18話
俺達は第3闘技場の控え室にやって来た。これから試合が始まるので、呼ばれるまで待機だ。
「それにしても、やっぱG組のやつらは強いよな」
「それはそうだよ。昨日の試合を見ても分かるじゃん」
「そうだけどよー。俺、あの剣を使うやつの相手出来るかな。G組のリーダーでもあるし、動きもよかったから厳しそうなんだけど」
「出来るさ。トーレスの攻撃速度なら、そうは捕まらない」
「そっか。まあ強いやつと戦えるのは嬉しいし、頑張るわ」
「ああ」
「私もシュウを全力で守るね!」
「ありがとう。僕も頑張るよ」
「頼んだぜ、2人とも」
「私は槍の人ですよね。頑張って懐に入る事が出来れば、チャンスはあると思います」
「そうだな。何とか槍を掻い潜ってくれ」
「はい!」
「レイも頑張ってね。あの脚甲の人中々強かったよ」
「そうだな。まあ何とかするさ」
「レイならいけるさ!そうだ、昨日のあれって何だったんだ?」
「あれ?」
「最初のやつだよ、斬り上げのやつ。そう言えば、斬る時何か言ってたよな」
「あ、それ私も気になってた」
「実は私もです」
「僕も気になってたけど、触れちゃいけないのかなって思って遠慮してたんだけど」
みんなが言ってるのは焔の事か。
「あれは俺の剣技だよ」
「剣技?」
「ああ。前に流派の話をしただろ」
「それじゃあ昨日の技は、レイ君の流派の剣術なんですか?」
「そうだ」
「何て言う流派なんですか?」
「心証流だ」
「心証流……聞いた事ないですね」
「そりゃまあ、俺に教えてくれた師匠のオリジナルらしいからな。弟子は俺しかいないらしいし」
「そうなんですか」
「それにしても、その心証流の剣術すごかったよね」
「確かにそうだね」
「あ、もしかして入学試験の時のやつもそれか?」
「ああ。昨日のは心証流の秘剣で焔って言うんだ」
「焔か、かっこいいな!」
「あの、今度私にも見せてくれませんか!」
うおお。何かアリアの目がキラキラしてる。
「アリアは剣術が大好きだもんねー」
「はい!レイ君、ぜひお願いします!」
「俺も見たい!」
「私もー」
「じゃあ僕も」
何か面倒な事になったな……
「分かった。だから今は試合に向けて集中しろ」
「おう!」
「はーい」
「ありがとうございます!」
「分かったよ」
はあ。まあいいか。
コンコンコン。
「はい」
「A組の皆さん、そろそろ試合の時間なので準備をお願いします」
「はい」
「そんじゃ、行こうぜ!」
俺達は入口に向かう。これに勝てば優勝だ。
「それでは試合の時間になりますので、両チーム入場してください」
俺達は入場する。反対側からはG組が入場して来た。そして俺とG組のリーダーはお互いに近づく。
「よろしくな」
「ああ」
挨拶をし、握手をする。それが終わるとお互いにチームの所に戻り、武器を出す。
「両チーム、準備はいいですか?」
全員が頷いた。
「それでは、始め!」
俺達は走り出そうとした。しかし、相手が全速力でこちらまで来た。
「何!?」
「レイ君!」
「落ち着け!」
俺はそう指示を出した時、相手はもうこちらに来ていた。何て速さだ。
トーレスには銃を持ったやつが、アリアには脚甲のやつが来た。これは俺達の作戦とは違う。少しまずいな。見ればシュウの所には盾を持ったやつが1人で向かっている。そして盾で戦っている。何てやつだ。
「余所見していていいのか?」
「!」
俺の所には剣を持ったリーダーと槍を持ったやつが来ていた。
「俺には2人かよ。過剰戦力じゃねえか?」
「そんな事はないぞ。一昨日と昨日の試合を見る限り、一番厄介なのはお前だからな」
「そうかい」
くそっ、厄介だな。この2人はチームの中でも特に実力者だ。そんな2人を相手にするのは正直しんどいな。
「はっ!」
そんな事を考えている間に、相手のリーダーが剣で攻撃してきた。それを横に飛んで躱す。
「ふっ!」
しかしそこに槍での攻撃が来たので、転がって避ける。
「まだだ!」
今度は転がった先に相手のリーダーが剣を振り上げていた。
「くっ!」
これは避けれないので、俺は仕方なく刀で受ける。そこに再び槍での攻撃が来た。無理矢理剣を押し返して避けようとするも、相手の膂力も相当なのに加え、俺は跪いている体勢なので、剣を押し返す事が出来ない。
くそ!こうなったら食らうしかない!
