23話
「すみません」
「何だ?」
俺は城の門の前にいる衛兵に話しかけた。
「僕は難波レイと申します。この城の図書館に入りたいのですが」
「ああ。国王陛下から話は聞いている。中にいるメイドの人に案内してもらえ」
「ありがとうございます」
どうやら事前に話は通っていたようで、あっさり中に入れた。
「ここが城の中か」
中へ入ると目の前には噴水があり、舗装された道の脇には色々な種類の花が咲いている。
「すごいな」
俺はそんな風景を楽しみながら、城の方へ歩いて行った。そしてドアの前でメイドさんが待っていた。
「あ、昨日のメイドさんですよね?」
「はい、そうでございます。私が図書館まで案内いたしますので、どうぞ」
「はい、ありがとうございます」
俺はそう言ってメイドさんについて行く。城から少し離れた所に図書館はあるようだ。
「ここの庭って、毎日手入れしてるんですか?」
俺は周りを見ながらそう話しかける。庭はとても綺麗で、雑草は1つも生えていない。
「そうでございます。こちらのお庭は、私を含めたメイドが毎日管理しております」
うわあ、こんなに広いのに毎日とか大変そうだな。
「あそこでございます」
メイドさんが指差す方を見ると、そこには茶色の大きな建物があった。あそこが図書館か。
目の前まで来ると、メイドさんはこちらを向いた。
「私はここで待機しておりますので、何かあった際やお帰りの際はお声をかけてください」
「分かりました」
「では、どうぞ」
そう言ってドアを開けてくれる。
「失礼します」
俺はそう言って中に入る。
「うわ、すげえ量」
中はとても広く、天井も高い。恐らく10メートルはあるだろう。そして大量の本棚。これが均等に並んでおり、上の方は天井付近にまで達している。そして特徴的なのが、本棚の真ん中で足場が突出しており、階段もある。これで上半分の本も取れるようになっている。さらにスライド式の脚立もある。
「何か変な機能がついてるな。こんな本棚見た事ないぞ」
俺はそう思う。
「まあいいや。それよりこの国の初代国王について書かれた本を探そう」
俺はそうして目当ての本を探し始めた。
「どこにもない……」
探し始めてから数十分経った。まだ初代国王について書かれた本は見つかっていない。
「量が多すぎるんだよな」
こんな時、現実の本屋のように検索してどこの本棚にあるか調べる事が出来たら便利なのにな。
そんな事を思いながら、ふと思いついた。
「そうだ、メイドさんに聞いてみよう」
俺は入口にいるメイドさんの所へ向かった。
「すいません」
「どうされました?」
「この国の初代国王について書かれた本がどこにあるか分かりますか?」
「それなら一番奥の本棚にあります」
「分かりました。ありがとうございます」
俺はそう言って中へ戻る。こんな事なら最初から聞けばよかった。
そう思いながら、俺は一番奥の本棚の所へ行く。
「えっと……あった」
一番下にあったのですぐに見つかった。よかった。
早速手に取って読んでみる。
そこには王国が建国される前の事から書かれていた。王国が建国される前はこの土地は小さな村だったらしい。その村で生まれた初代国王は、実家の農業を手伝いながら普通に暮らしていた。しかし、ある日そんな村に賊が現れた。その賊により村は無茶苦茶にされた。初代国王はそれが許せなくて賊に立ち向かっていった。その時にソウル・リベレイターとして覚醒したと言う。その力で賊を退治した初代国王は村を守ると決め、それに賛同した人とともに村を守った。その過程で小さな村はやがて王国となるまでになった。そして初代国王はその力で国を守り続けた。
「……こういう事はどこにでもあるんだな」
俺は一番最初にVRの世界に来た時の事が脳裏を過ぎった。俺の中ではあれからもう1000年近く経った。
「それでも、俺はあの時の事を昨日の事かのように覚えている」
絶対に忘れることのない記憶。
「……今は考えるのはよそう」
俺は一旦思考を打ち切り、本を読む事にした。
「それで、初代国王の剣術はどうだったんだ?」
俺はページをめくっていく。
「お、ここか」
すると目当てのページを見つけたので読んでみる。
初代国王の剣術はどうやら我流で、決まった型というのがなく、変幻自在な剣術だったようだ。
「成る程。中々面白いな」
これはこれから俺が剣技を磨いていく上でとても参考になるな。
俺はそう思いながら、本を流し読みしていた。すると、気になるページがあった。
「何だこれ?」
そこには初代国王は、いつも国を守るために戦う時にある言葉を呟いていた。
『我、手にするは王の力』
『光を纏い、闇を照らす』
『我が魂、その力を持って』
『光り輝く未来を切り拓く』
これを呟いた初代国王は輝きに包まれていたと書かれている。
「どういう意味だろう?何かおまじない的なものなのかな」
少し考えたが、結局意味が分からずに考えるのをやめた。
「よし、そろそろ帰るか」
窓の外を見れば暗くなってきていたので、俺はそろそろ帰る事にした。
「すみません。そろそろお暇します」
俺は入口にいるメイドさんにそう伝えた。
「もうよろしいんですか?」
「はい。そろそろ暗くなってきたし、あまり長居するのもどうかと思うので」
「こちらとしましては、いつまでいていただいてもよろしいのですが」
「いえ、流石にお仕事もあるでしょうし、遠慮しておきます」
「そうですか。では門までご案内いたします」
「ありがとうございます」
そうして、俺は門までメイドさんに案内してもらった。
門に着くと、メイドさんにお礼を言う。
「本日はありがとうございました」
「いえ、これも務めですので」
「はい、ありがとうございます。では、これで失礼します」
「お気をつけて」
そうして俺は帰った。
「それにしても、初代国王について書かれていた本はとても興味深かったな」
俺は帰ってきてから修行をしている。初代国王の剣術を早速取り入れてみる事にした。
「中々変幻自在ってのも難しいな」
そう思いつつ、俺は刀を振る。そして1時間程で修行を終える。
「今日はここまでにしよう」
俺はそう言って家に入った。そして夕食を食べ、風呂に入ってゆっくりしていた。
「それにしてもあの図書館、かなりの量の本が置いてあったな」
今回は初代国王に関する本しか読まなかったが、折角許可をもらってるんだ。この際通い詰めるか。
「今日はそろそろ寝るか」
俺は寝室に行き、すぐに寝たのだった。




