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216話

「……何であんな事したの?」

柚葉は先ずはそう聞いてきた。

その視線は相変わらずコップに注がれている。

当たり前だが、俺の顔を直接見るのは嫌なのだろう。

それでもどうしてあんな事をしたのか、彼女はそれを聞いてきた。

俺はその質問に対して、正直に答える。

「……自殺しようとした」

「っ!」

予想していただろうその答えに、柚葉それでも息を呑んだ。

「何でそんな事をしたの!?」

そして、今度は俺の顔をしっかり見て聞いてくる。

逆に俺は顔を逸らして、その状態のまま柚葉の質問に答えた。

「……何でって……そんなの決まってるだろ……もう俺にはこの世界で生きていく資格がないからだよ」

「資格って何!?何でそんな事で死のうとするの!?」

柚葉は何でそんな事って言うけど、俺にとってはそんな事じゃないんだ……

「……俺は、理亜が死んでから誓ったんだ……これからは、俺は色々な人を助けられるように強くなろうって……だからこそ剣技を習得して……それでも足りないから、色々な力を身につけてここまで生きてきた……それなのに、あの時……柚葉に、今の俺の理亜に対する想いは呪いだって言われた時だ……一瞬でも本気で柚葉を殺そうとした……俺はそんな自分に失望したよ……今まで生きてきて、最終的に自分の想いを否定されたら、自分の事を好きだって言ってくれた人ですら殺そうとするような人間だったんだって……その事実に、深く深く失望した……だからこそ、死んでしまおうと思った」

安易な考えではあると思う。

死んで罪を償うなんてしてはいけないと思ってる。

でも、俺の場合は死んでも意識が現実世界に戻るだけだ。

それなら、これからも俺は罪を背負って生きていく事になる。

ただ、この世界じゃない……柚葉がいない所で。

それが柚葉にとってはいい事だと思った。

だが……

「そんな……そんな事であなたが死んじゃったら、私は……」

「私?」

「……あなただけが悪いわけじゃない……私だって悪いのに……だから謝ろうって……そう思ったのに……なのに、あなたは自殺しようとしてたなんて……もし……もしあの時、間に合ってなかったら……」

俺が自殺しようとした時の事を思い出したのか、柚葉はまた泣きそうになる。

「何言ってんだよ!悪いのは全部俺で、柚葉は何も……」

「だって、私が最初にあんな事言ったから……だからレイは怒って……ううっ……」

それは事実だ。

俺は柚葉が言った事がきっかけで、柚葉に対して暴力を振るった。

でも……

「それでも、柚葉は悪くない!悪いのは俺だから……だから、泣くなよ……」

俺は柚葉に近づいて、そのまま抱きしめる。

暫くその状態のまま、俺は柚葉が落ち着くのを待ったのだった。


「……ありがとう、もう落ち着いたから大丈夫」

柚葉がそう言うので、俺は彼女から離れる。

そしてそのまま隣に座った。

「……なあ、何であの時あそこにいたんだ?」

「……あなたを探してたの。あの時の事を謝りたくて……それで寮、学園、駅にも行ったんだけどいなくて……もうどこか遠くに行っちゃったのかなって……でも、もしかしたら海の方にいるんじゃないかなって思って行ってみたの……そしたら、あなたが丁度海の中に入って行くのが見えて……それで、急いで私も海の中に入って、あなたを抱えて砂浜に上がって……」

俺の抽象的な問いに、柚葉は何を聞いているのかを理解して答えてくれる。

成る程、そうだったのか……

恐らく、俺の決断がもう少し早かったら、柚葉は俺の事を見つけられなかっただろう。

そうすれば俺は死んで、意識は現実世界へと戻っていたはずだ。

だが、そうはならなかった。

「……息、してなかったのよ……手遅れだったんじゃないかって焦って……」

「そうか……」

彼女はまた泣きそうになりながら、俺の顔を見て言う。

「もう、あんな事しないで」

そう真剣な顔で言われる。

「……」

俺はそれに対して頷く事が出来なかった。

すると、そんな俺に柚葉が抱きついてくる。

「お願い……もう死ぬなんて、馬鹿な事考えないで……」

そう必死に訴えかけてくる柚葉。

「でも、俺は……」

「もういいの……もう、あなたの気持ちは分かったから……だから、せめて死なないで……」

「……でも、俺の事が怖くないのか?俺、柚葉に乱暴な事したんだぞ?」

「……それは……怖かったけど……でも、あなたが死ぬ方がもっと怖いから……」

ここまで言われてしまっては、流石にもう自殺なんて出来ないよな……

「……分かった……本当に、ごめん……」

「ううん……私こそごめんなさい……」

俺達は暫くの間、お互いに抱き合ったままだった。


それから俺達はお互いに向き合い、話をする格好となる。

「本当にごめんなさい」

「いや、俺の方が悪いんだ。柚葉は悪くないよ」

「でも……」

「分かった、分かったから!もうこの話は終わりだ!このままじゃあ、ずっとこのやり取りが続くだけだし!」

俺がそう言うと、柚葉も渋々といった感じで頷いてくれる。

「そんじゃ、これで話は終わりだ。もう遅いし、柚葉は部屋に戻って……」

そこまで言った時だった。

俺は突然倒れた。

「え、レイ!?」

そんな柚葉の叫び声を聞いたのを最後に、俺の意識は途絶えたのだった。

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