26話
俺は改めて記事を読んだ。そこにはこう書かれていた。『今回の国際試合は、ミリアス王国以外の国の王族が選手として出場する事が決まった。これは初めての事で、事実上各国の王族による頂上決戦となるだろう。我が国、ミリアス王国から出場する難波レイ選手は唯一の市民。王族相手にどう立ち向かって行くのか、注目である』
「……何だよ、これ」
王族の頂上決戦?そんなもんやろうとするなよ。俺はどうすればいいんだよ。まあどうもしないんだけど。
「ね、大変な事になってるでしょ?」
「そうだな、これは大変だ」
「他の国の王族……エーレ王女は前から言われていましたが、ここに来て他の国も王族を出してくるとは」
「他の3人も私達と同い年だっけ?」
「そうだったと思うよ」
「何でこの世代に集まってるんだよ……」
マジで何なんだ?俺が出場する今回に限ってこんな事になるなんて……
「まあ仕方ねーじゃん。相手は出るって言ってるんだし、こっちも向かって行くしかないって」
「お前は出ないからそんな事が言えるんだよ。考えてもみろ、王族の頂上決戦とか言われてんだぞ。そこに一般人の俺が出ると、1人だけ浮いちまうだろ」
「うーん、そうか?」
「そうだよ」
そう言えばトーレスはそんな事気にしなかったな。
「はあ……それで、他の王族の人は強いのか?」
「東の国、エード王国の王女であるミカ・エード様は薙刀と呼ばれる武器を使うんだとか」
「あ、聞いたことあるよ。中距離の武器で、本人の腕もあって近づく事が出来ないんだって」
「要するに強いんだな?」
「そうですね。相当な手練れだと聞いています」
「そうか……あとは?」
「西の国、エトワール王国の王子であるターレ・エトワール様は銃が武器で、扱いがとても上手いとの噂です」
「銃か」
「はい。実際に見たわけではありませんが、かなりの腕前だとの事です」
「成る程。それで、南は?」
「南の国、サンタナ王国の王子であるテレス・サンタナ様は籠手が武器だとか」
「籠手か」
「はい。鍛え抜いた体から繰り出されるパンチは、とてつもない威力だと言われています」
「そっか。総括すると、全員やばいんだな」
「そういう事になりますね」
何だよそれ!ふざけんなよ、何でそんな事になったんだよ!折角メリーさんから昨年の出場選手の情報を聞こうと思ってたのに、意味なくなったじゃねーか!いやまあ王族の人の方が情報が多いんだけど、そんな問題じゃねえ!
「はあ……何かもう嫌になってきた」
「おいおい、しっかりしろよ」
「そうだよー。今からそんなんで試合なんて出来ないよ」
「お前らは気楽でいいな」
こんな事なら出場するなんて言わなきゃよかった。
そんな事を思っていると、先生が来たのでみんな席に戻った。そのまま授業が始まったのだが、俺は国際試合の事ばかり考えていたのだった。
学院の授業が終わり、俺は城の前に来ていた。
「ラルカさんなら、他の国の王族について詳しく知ってるかもしれないから来てみたが……」
聞いたところでどうにかならないような気もするけれど、まあいいか。
俺は衛兵の人に挨拶して、中入れてもらった。そしてもう見慣れてしまった庭を抜け、城のドアの前まで行くと、ドアの前でラルカさんがいた。
「お久しぶりでございます」
「こんにちは。今日はラルカさんにお聞きしたい事があって来ました」
「私にですか?」
「はい、実は国際試合に出て来る選手に関してなんですけど」
「成る程、王族の方々についてお聞きしたいと」
「はい」
「分かりました。では、中へどうぞ」
俺は城の中に入る。
「こちらです」
そう言って案内されたのは、この前国王陛下と話をした所だった。
「お茶をお持ちしますので、お掛けになってお待ちください」
「お構いなく」
俺はそう言って、ソファーに座って待つ。すると5分程でラルカさんが戻って来た。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
お茶を差し出されたのでお礼を言う。ラルカさんは俺の対面のソファーに座った。
「では、お話ししましょうか」
「お願いします」
「確認なのですが、北の国のエーレ・テトラ様については、この間お話しした通りです。ですので、そちらは省かせていただきます」
「分かりました」
「ではまず、東の国であるエード王国についてですが、この国の王女であるミカ・エード様は薙刀という武器を巧みに使い、相手を近づけさせずに倒す戦法を取ると聞きます。そしてこの方はとても聡明で、相手の行動を先読みする事に長けています」
「それは厄介な相手ですね」
「はい。しかし、ミカ・エード様の戦術は少し型にはまりすぎた戦術ですので、そこに付け入る隙があるかと」
「成る程」
型にはまりすぎた戦術か。どの程度かによるが、最初に当たらなければ試合を見て、対策を立てよう。
「次に西の国であるエトワール王国の王子、ターレ・エトワール様ですが、機関銃を使った連射をしてくるとの事です。永遠とも思える程の連射で相手を倒すそうですよ」
「そちらも厄介ですね。近接戦闘型には特に」
「そうですね。恐らく、今回の出場者の中でも特に強い相手だと思われます」
そうだよな。今のところミカ・エード王女以外は、俺も含めて近接武器ばかりだもんな。これはひょっとすると優勝候補か?
「最後に、南の国であるサンタナ王国のテレス・サンタナ様は籠手が武器です。そこから繰り出されるパンチの威力は強力で、受ければ一撃で気絶させられるとの事です」
「それはすごいですね」
多分ガードしても吹っ飛ばされるんだろうな。
「以上が私の知る限りの情報です」
「ありがとうございます。とても参考になりました」
そう言って、俺は立ち上がる。
「それではそろそろお暇します」
「図書館へは行かれないのですか?」
「あー、そうですね。それでは、少しだけ」
「畏まりました。ではご案内いたします」
そうして、俺は図書館で本を読み、1時間程したら帰ったのだった。
その日の夜。俺は家で国際試合について考えていた。
「大変なことになったな。王族の頂上決戦か」
俺以外が全員王族。それはすごい事だ。それにみんな同世代。俺だけ浮いてるのは明白だ。
「はあ、まあいいや。ラルカさんが言うにはとんでもなく強いらしいし、どこまでやれるか楽しみでもあるしな。それに覚悟も決めた」
そう、俺はある覚悟を決めていた。それは俺が今出せる全力で戦おうという事だ。今までは学院内での戦いで、手の内を晒したくなかった。しかし、今度は国際試合だ。そんな事は言っていられないだろう。この辺で自分がどれだけやれるのか、試してみたい。
「さて、何百年と修行してきて、今の俺はどこまでやれるかな」
正直なところ、やれないと困る。俺の最終目標はあの女の子を助け出す事だ。一刻も早く、強くなる必要がある。そうでないと、また失敗するかもしれないから。
「そろそろ寝るか」
俺は明日から修行内容をよりハードにしようと思ったところで、寝るために寝室に向かったのだった。




