201話
俺は対戦が終わった後、ステージから降りてそのままドームを出て行く。
神藤先輩は既に保健室へと運ばれ、観客である生徒達も各々ドームから出て行くところだ。
この後、広場に集まって閉会式のようなものがあり、それにて卒業セレモニーは終了となる。
しかし、俺は広場へは向かわずに保健室へと向かったのだった。
保健室に入ると、理事長がいた。
「難波か。先程の神藤との対戦、見事だったぞ」
「ありがとうございます」
「それより、お前のあれは何だ?」
理事長が言っているのは、王化の事だろう。
「あれは俺の力ですよ。ある日突然使えるようになったんです」
少し苦しい言い訳だが、理事長はそれ以上は聞いてこなかった。
「そうか……それで、お前はここに何をしに来たんだ?」
そして態々話題を変えてくれる。
その気遣いにありがたく甘える事にした。
「えっと、俺がここに来たのは神藤先輩の様子を伺うためなんですけど……」
「ああ、それなら大丈夫。問題ないよ」
ベットの方から声がしたのでそちらを見ると、ベッドに横になっていた神藤先輩が上半身を起こしてこちらを向いていた。
「あ、神藤先輩!」
「神藤、もう起きても大丈夫なのか?」
「はい、さっきも言った通り大丈夫です。難波君も、心配してくれてありがとう」
「いえ、俺がやりすぎたせいで神藤先輩が倒れたんです。本当にすみません」
俺はそう言って頭を下げた。
「ははっ、そんな事はないさ。君は僕の頼みを聞いてくれたんだ。僕の方がお礼を言わないといけないくらいだよ」
そう笑顔で神藤先輩が言う。
俺はその笑顔を見て、それならよかったと思ったのだった。
「でも、君はこれから大変かもね」
「え、どうしてですか?」
「自分で言うのもなんだけど、僕はかなり世間から注目されてたんだよ。そんな僕に勝った君は、この先どうなると思う?」
……そんなのは決まってるよな。
「……神藤先輩と同じか、それ以上に注目されるって事ですか?」
「その通りだよ。理事長もそう思ってますよね?」
神藤先輩は、今まで黙っていた理事長に話しかける。
「ああ、そうなるだろうな。まあ、少し注目されたぐらいでこいつが動じるとは思えないがな」
ひでぇ……俺だってあまり注目されるのは好きじゃないんだけど……
「まあ、お前の事は私が責任を持つさ。お前をこの学園に入れたのは私なんだからな」
そう言う理事長。
ちょっと格好いいと思ってしまったが、実際格好いいよな。
「よかったね。でもいいなー、僕の時は何もしてくれなかったのに」
「お前は神藤という後ろ盾があるだろ。だが、こいつには何もない。お前とは条件が違うんだ」
「まあそうだね……それじゃあ、広場に戻ろうか」
「そうだな。難波、行くぞ」
「え、あ、はい」
そこで話は終わりとなり、俺達は保健室を後にしたのだった。
その後広場に向かうと、もう解散となっていた。
俺はそこで理事長と神藤先輩と別れ、そのまま寮に戻る事にした。
「あ、レイ!」
すると、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、そこには柚葉達がいた。
「どこ行ってたの?」
「ああ、ちょっと保健室にな」
「もしかして、神藤先輩の様子を見に?」
「ああ。俺が行ったら丁度目が覚めて、大丈夫そうだったよ」
「そう、よかったわね」
「ああ。そんじゃ、俺は寮に戻るよ」
俺はそう言って寮に向かって歩き出す。
「え、ちょっと待ってくださいな!」
そこで、英玲奈が呼び止めてきた。
「えっと、この後食堂に行って何か食べようって話してたんですけど、レイさんもどうですか?」
有紗が俺を誘ってきた。
柚葉と英玲奈も俺の返事を待っている。
……そうだな……
「……今回は遠慮しておくよ」
「「「え……」」」
3人は俺が断ると思っていなかったのか、すごく驚いていた。
「さっきの対戦で疲れてな。だから今回はやめとく。また今度誘って。そんじゃ」
俺はそう言って歩き出した。
今度は誰も呼び止めなかった。
俺は部屋に戻ってくると、ベッドに腰掛ける。
「……ちょっとやばいな」
俺はそのまま倒れ込んだ。
さっきの誘いを断ったのは、別に面倒だったからというわけではない。
本当に疲れたのだ。
「……てか、これは疲れたってよりしんどいだな」
なぜこんなにしんどいのかと言うと、恐らく神藤先輩との対戦でダメージを食らいすぎたのだろう。
神藤先輩の一撃一撃は、それ程の威力があった。
正直、最後の一撃を食らってたら数時間は寝込んでいただろう。
「……対戦中はアドレナリンが出てたから、そこまでしんどさは感じなかったんだけどな」
……少し休むか。
そう思うとすぐに睡魔が襲って来て、俺はそのまま眠ってしまったのだった。
「……くっ……あー」
俺は目を覚まして、時計を見る。
すると、午前1時となっていた。
うわ、こんな時間まで寝てたのかよ。
俺は一旦起きて服を脱ぎ、そのまま籠に入れる。
その後シャワーを浴びてから着替える。
「……明日は休みだし、このまままた寝るか」
俺はそう考え、またベッドに横になって眠りについたのだった。




