27話
国際試合に出場する選手が発表されてから、3週間が経った。俺はあれから毎日ハードな修行をして、国際試合に備えていた。
「これで終わりだ」
「!?」
俺はアリアと対戦をしている。そして今、アリアと鍔迫り合いをしていたのだが、少し刀を引いた瞬間に隙が出来た。その隙に、俺はアリアの肩から腹にかけて斬りつける。
「ぐうう!」
「俺の勝ちだな」
俺はそう言って、刀を鞘にしまう。
「何だか、最近どんどん強くなってませんか?」
アリアが立ち上がり、俺に向かってそう言う。
「そうか?」
「俺もそう思うぜ」
大戦が終わったから、トーレス、ミリーナ、シュウの3人もこちらにやって来る。
「だよねー。私なんて、盾ごと吹き飛ばされたよ」
「あー、あれは少し力を入れ過ぎたな」
そう。以前ミリーナと戦った時、俺が刀を振るうとミリーナが盾で防ごうとしてきたので、力を入れて刀を振るった。結果、ミリーナを盾ごと吹き飛ばしてしまったわけだ。
「僕もそう思うよ。全然銃弾が当たらないもん」
「明らかに強くなってるよね」
「うーん。自分ではあまり分からないんだけどな」
「いや、確実に強くなってるぞ」
「そうか」
「そうですね。それに、そんなレイ君と戦ってる私達も強くなってる気がします」
「あー、それ分かる。何か前より速くて重い一撃を繰り出せるようになったからな」
「私も盾で防げる攻撃が多くなったし、前より盾を出すのが速くなったよ」
「そう言えば、僕も素早い相手に照準を合わせるのが上手くなったよ」
「私も剣の振り方や体の使い方が変わりました。前より鋭い一撃を放てて、避けるのも上手くなりました」
確かに、それは俺も感じていた。自分の実力が向上しているかどうかはあまり分からないが、他人の実力の向上は分かる。みんなが言う通り、それぞれが強くなっている。
「みんなが強くなってるなら、俺もうかうかしてられないな」
「いや、これ以上強くなったら誰も勝てないんだけど」
「前から勝てないけどね」
そんな事を話しつつ、俺達は相手を変えて、また対戦をするのだった。
放課後。俺はみんなと一緒に帰り、帰宅してから修行している。
「強くなってるか……」
自分では分からない。俺は国際試合の事もあり、どこで情報が漏れるか分からないので、最近は剣技も使っていない。
「今、俺はどのくらい剣技を扱えるんだろうな」
約1ヶ月の間使っていなかった剣技は、今どれくらいの領域なのか。それは俺にも分からない。
「俺の剣技は、果たして通用するのだろうか」
これまで、学院の人とは対戦して通用した。あのメリーさんにも剣技があったから勝てた。
「でも、もし通用しなかったら」
俺は師匠と約束した。俺だけの心証流の剣技を見つけると。まだ見つけられていないが、いつか必ず完成させる。
「そのためにも、今は師匠から教わった剣技を磨くしかない」
そう思い、俺は修行を続けた。
次の日。学院での授業が終わり、みんなで帰ろうとしていた時だった。
「難波君」
「はい」
先生が俺のことを呼んだ。
「校長室に来て欲しいと校長先生が言っていてね」
校長先生が?何の用だろう。
「分かりました。今から行きます」
そう言って、俺は立ち上がる。
「みんな、悪いけど先に帰っててくれ」
「分かった」
「それじゃあ」
俺はみんなと別れ、校長室に向かって歩き出した。
コンコンコン。
「はい」
俺が校長室のドアをノックすると、中から返事があった。
「難波レイです」
「ああ、入ってくれ」
俺はそう言われたので、ドアを開けて中へ入る。
「よく来てくれたね」
「はい、それで僕に何か?」
「ああ、実は君に会いたいと言う人がいてね」
「僕にですか?」
誰だろう?心当たりがないな。
コンコンコン。
そんな事を考えていると、ドアがノックされた。
「校長先生、お連れいたしました」
「入ってくれ」
そう言うと、ドアを開けて女の子と騎士の格好をした女の人が入って来た。女の子の方は赤色の長い髪で身長は170センチ程、可愛らしい顔立ちが特徴だ。騎士の格好をした女の人も、スレンダーな体型で金色の髪を後ろで束ねている。こちらは大人な感じで綺麗な人だ。
「私はこれで」
女の子と騎士の格好をした女の人を連れて来た人は下がった。
「ようこそおいでくださいました。私はこの学院の校長を務めております、ガリア・レガシーと申します」
「お初にお目にかかります。私はエーレ・テトラと申します。本日は無理を言って申し訳ありません」
エーレ・テトラって、もしかしてテトラ王国の王女様か!?