俺は右肩で槍の攻撃を受けた。
「ぐうっ!」
痛え!だがそうも言ってられねえ!
俺は左腕に力を込めて、無理矢理押し返した。そしてすぐにそこから離脱する。
「今ので仕留められなかったか」
中々の強さだ。それに連携も上手い。これはやばいな……
見れば、トーレスとアリアも苦戦している。シュウは苦戦こそしていないが、相手が盾なので中々攻めきれないでいた。
このままじゃ負けるな……仕方ない。
俺は刀の切先を地面すれすれに構える。
「行くぞ」
「来るか」
俺は走り出す。相手のリーダーに向かって弧を描いて。
「その技は昨日も使ってたな!」
そう言って俺の刀ではなく、俺の全身を見ていた。それは正解だ。焔は全身の動きを見られると、いつ斬撃を繰り出すのかが分かる。それを分かっていて、尚且つ出来るという事は、中々の実力者という事だ。殆どの人は分かっていても、どうしても剣か腕を見てしまうからな。
「はあ!」
俺が相手のリーダーの前まで来た時、先に剣を振り下ろしてきた。しかし、それは俺の狙い通りだ。
「ふっ!」
俺は上へ飛んでそれを躱す。そして後ろの槍を持った相手に刀の切先を向ける。
「心証流秘剣ー雫」
俺は垂直に落下する。そして刀を右肩に突き刺した。
「ぐわあああ!」
槍を持った相手は倒れた。これで数的には有利だ。
「この!」
後ろから相手のリーダーが攻撃してくるが、俺は前に飛んで避ける。そして一旦距離を開け、相手のリーダーと対峙する。
「最初の構えはブラフだったのか」
「そうだ。昨日の試合を見てたなら、絶対警戒してくると思ってたからな」
「まんまと嵌められたわけか。だがまだ試合は終わってねえ。お前を倒せばこっちにも勝機はある」
「そうだな」
俺は考える。このまま相手のリーダーと戦ってもいいが、他のみんなの援護に行った方がよさそうだ。なら出し惜しみせずにやるか。
俺は刀を正眼に構える。
「行くぜ」
「行くぞ」
俺と相手のリーダーは言うと同時に走り出した。どんどんお互いの距離が縮まる。そしてお互い間合いに入った。
「はあ!」
「ふっ!」
相手のリーダーが剣を振るうのに合わせて俺も刀を振るう。しかし、その瞬間相手のリーダーが剣を止めた。
そうか。俺の刀を避けてから斬りつけるつもりか。
予想通り、俺が右肩から左脇腹まで斬り裂こうとしたのを、体を傾けて避けようとした。
このままじゃやられる……もうやるしかない!
「はああ!」
俺は左手に持つ刀を下に落とす。
「!?」
そうして落ちてくる刀を下に添えていた右手で掴む。そしてそのまま水平斬りを放つ。
「ぐあああ!」
これが決まり、相手のリーダーは倒れた。
「心証流秘剣ー歪」
俺はそう呟いて、アリアの所に向かった。
「アリア!」
「レイ君!」
「何だと!?」
俺はアリアが戦っている相手に対して、水平斬りを放つ。
「くっ!」
相手はそれを横に飛んで避ける。
「何とか間に合ったな」
「レイ君の方は終わったんですか?」
「ああ」
「流石ですね」
「まあな」
そんな事を話しながら相手を見る。
「アリアはトーレスの所に行ってくれ」
「大丈夫ですか?」
「ああ、もちろん」
「分かりました」
そう言って、アリアはトーレスの所に向かった。
「行かせねえ!」
「それはこっちのセリフだ」
俺は相手がアリアを追おうとするので、それを阻止する。
「くそ!」
「はっ!」
相手は脚甲での攻撃を繰り出すが、俺は刀で往なす。それを何回か繰り返すと、焦っているからか相手の攻撃が単調になってくる。そこで俺は相手の脚甲を往なすのではなく押した。
「何!?」
すると相手はバランスを崩す。
ここだ!
俺はその隙を逃さずに刀で袈裟斬りを放つ。
「うぐわああ!」
そして相手は倒れた。周りを見ると、トーレスとアリアは終わっていて、シュウ達の所に行っていた。そちらの方ももう終わりだった。
「試合終了!A組の優勝!」
観客が湧く。
「終わったな」
そう思った途端、俺はその場に座り込んだのだった。




