236話
俺は修行を終え、柚葉と蜜柑と一緒に朝食を食べるために家の中へと入る。
「やっぱり何度見ても、レイの剣技はすごいわよね」
「え、そうか?」
「うん。だって、あんな風に一瞬で斬撃を放つんだもの。普通じゃ出来ないわよ」
そうかなあ。
俺としては、まだまだだと思っているんだけどな。
そう思っていると、先程から黙っている蜜柑が気になり、そちらを見る。
「……」
「蜜柑?」
「え、はい!?」
「どうしたんだ?」
俺がそう聞くと、柚葉が答える。
「あー……実はこの子、レイのファンなのよ」
「お姉様!?」
え、俺のファン!?
「どういう事だよ!?」
「えっとね、前にレイと奥原先輩との対戦が動画として上がってたでしょ。それを見て、蜜柑はあなたのファンになったのよ。前に来た時は隠してたみたいだけど、さっきレイの剣技を生で見れた嬉しさで、ぼーっとしてるのよ」
「お姉様!何もそこまで言わなくても!」
そう言って、蜜柑は柚葉に怒り出す。
それにしても、蜜柑が俺のファンだったなんて……桃華もそうだったが、マジでどうなってんだ……
俺が少し戦慄していると、蜜柑がこちらを見る。
「はあ……取り乱してしまい、申し訳ありません」
「ああ、いや、別に大丈夫」
「ありがとうございます。それと、私は今まで通りレイさんに接するつもりですので、どうか変に気を使わなくてもいいですから」
「そう?それじゃあ、そうするよ」
「はい……それと、1ついいですか?」
「え、何?」
「出来れば、握手していただけませんか?」
少し顔を赤くしてそう言う蜜柑。
おずおずと手を出してくる。
「あ、うん」
俺はその手を取って握手する。
「あ、ありがとうございます!」
すると、蜜柑はとても喜んでいた。
どうやら、俺のファンというのは本当らしい。
……もしかしたら、身近にもまだいるのか?
俺は一瞬そんな事を思ったが、流石にないかと考え直したのだった。
そんな風にして歩いているうちに、部屋へと到着したのだった。
朝食を終えた俺は、そのまま柚葉に案内される形で八神家の中を見て回った。
かなり中は広く、案内してもらうだけで1日が終わってしまった。
しかもまだ見ていない部屋もあるのだから、この家はどれだけ広いんだよって思う。
そちらはまた今度案内してくれるという事で、その日の案内は終了となったのだった。
夜。
俺と柚葉は、俺の部屋で一緒に過ごしていた。
「えっと、おやすみのキス……」
「ああ」
もう夜も遅いから寝ようというところで、柚葉がまたキスを要求してくるので、俺はそれに答える。
「んっ」
唇同士が触れ合うと、柚葉がそんな吐息を漏らす。
数秒して離れると、柚葉の顔は少し赤くなっていた。
「そ、それじゃあおやすみ!」
「ああ、おやすみ」
柚葉はそう言って、部屋を出る。
俺もその後すぐに寝たのだった。
そんな風に過ごしているうちに、俺は学園に戻る日となった。
3日間の滞在だったが、すごく楽しかった。
「お世話になりました」
俺が八神家の玄関でそう言う。
「ああ、よければまた来ていいからね」
「ありがとうございます。柚葉、また学園で」
哲也さんにお礼を言い、柚葉にそう言う。
すると……
「……グスッ」
何と柚葉は少し泣いていた。
「ええ……何も泣かなくても……」
「だってぇ……」
「また学園で会えるじゃないか」
「でも、まだまだ先だよ?」
まあ、確かに夏休みはあと1ヶ月近くあるけど。
そんな風に、どうしたもんかと困っていると……
「難波君さえよければ、夏休みの間ここにいてくれてもいいんだよ?」
哲也さんがそう提案する。
「え!?」
「そうよ。その方が柚葉も蜜柑も喜ぶわ」
雪さんまでもがそんな事を言い出す。
でもなあ……
「……」
俺が迷っていると、柚葉がこちらを真っ直ぐ見てくる。
その表情は、是非そうしてくれと言っているようだ。
俺は蜜柑の方を見る。
「私も異論はありません」
と言われた。
「……それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
結局、俺はその提案を受け入れたのだった。
ガバッ!
すると、柚葉が俺に抱きつく。
「ありがとう!」
「まあ、俺としても柚葉とは出来るだけ一緒にいたいしな」
「えへへ」
そんな俺達のやり取りを、哲也さん達は温かい目で見ている。
こうして俺は夏休みの間、八神家でお世話になる事が決まったのだった。
夏休みの間、八神家でお世話になる事になったが、その期間に色々な事があった。
例えば柚葉とデートに行くと、俺のファンだと言う子達がいて、俺に握手やサインを求めてきた。
サインなんて考えてないので握手だけだったが、それでもその子達は喜んでいた。
どうも男女問わず、俺のファンの子達はいるようだ。
特に年下の子達のファンが多い気がする。
そんな事がありつつも、俺達はデートをした。
今までのような関係ではなく、本当の恋人になったからか、すごく楽しかった。
柚葉とはデートの時だけでなく、普段から一緒にいるようになった。
もう最後の方では、寝る時まで一緒にいたくらいだ。だからって、まだ何もしてないけど。
そんな風に楽しい毎日を過ごしていると、あっという間に夏休みが終わったのだった。




