうですね」
「そんじゃ、帰るか」
「そうですね」
「分かった」
俺達はリビングを出て廊下を歩き、玄関を出て家の前まで来た。
「ありがとね、我儘を聞いてもらって」
「レイ、ありがとう」
「気にすんなって」
「明日は王国の門の前に集合でいいんだよな?」
「ああ」
「本当にいいの?」
「いいんだよ」
「そうそう」
俺達は、明日の朝に国に帰るエーレとミカの見送りをする事にした。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「それでは、私達はそろそろ帰りますね」
「ああ、気をつけてな」
「うん。また明日ね」
「またな」
そうしてみんな帰った。
俺は家の中に入り、明日のために準備をする。
「お土産ぐらい用意しないとな」
俺はそう言って、準備に取り掛かった。
次の日の朝。
俺達は王国の門の前に集まっていた。
「みんな、ありがとう。態々見送りに来てくれて」
「いいんだって」
「そうそう」
「気にしないで」
「そうですよ」
「ありがとうございます。みんなと約2週間、ここで過ごしていて、とても楽しかったです」
「こっちも楽しかったぜ」
「私も楽しかったよ」
「僕も」
「はい。楽しかったです」
「あと、レイの料理も美味しかったわ。また食べさせてね」
「ああ、分かった」
「今度はテトラ王国に来てくださいね」
「それならエード王国にも来てちょうだい」
「分かった」
「おう!」
「絶対行くよ!」
「うん!」
「はい!」
「それでは、私はそろそろ行きますね。アリン達が待ってますから」
「私も従者を待たせてるから、行くわね」
「分かった。これ、お土産」
「え?」
「何かしら?」
「俺が作ったアップルパイだ」
「え、レイってお菓子も作れるの?」
「まあな」
「……あなた、本当に私の家で働かない?」
「私の家でもお願いします!」
「エーレまで何言い出すんだよ。ほら、これ」
そう言って、アップルパイの入った包みを2人に渡す。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
2人は笑顔でお礼を言ってくるので、俺は用意してよかったと思った。
「ああ。それじゃ、またな」
「ええ」
「はい!」
「またなー」
「またね!」
「また会おうね」
「またお会いしましょう」
そうして、2人はそれぞれの馬車の方に歩いて行く。
俺達は2人の乗った馬車が見えなくなるまで、その場にいた。
「行っちゃったね」
「ああ」
「少し寂しいね」
「そうですね」
みんなの間に寂寥感が漂う。
俺も少し寂しく感じるが、このままここにいても仕方ないし、帰るとするか。
「俺達も帰るか」
「そうだね」
俺がそう提案すると、みんなも頷いてくれたので、俺達は帰るために歩き出した。
もう6月も終わりだ。7月になれば学期末試験がある。それが終われば夏休みだ。
その時にでも、エーレやミカに会いに行こう。
俺はそう思いながら、みんなと歩いていた。
次の日。
国際試合についての号外が出ていた。それには、『優勝は王立アセンカ学院の難波レイ!2位はエーレ王女に!』といった見出しになっていた。記事を読んでみると、『難波レイ選手はエーレ選手に何度も追い詰められたが諦めず、最後は剣を2本使った戦術で勝利。優勝候補のエーレ選手を打ち破った』と書かれていた。
「恥ずかしいな……」
俺はそんな事を思ったのだった。




