20話
遂に試合が始まる。第1闘技場の控え室にいる俺は、今から行われるメリーさんとダラスさんの試合をモニターで見ていた。メリーさんは金髪の美女だった。ダラスさんは丸刈りで体格がよく、身長も高い男の人だ。
「それでは、始め!」
合図とともに両者走り出した。そしてダラスさんは槍で攻撃を仕掛けるが、メリーさんはそれを軽やかなステップで避ける。そしてメリーさんが一気に近づいて、ダラスさんの腕を剣で斬りつけようとする。しかし、それをダラスさんは半身になって避け、逆に槍で攻撃してきた。それに対してメリーさんは無理矢理横に飛んで避けた。
「今はダラスさんが優勢なように見えるな」
そう思っていると、メリーさんが仕掛けた。ダラスさんに向かって行く。そこでダラスさんは槍での突きを連続で放ってきた。しかしメリーさんはそれを全て剣で受け流し、徐々に近づいて行く。そしてダラスさんを剣の間合いに捉えた時だった。今までとは段違いの速さで剣を振るう。それで槍を弾かれたダラスさんは一瞬隙が出来て、そこをメリーさんは返す刀で斬りつけた。それを受けたダラスさんは倒れた。
「試合終了!勝者、メリー・マガル!」
そうして試合はメリーさんの勝ちで終わった。
「成る程な。あの剣を振るうスピードは脅威だな」
メリーさん自身も中々の身のこなしで、隙がなかった。ダラスさんも負けはしたが十分強い。
「これは楽しみだな」
俺は1時間後のダラスさんとの試合に向けて集中するのだった。
コンコンコン。
「はい」
「そろそろ試合の時間ですので、準備をお願いします」
「分かりました」
俺は返事をして、立ち上がった。
「さて、頑張りますか」
そう呟いて、俺は控え室を出た。
「それでは次の試合を行います。両者、入場してください」
俺が入場すると、反対側からダラスさんが出てくる。そしてお互いに近づいて言葉を交わす。
「君が難波君か」
「はい」
「俺はダラス、よろしくな」
「よろしくお願いします」
そう言って握手をする。
「俺は全然疲れてない。だから遠慮せずに全力で来てくれ」
「もちろんです」
俺がそう言うと、ダラスさんは満足そうに頷き、自分の位置に戻って行った。俺も自分の位置に行く。そして刀を出し、構える。
「両者、準備はいいですか?」
俺とダラスさんは頷く。
「それでは、始め!」
ダラスさんは先程とは違い動かない。俺の出方を伺ってるんだろうな。
「行きます」
俺はそう言って走り出す。そしてダラスさんまであと2メートル程の所で、槍の攻撃がきた。俺はこれを刀で受け流し、ダラスさんに近づく。しかし、今回はダラスさんもバックステップをして、俺との距離を縮めないようにしてきた。
「さっきと同じ手でやられたくはないからな!」
そう言って、再び槍で攻撃してくる。俺は追うのをやめ、その場で止まる。
「ほう。追ってこないか」
「あのまま追っていたら、もしあなたが止まったら槍でやられるかもって思いましてね」
「そうだな。あのまま追っていたら俺は止まり、お前を槍で突き刺して倒していただろうな」
やはりか。面白いな。
「行きます」
「ああ、来い」
俺は再び走り出す。そしてダラスさんは俺を槍で攻撃してくる。それを今度は避けつつ、何とか近づこうとする。しかし中々近づけない。
こうなったらやるしかない。
俺は槍を避けつつタイミングを見計らう。
……今だ!
「ふっ!」
俺は斜め上に飛んだ。そのまま剣技を放とうとする。
「心証流秘剣ー雫」
刀の切先をダラスさんに向け剣技を放つ。
「がっ!」
もう少しで刀の切先がダラスさんに届くという時、俺の足に痛みが走った。
何だ?
足を見ると、槍が刺さっていた。俺はそのまま攻撃を続けるが、ダラスさんは避けてしまう。俺は何とか着地し、横に飛んで距離を取った。
「ぐっ!」
まともに攻撃を食らった。これはやばいな。
「今の攻撃、中々よかったぜ。でも俺の方が上手だったな」
そのようだ。恐らくあの一瞬で槍を引き戻して、手首を捻る事で槍を俺の足に突き刺したんだろう。すごい人だ。
「流石にやりますね」
「まあな。俺もこの学院で2年間訓練をして、代表になってるんだ。そう簡単にはやられないさ」
そうだろうな。3年生の代表になるような人だ、弱いわけがない。それでも……
「それでも、勝たせてもらいます」
「いや、勝つのは俺だ」
覚悟を決めて、勝ちに行く。
俺は正眼に刀を構え、ゆっくりとダラスさんに近づいて行く。そして槍の攻撃範囲に入った。
「はっ!」
ダラスさんは一気に槍で攻撃してくる。俺はそれを集中して見切る事で少しの動作で躱す。そこを刀で横から叩く。するとダラスさんは槍を急いで引き戻す。
ここだ!
「はあ!」
俺は刀を上段に構え、そのまま振り下ろす。しかしそれを見たダラスさんは槍で俺の刀を受けようとした。しかし、それは俺の狙い通りだ。
「心証流秘剣ー歪」
左手に持っていた刀を落下させ、下に添えていた右手で掴み、水平斬りを放つ。
「ぐあああ!」
これに対応出来ずに、ダラスさんは膝をついて倒れた。
「試合終了!勝者、難波レイ!」
ふう。何とか勝てた。
俺は控え室に戻るため、歩き出したのだった。
俺は今控え室で次の試合が始まるのを待っている。次の試合はメリーさんとだ。また厳しい試合になるな。
「それにしても、ダラスさんとの試合で剣技を2つも使ったな」
俺はダラスさんとの試合で、雫と歪の2つの剣技を使った。もう今まで使った剣技だと、残ってるのは焔だけだ。
「恐らく、メリーさんにはどれも通用しないな」
さっきの雫と歪はモニターで見ていただろうし、焔も俺程度の練度じゃ通用しないだろうな。
「さて、それを踏まえてどうするかだが」
マジでどうするかな。これから先何があるかわからないから、あまり剣技を晒したくないんだよな。
「まあ何とかしたいけど、多分無理だよな」
あのレベルの相手に剣技を使わずに勝つのは無理だ。師匠なら出来るだろうが、俺はその領域に到達していない。
「しょうがない。一応焔、雫、歪の3つを軸に戦うか」
それで無理なら、その時は……
「よし、覚悟は決まった。あとは全力でやるだけだな」
俺は試合が始まるまで精神統一していた。
コンコンコン。
「はい」
「そろそろ試合の時間ですので、準備をお願いします」
「分かりました」
さて、最後の試合だ。
「行くか」
俺は気合を入れて、入り口に向かった。




