246話
俺達は風呂から上がると、そのまま体を拭いて下着だけ身につけて部屋に戻る。
その間はお互いに無言だった。
正直、こういう時に何を話せばいいのか分からない。
恐らく、柚葉も同じようなものだろう。
そうしてお互いベッドの上で向かい合って座る。
「「……」」
そうして沈黙が続いて……
「……ぷっ」
「……ふふっ」
俺達は同時に吹き出してしまった。
「ははっ、何だか俺達らしいな」
「ええ、そうね」
「いつもは普通なのに、いざとなったらお互いにどうしていいか分からなくて」
「それですれ違って、それで最後はお互いの胸の内を話すのよね」
「そうそう。俺達じゃあ、話さなくても分かるなんてのは無理なのかもな」
「そうかもしれないわね……けれど、それなら話せばいいじゃない。今までだってそうして来たんだから」
話せばいいか……
「そうだな……今までもそうだったし、多分これからもそうなんだろうな」
「ええ。私達、お互いに不器用みたいだし」
確かに、そうだな。
今までの事を振り返ってもそうだと思える。
俺達の関係はいつもどこかちぐはぐで……って、主に俺のせいか。
「今思えば、俺がもっと素直だったら柚葉に何の心配も苦労もさせなかったんだろうな」
「今更それを言うの?」
「ははっ、ごめんごめん」
「もう……でも、私ももっとやり方はあったのかもって思う事はあるわ」
「でも、結果的によかったのかもな。こうして、お互いの気持ちに真剣に向き合う事が出来たし」
「ええ、確かにね」
そこでまた沈黙。
俺達は緊張している。
何せ、ここから先は……
「……柚葉、1つだけ確認しておくけど」
「何かしら?」
「本当に、俺でいいのか?俺は今でも理亜の事が好きだ。それはこの先も変わらないと思う。そんな、他の人も好きだなんて言う男で、柚葉は本当にいいのか?」
俺がそう聞くと、柚葉は微笑んで言う。
「それこそ、今更よ。私はレイの事が好き。それはどんな事があっても変わらないわ」
そう言う柚葉の目から、心の底からそう思ってるのが伝わって来た。
「……そっか。ごめんな、こんな事聞いて」
「ううん、気にしないで。逆に遠慮なく聞いてくれた方が、私としては嬉しいから」
そう言って微笑む柚葉の表情は、窓から差し込む月光に照らされて、すごく神秘的でとても綺麗だ。
俺はそんな光景に一瞬目を奪われたが、すぐに意識を切り替える。
「……それじゃあ……始めるぞ」
「ええ、お願い」
そうしてその日、俺達は心も体も1つになったのだった。
次の日の朝。
「おはよう」
俺は目を覚ますと、隣からそんな声が聞こえてきた。
そちらを見ると柚葉が寝ており、俺の方を見ながら微笑んでいた。
そして柚葉は何も着ておらず、俺も何も着ていない。
「……昨日は激しかったね」
「っ!?」
柚葉にそう言われ、俺は夜の事を思い出す。
「あ、あれは柚葉の方から……」
「そうだったかしら?レイの方が楽しそうだったけど?」
そう言う柚葉は、どこか余裕そうで……
……理亜の時もそうだったけど、どうしてこんなに余裕そうなんだ……
俺は朝からどっと疲れたが、ふと思い出す。
「あ、今何時?」
「え、午前8時だけど?」
「マジか!?」
「どうしたの?」
俺は不思議そうにしている柚葉に、昨日理事長から言われた事を話す。
「え!?そんな、レイは何も危険じゃないのに!?」
「まあ、みんながみんなそうは思わないから仕方ないよ。それより急がないと。指定された時間は午後1時だからな」
そうして急いで着替えて、俺はカラリアにある防衛会の本拠地へと向かうために準備したのだった。
30分後。
俺達は寮の出入口まで来た。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「出来るだけ早く帰って来てね」
「ああ」
そう言って俺は柚葉にキスをする。
そして離れる。
「そんじゃ」
「ええ、いってらっしゃい」
そうして俺は寮から出て、学園の方へと向かったのだった。
俺はそのまま学園の方へと向かうと、学園の門の前に車が止まっているのが見えた。
俺はそのまま車の方に行き、迷わず助手席に乗る。
「お待たせしてすみません」
「私もさっき来たところだ」
そう言うのは理事長だ。
カラリアにある防衛会の本拠地までは、理事長が車で送ってくれる事になっている。
「それでは、行くぞ」
「はい」
そうして、防衛会の本拠地に向かって車は走り出したのだった。
学園を出てから4時間。
カラリアに来た俺達は、防衛会の本拠地に着いた。
中に入ると、酒井さんがいた。
「先生、ようこそ来てくれました。難波君も、よく来てくれたね」
俺達は軽く挨拶をする。
「それじゃあ、先生はここで待っていてください。難波君は僕と一緒に来て」
「分かった」
「分かりました」
俺は歩き出した酒井さんについて行く。
そのままエントランスの上の2階へとやって来た。
そして大きなドアの前までやって来た。
「この中に黒瀬さんがいるから、このまま中に入って。僕は外で待ってるから」
「分かりました」
俺は部屋のドアをノックする。
すると、中から返事があったのでドアを開ける。
さて、どんな事を聞かれるのか。
俺は今から何を聞かれるのか考えながら、部屋の中に足を踏み入れたのだった。




