25話
「国際試合か……」
時間は夜。今から寝ようとしていて、ベッドで横になっている。
「そんなもんに出るなんてまさかだな」
本当に思ってもいなかった。それにあのメリーさんが昨年の国際試合で2勝2敗とはな。俺の実力は正直なところ、メリーさんより少し上なだけだ。昨年の国際試合を見ていないから、どんな試合内容だったかは分からない。もしメリーさんと相手の選手が互角の試合を繰り広げていて、それでメリーさんが負けたとしたら俺にも勝ち目はある。でもそうじゃなく、圧倒的な差で負けていたとしたら、俺に勝ち目はないな。
「いや、ない事もないか」
俺が剣技を使えば勝てるかもしれない。でもそうなったら、俺の剣技がどこまで通用するかになってくるな。
「まあいいか。俺は俺のやり方で戦うだけだ」
そう思い、俺は早く寝る事にしたのだった。
次の日。
ガラガラ。
俺はドアを開けて教室に入った。
「おっす、レイ」
「あ、おはよー」
「おはようございます、レイ君」
「おはよう」
「ああ、おはよう」
みんなが挨拶してくれるので、挨拶を返す。そのまま自分の席に向かった。
「なあレイ、これ見てみろよ」
そんな俺の所までやって来たトーレスは、俺に1枚の紙を見せてきた。何やら号外と書かれている。恐らく、何かしらのニュースでもあったのだろう。
そう思って見出しを見てみる。
「……何だって」
そこには、『今年も国際試合開幕!北の国、テトラ王国からはエーレ・テトラ王女が参戦!』と書かれていた。
「王女が国際試合に参戦……」
「な、すごいだろ?俺もこれを見た時は驚いたぜ」
「私も驚いたよ!だって王女様って、そういうのに参加しないと思ってたもん!」
「そうですね。あまり王族の方が公式試合へ参加しないですからね」
「この国は王族って概念がないから、あんまり分からないけどね」
みんなも集まって来ていた。そうだよな、みんなも驚くよな。それとシュウが言っているのは、この国は王族というものが存在しないからだろう。この国は国王が退位すると、血縁のない人が国王になるからな。何でも、初代国王が世襲制を嫌ったんだとか。まあ他の国では世襲制が普通だから、この国が変わっているんだけどな。
「それにしても、王女って何歳だ?」
「確か俺達と同じで、今年16歳だったはずだぜ」
「私もそう聞いたよ」
「マジか。相当な実力者なんだな」
「そうだと思います。何でも、エーレ王女はすごい剣の達人だとか」
「それって、どのくらいなんだろう?」
「分かりません。私も実際に見た事があるわけではないので」
「まあ、こっちにはレイって言うすごい剣の使い手がいるけどな」
「いや、俺のはまだまだだよ」
「レイでまだまだなら、他の人はどうなるのさ」
「そうですよ。レイ君はもっと自分の実力に自信を持つべきです」
「自信ねぇ」
俺は自分の実力の事は分かっているつもりだ。それでも、やはりまだまだだと思う。だって、師匠の剣技はもっとすごかったから。俺は結局師匠に1回も勝てなかった。あれから何百年も修行をしたが、全然師匠に近づいた気がしない。それだけの差が、俺と師匠にはあった。俺はいつかあの領域に至る事が出来るのだろうか……
「どうしたんだ?」
「あ、いや何でもない」
少し考え込んでしまったな。
その後はみんなで授業が始まるまで雑談をしていた。
「うーん。この棚はあまり面白いものがないな」
俺は授業が終わってから、いつものように城の図書館に来ていた。しかし、今読んでいる本があった棚には面白い本がない。内容が教育関係の本ばかりで、大体の事は知っているからだ。
「別の本棚に移るか」
俺はそう言いつつ、歩き出そうとした。
「あの、レイ様」
すると、入口にいたラルカさんが俺に話しかけてきた。
「どうしたんですか?」
「失礼ながら、鍛錬などはしなくてよろしいのかと思いまして」
「鍛錬ですか?いつもやってますけど、どうしたんですか?」
「いえ、実は国王陛下からお聞きしたのです。レイ様が次の国際試合の選手として出場なさると。それで、ここにいて本ばかり読んでいていいものなのかと思いまして」
ああ、その事か。確かに国際試合なんてものに出場するのに、こんな所で悠長に本を読んでいるのは信じられないのだろう。
「それに関しては何とも言えないですね。他の国の選手の情報もないですし」
「今日の号外でテトラ王国からはエーレ様が出場すると書いてありました。それに関してはどうお考えで?」
「そのエーレ様って、どのくらい強いんですか?」
「エーレ様は巷では剣の達人と言われているお方です。10歳でテトラ王国の大会でジュニア部門で優勝し、それからずっと勝ち続け、14歳の頃には大人に混じって訓練されていたとか。現在はテトラ王国にあるソウル・リベレイター教育機関の王立エセトラ学園の首席で、他の生徒との実力は頭2つ分は抜けているとの噂です」
「……マジ?」
字面だけですげえ強そうなんですけど!てか何だよ他の生徒と頭2つ分抜けた実力って!
