33話
試合が始まった。俺は一気に走り出す。
「はあ!」
しかし、接近させまいとミカ王女は薙刀を振るってくる。
「くっ」
俺はそれを避けつつ、何とか接近しようと試みる。
「はっ!」
「ふっ!」
ミカ王女が薙刀を振るってくるのに合わせて、俺は刀を薙刀にぶつけた。
ガキイィィィン!
「くっ!」
「っ!」
お互いの武器がぶつかり合う。
中々のパワーだな。昨日戦ったテレス王子程ではないが、それでもすごい。少し前の俺なら吹き飛ばされていたかもしれない。
「ふっ」
「な!?」
そこで俺が刀を引くと、薙刀が空を切った。
今だな!
俺はその間に接近しようとする。
「そうはさせない!」
しかし、ミカ王女は薙刀の柄で攻撃してくる。
「くっ!」
俺はそれを横に飛んで避ける。しかしそれにより、ミカ王女との距離が開いてしまった。
「やりますね」
「全然攻撃できてませんけどね」
「それはそうですよ、簡単には攻撃させません」
だよなあ。さて、どうするか……
「テレスにやった事をやらないんですか?」
「……何の事です?」
「あの剣術ですよ」
ああ、成る程。
「見たいんですか?」
「そうですね。興味はあります」
そうか……
「それなら、見せてあげますよ」
そう言って、俺は走り出す。
「はああ!」
俺は刀を上段から振り下ろす。
「ふっ!」
ミカ王女は、それを薙刀で防御した。そして俺の刀は弾かれるが、そこで俺は回転する。
「はあ!」
しかし、ミカ王女はそれ見て一気に薙刀で突きを放ってきた。
だが、俺はそれを屈んで避ける。そして一気にミカ王女に向かって飛んだ。
「な!?」
よし、予想外の攻撃で隙が出来た。
俺が刀で水平斬りを放つ。
「まだまだ!」
ミカ王女はそれを後ろに飛んで避ける。しかし、完全には避けきれずに少し掠った。
「ぐっ!」
ミカ王女は何とか体勢を立て直すと、再び構える。
「……まさか、テレスの時の剣術をすると見せかけて、別の方法で攻撃してくるなんて」
「まあ、普通にやっても対処されるのは分かってたんで」
「それもそうね」
しかし、さっきので仕留めきれなかったか……
「今度は私から行くわね!」
そう言ってこちらに走って来た。
「はああ!」
「うお!」
何と一気に飛んで、薙刀で突きを放ってくる。
それを俺は横に飛んで避ける。
「はあ!」
「何!?」
避けた先に薙刀を振り下ろしてくる。俺はそれを転がって避けた。今度は薙刀が届かない所まで転がる。
何てリーチの長さだ。これはしんどいぞ。
「まだ行きます!」
そう言ってまたこっちに来た。
俺は避けるのはやめて、迎え撃つ。
ミカ王女が薙刀で突きを放ってきたので、俺は刀の刃の上を滑らせて防ごうとした。
「壱の型」
「え?」
しかし突如薙刀が消えた。
「ぐはっ!」
何だ!?
