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31話

俺は退場して、通路を歩いていた。

「レイ君!」

「おお、アリアか」

通路の向こうからアリアがやって来た。

「レイ君!」

「うおあ!」

アリアが俺に抱きついてきたので、慌てて受け止める。

「おいおい、どうしたんだよ」

「え……あ!」

すると急に恥ずかしくなったのか、アリアは慌てて俺から離れる。

「それにしても久しぶりだな」

「1週間ぶりですけどね」

「まあな」

そんな風に会話していると、通路の向こうからトーレス達が走って来た。

「待てよアリア」

「いくら何でも速すぎ」

「はあ、はあ」

「余程レイが勝ったのが嬉しかったんですね」

「すみません……」

アリアはまた恥ずかしそうにしていた。

「よう!みんなも久しぶり!」

俺はそう挨拶をする。

「お前なあ、俺達に言えよ」

「え、何を?」

「何って、急に学校を休むから心配したじゃん!」

「そうだよ!」

「ああ、悪い悪い。でも手紙を用意したんだけど、読んでない?」

「あんなの、もし行かなかったらどうしてたの!」

「そん時はそん時だ」

「何それ!」

「まあまあ」

「まあまあじゃない!」

「ふふふ」

「どうしたんだ?」

「いえ、何だかレイとミリーナのやり取りが面白くて」

「面白くないよ!」

「そうか」

「何だか、レイの雰囲気変わりましたね」

「あ、それ私も思いました」

「そうか?」

「確かに変わってるな」

「うん。今までミリーナとあんなやり取りしなかったもんね」

「まあ、そう言われるとそうかもな」

「何かあったんですか?」

「あったって言えば、あったな」

「何があったの?」

「それはな、エーレに負けた事だよ」

「え?」

「私ですか?」

「ああ」

「どういう事だよ?」

「そうだな。エーレに負けて、気負わなくなったんだよ」

「気負わなくなった?」

「ああ。今までは、どうしても試合には勝たないといけないと思ってた。でもエーレに負けて、分かったんだ。それは何て愚かな考えなんだろうってな。それで、初心に戻って一から出直したのさ」

「そうなんだ」

「それで何か気楽に見えるのか」

「まあな。だからって、試合で負けるつもりはないけどな」

俺はエーレの方を見て言う。

「私も負けるつもりはありませんよ」

「ああ。今度は全力でやろう」

「はい!」

「あ、もう少しで次の試合が始まりますよ!」

「もうそんな時間か。じゃあ行くか」

「そうですね」

そうして、俺達は次の試合を見るために席に向かった。


「そろそろですね」

「そうだな」

「どんな試合になるんだろな」

「ターレとミカの事ですからね。恐らくはターレが接近を許さずにミカを倒すか、ミカが接近して倒すか。そのどちらかになるかと」

そんな事を話しているうちに、ターレ王子とミカ王女が入場して来た。そしてお互いに握手をして元の位置に戻り、武器を出して構える。

「それでは、始め!」

その合図とともに、ターレ王子が銃で連射する。それをミカ王女は避けながら接近しようとするが、中々接近出来ない。

その間にもターレ王子はどんどん撃ってくる。

「このままだと体力に限界がくるよ」

「そうだな」

「すごいですね」

「ええ。昔からターレはあの連射技術を駆使して戦っていたわ。でも連射技術はあるけど、狙撃技術はそこまでではないから、ミカが勝つためにはそこを狙うしかないと思うわ」

エーレからそんな話を聞きつつ、俺は試合を見る。

確かに、ターレ王子の連射速度はすさまじい。だが、それを躱しているミカ王女の目が気になる。あれは何か狙っている目だ。

俺はそう思いつつ、ミカ王女の動きに注目した。


流石はターレ、連射速度は一級品ね。

そう思いつつも、ミカ・エードは焦っていなかった。

確かにターレは強いけど、今の私なら!