「勝てる気しないんですけど……」
「ですから申しているんです、鍛錬はしなくてもよろしいのですかと」
そんな事言われてもあと1ヶ月もないのに、今更鍛錬したところでどうこうなるのか?
「頑張ります」
俺はそう言う事しか出来なかった。
その後は本を読む気になれず、仕方なく帰った。そして家の横の空き地で修行していた。そして何となく疲れた気がして、その日は早めに寝たのだった。
それから1週間、俺は学院で授業を受け、放課後は空き地で修行するという日々を過ごしていた。
「何だかここ最近は修行していても、あまり剣の腕が上がっている気がしないな」
この学院に入学してから2ヶ月程経ったが、あまり上達した気がしない。
「まあそんなすぐに上達するわけないよな」
ただでさえ何百年と修行して、やっと剣技が通用するかどうかってところだからな。2ヶ月やそこらで上達するわけないか。
「どうもあの話を聞いてから焦っている気がするな」
あの話とはエーレ王女の話だ。ラルカさんから話を聞いて自分でも調べてみたが、どの噂もラルカさんから聞いたものと似たような感じだ。
「まあ噂には尾ひれがつくから、全部が本当とは限らないが」
だからと言って全部嘘だとは限らない。もしかすると全部嘘かもしれないが、それだと国際試合には出てこないだろう。
「はあ、考えるだけ無駄だな」
俺はそう思い、切り替えて修行に集中したのだった。
次の日。
ガラガラ。
俺はいつものように学院に登校した。
「おいレイ!これ、どうなってんだよ!」
教室に入るやいなや、トーレスがダッシュで俺の所に来た。
「おい、どうしたんだよ」
「これだよ、これ!」
そう言ってトーレスは紙を見せてくる。そこには号外と書かれていた。そしてトーレスが指差す箇所には国際試合参加者と書かれていて、俺の名前があった。
「ああ、それ発表されたのか」
「発表されたのかじゃねーよ!何で黙ってたんだよ!」
「いや、国王陛下に黙ってるように言われたからな」
出来るだけ隠したかったのだろう。俺はその意図を汲み取り、ずっと黙っていた。ラルカさんは国王陛下から直接聞いて知っていたが。
「そうなのか?じゃあ仕方ないか」
「だから言ったじゃん。黙ってるように言われたんだと思うって」
「まあまあ」
そう言って他のみんなもこちらに来た。
「それより、レイも大変な事になってるね」
「まあな。何てったって国際試合だからな」
「あれ?もしかしてレイは知らないの?」
「ん?」
「ほら、これ」
シュウが指差すのは先程トーレスが指差していた箇所と同じだった。
「今回の国際試合の参加者、レイ以外全員王族だよ」
「……は?」
その時、俺は何を言われているのかよく分からなかった。