俺は脇腹を見ると、薙刀で突かれていた。
「はあ!」
「ぐわあ!」
俺はそのまま吹き飛ばされる。
何とか持ち堪えて、倒れるのだけは回避する。
それにしても何だ今の……
「今のは何って顔してるわね」
「……ええ、その通りですよ」
「今のは私の家に代々伝わる武術よ」
……成る程。俺の剣技と一緒ってわけか。
「そんなもの、昨日は使っていませんでしたよね?」
「まあ昨日は相手が銃だったからね。それに昨日のあなたの試合を見て、使わない方がいいって思ったの」
「その判断は正解だったわけですね」
「そうね。今のであなたは大分消耗したはずよ」
「そうですね。それに、その武術は他にもあるんでしょ?」
「どうかしら?」
まあ、普通はあると思うよ。さっき壱の型って言ってたし。
「それより、続けましょうか。それともギブアップする?」
「まさか。まだやれますよ」
「そう。じゃあ行くわ!」
ミカ王女が再び来る。
「はっ!」
そして薙刀で突きを放ってくる。
これはまずいな。さっきとモーションが同じだ。だからって同じ技が来るとは限らないし。
「くっ!」
俺は避ける事にした。
「肆の型」
「なっ!」
今度は避けたはずなのに、薙刀が俺の方に来ていた。
「くっ!」
俺は無理矢理刀を俺と薙刀の間に入れ、何とか直撃を防ぐ事は出来た。しかし威力は殺せず、俺はまた吹き飛ばされる。
「ぐう!」
今度も何とか踏み止まる。
「よく防ぎましたね」
そう言ってミカ王女が歩いて来る。
「まあぎりぎりでしたけどね」
「それでもすごいわ。初見で防がれたのは初めてよ」
「そうですか」
あまり嬉しくないな。でも、今ので分かったぞ。
「では、行きます!」
またミカ王女は、こちらに向かって走って来た。そしてさっきまでと同じで、突きを放ってくる。
「はあ!」
今度はそれを避けずに、ぎりぎりまで薙刀を引きつける。そして俺は刀を両手で持ち切先を下にし、足を開いて前屈みになる。
「弐の型」
来た!
俺はあと少しで薙刀が当たるという時に刀を振り上げる。
「心証流秘剣ー騰」
「なっ!」
そして、この一撃で薙刀が跳ね上がり、隙が出来た。
俺は刀を振り上げた勢いそのままに回転する。
「心証流秘剣ー円」
そのまま隙だらけのミカ王女に刀で斬りつける。
「あああああ!」
そして、ミカ王女はその場で膝をついた。まだ気を失ってはいないようだ。
「まだやりますか?」
今度は俺が聞く。
「……もうこれ以上戦うのは無理ね、ギブアップするわ」
「試合終了!勝者、難波レイ!」
ふうー。今回も何とか勝てたな。あ、そうだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
俺は手を貸して、ミカ王女を立たせた。
「大丈夫ですか?よければ肩を貸しますけど」
「ありがとう。お言葉に甘えるわ」
そう言って、ミカ王女が俺の肩に捕まる。
俺もミカ王女を支えて、一緒に退場した。
「レイ!ミカ!」
俺とミカ王女が通路を歩いていると、エーレ達がやって来た。
「大丈夫?」
「ええ、何とかね」
「すみません、やり過ぎちゃいました」
「別にいいのよ、試合なんだから。それに、この後あなたとお話する時間が増えたわけだし」
そう言えば、何か俺に話があるって言ってたな。
「あの、話って何なんですか?」
「それは後でね。どこかゆっくり出来る場所で話したいわ」
それもそうか。
「それでは近くの喫茶店にでも行きますか?」
「そうね」
「分かりました。では、失礼して」
「きゃっ!」
俺はミカ王女を横抱きにする。所謂お姫様抱っこだな。それにしても、これ久しぶりにするなあ。
「ちょ、ちょっと!何でこんな!」
「え?だってまともに歩けないんじゃ、喫茶店に行くのに時間かかっちゃいますよ?」
「だからって……」
ミカ王女の顔が赤くなった。これは恥ずかしがってるのか。
「ねえ、レイ」
「ん?」
「よくそんな事出来るよね。恥ずかしくないの?」
「いや、全然」
悪いな。俺、羞恥心も薄れてるんだ。
「レイって、すげーよな」
「うん。お姫様相手にあんな事出来るなんて」
「レイ君、もう少し自重しましょう」
何かいろいろ言われてるけど、気にしない。
「さ、行きましょうか」
「……好きにして……」
そうして俺達は喫茶店に向かった。何かみんなの視線が気になるが、放っておこう。