「そちらの方が、難波レイ様でしょうか?」
「あ、申し遅れました。私、王立アセンカ学院1年の難波レイと申します」
「あなたが……」
そう言って、俺の事をじっと見てくる。何だ?
「難波様、私と少しお話ししませんか?」
そう言って、俺の目をまっすぐ見てくる。
うーん。王女様のお誘いを断ると、どうなるか分からないからな。
「分かりました。お相手しましょう」
「ありがとうございます。レガシー様、どこかにゆっくりお話し出来る場所はありますか?」
「それでしたら、この校長室を使ってください」
「いいのですか?」
「もちろんです。私は隣の部屋におりますので、ごゆっくりどうぞ」
そう言って、校長先生は部屋を出て行った。
いいのかよ、ここの部屋の主が出て行って……
「では、お言葉に甘えて座りましょうか」
そんな事を思っていると、エーレ王女が話しかけてきた。
「はい」
俺とエーレ王女はソファーに座る。エーレ王女の後ろには、騎士の格好をした女の人が立った。
「それで、話とは何ですか?」
「国際試合の事についてですよ」
やはりか。それにしても、俺の事を探りに来たのか?
「王女様が直接偵察に来たってわけですか」
「まあそう思われても仕方ありませんね」
そう言って一息つき、また話し始める。
「私がここに来たのは、偵察が目的といのももちろんあります。ですが、それだけではありません。あなたに個人的に興味があったから来たんです」
「私にですか?」
「はい。あなたは素晴らしい剣の使い手だと聞きました」
……もうそんな情報が。てか、素晴らしい剣の使い手って。
「私はそんなに大した事はございません」
「私はそうは思いません。先程からあなたの一挙手一投足に注目していましたが、洗練された動きで隙がありません。そんな人が大した事ないなどとは、到底思えません」
……そこまで言われるとは思ってなかったな。
「成る程。1つ質問してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「それだけが目的でこの学院に来たんですか?」
「いえ、この学院に来たかったのもありますが、国際試合が行われる場所を見ておきたくて」
ん?国際試合が行われる場所?
「あの、国際試合はどこで行われるんですか?」
「え、この学院の第1闘技場という場所で行われると発表されたはずですが」
「……知らなかった」
「え!?」
マジで知らなかった。そういった事を気にしてなかったな。危なかったー、聞いといてよかった。
「本当に知らなかったんですか?」
「お恥ずかしながら……」
いやー、出場選手として恥ずかしいな。
「……ふふふ」
「?」
「すみません。会った時から今まで、あなたは隙を見せなかった。そんな人なのに、試合会場を知らないなんて」
うわ、笑われちゃってるよ。まあそりゃそうか。
「私、あなたに俄然興味が湧いてきました」
「はい?」
「これから国際試合が終わるまで、ここに滞在しようと思います」
「え!?」
何でそうなるんだ!?
「エーレ様、それは」
後ろの騎士の格好をした女の人が止めようとする。
「アリン、止めても無駄よ」
「エーレ様」
暫くお互い見つめ合う。
「はあ、分かりました。私の方から連絡しておきます」
「ありがとう、アリン」
マジかよ……認めちゃったよ……
「それでは難波様、私は国際試合が終わるまでこの学院に通うわね」
「……それは校長先生に言ってください」
俺、ここの責任者じゃないんで。
「それでは、私は宿を探さないと」
「すぐに探させます」
アリンさんがそう言う。
「エーレ・テトラ様」
「エーレで構わないわ」
「え、流石にそれは」
「いいの。私もレイって呼んでいいかしら?」
「……はい」
「ありがとう」
何だか変な事になってきたなあ。
俺はそう思いながら、校長に話が終わった事を伝えに行った。