ミカ・エードは思い出していた。彼女は薙刀という武器を扱うため、近距離戦を得意とする相手に対しては無類の強さを誇っていた。唯一エーレにだけは勝てなかったが。

それでもエーレ以外の近距離戦を得意とする相手には負けなかった。しかし、そんな彼女でも銃が相手では分が悪かった。普通の相手なら、彼女でも何とか勝てていた。だが、ターレのような相手には負け越していた。それが悔しくて、彼女は銃に対抗するために一生懸命考えた。そして一か八かの賭けをする事にした。

今こそ使う!

「はあああああ!」

ミカ・エードは避けるのをやめ、一気に突っ込んだ。

当然、そんな事をすれば銃で撃たれる。そして銃弾が当たるという時だった。

「何!?」

銃弾を殆ど薙刀で防いだ。しかし全て防ぐ事は出来ずに数発は体を掠った。しかしその程度だ。

「はああ!」

そして驚いている間に接近して、薙刀を振るう。

「がはっ!」

その一撃はクリーンヒットし、ターレ・エトワールは気絶した。

「試合終了!勝者、ミカ・エード!」

そうして、勝利したミカ・エードはそのまま退場した。


「ミカ王女が勝ったね」

「そうですね。あんな方法で防御するなんて」

「でも、あれってレイもやってたよな?」

「……」

「レイ?」

「ん?」

「聞いてなかったのかよ」

「ああ、悪い。それで何?」

「だから、銃弾の防御はレイもやってたよなって」

「ああ、俺のは数発程度だからな。それに俺のは急所を守っただけだ。ミカ王女のは連射された十数発の銃弾を殆ど防いでいた。俺にはあそこまでは出来ないよ」

「そっか」

それよりも、俺が注目したのは最後の攻撃だ。あれはただの単発の攻撃に見えるが、違う。攻撃し終わった後に引き戻して2撃目を放っていた。よく見ていないと分からない程の速さで。

「レイ、見ましたか?」

「ああ」

どうやら、エーレも分かったようだ。まあ当たり前か。

「あれは中々の速度です。今回は相手がターレでしたから、苦しんでいましたが」

「俺達みたいな近距離戦闘型には辛いな」

「そうですね」

今の試合でミカ王女の動きを見れてよかった。

そして今日の試合はもう終わりなので、みんなで帰ったのだった。


久しぶりに家に帰って来た。

「1週間近くも帰ってなかったからな。掃除でもするか」

そう言って掃除をする。1時間程で掃除を終えた。

「よし、これで綺麗になった。そんじゃ、修行でもするか」

明日も試合があるからな。対戦相手はあのミカ王女だ。今日の試合を見る限りでは手強い相手だろう。

「でも、今回の修行で俺も強くなったはずだ」

今回、俺が孤児院にいる間に行なっていた修行は、剣技の練度を高める事じゃない。

俺はエーレとの対戦で分かった事がある。それは自分の体の事だ。師匠と修行していた時は、俺は体を鍛えつつ剣技を練習していた。

しかし師匠といた世界から現実に戻り、次の世界からは剣技の方に重きを置いて練習していた。それが今回仇となったんだ。

剣技の練度は確かに上がった。でも、体の方がまだ出来てなかったんだ。そのせいで剣技の威力も落ちているんだ。

「だから、今回は体を徹底的に鍛えた」

今日の試合でテレス王子に力負けしなかったのも、体を鍛えたというのが大きな要因だろう。

「まあ、それだけじゃないけど」

体を鍛えただけでなく、動体視力も上げたからな。

「それでも、エーレに勝てるかどうかは分からないな」

この前の対戦で俺はエーレの攻撃に対抗出来なかった。とてつもなく速い攻撃だった。

「まあ今考えても仕方ないか。先ずは明日の試合だな」

気持ちを切り替えて、俺は外に出て隣の空き地で修行したのだった。

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