12話
俺は今入学試験を受けるために王立アセンカ学院にいる。中に入ると教室へ案内された。ギリギリに来たので俺は最後だった。
少しすると、担当の教師がやって来た。
「今から筆記試験を開始します。最初は国語です」
そして問題用紙と解答用紙が配られる。全員に行き渡ったところで先生が確認をする。
「問題用紙と解答用紙が足りない人や白紙の人などはいませんか?」
誰もいないのを確認する。
「では、始め!」
その声と同時にみんな解答を始める。
さて、俺もやるか。
その後、数学、理科、昼休みを挟んで歴史と全ての筆記試験が終わった。特に難しい問題もなく、全て答える事が出来た。残すは実技試験だけとなった。
「では、実技試験を始めます」
遂に実技試験が始まった。俺の順番は最後だ。
「これからここにいる試験官と試合をしてもらいます。制限時間は3分です。試験官は攻撃を一切しません。みなさんは思う存分攻撃してください。盾が武器の人は私が相手になります。内容は1分間私の攻撃を防いでください」
成る程な。俺が相手をするあの試験官の人は防御型の武器なんだろう。その人に攻撃するとなると、どのように立ち回るかや虚をつくかが大事になる。まあ倒さないといけないわけではないから、落ち着いてやれば大丈夫だろう。
「それでは最初の人、どうぞ」
そうして実技試験が始まった。
次々と受験生が実技試験を受けていくが、今のところ誰も試験官に攻撃を当てる事が出来ていなかった。あの試験官は中々の実力の持ち主で、ここにいる受験生の殆どが攻撃を当てる事は出来ないかもしれない。もう1人の試験官も強い。盾での防御が間に合わない子も出てくる程の速さで剣を振るっている。
そんな事を考えているうちに、試験は進んでいく。
「では最後、どうぞ」
「はい」
名前が呼ばれたので返事をする。
「君の武器は?」
「刀です」
「では、彼が君の相手だ」
「はい」
そう言われ、俺は試験官と対峙する。
「では、始め!」
「リベレイト!」
ブンッ!
俺は武器を出す。
「何だあれ!」
「色が」
「うん。透明だね」
みんな俺の武器の色に驚いていた。
「珍しい色だな」
「ええ、まあ」
それだけ返すと、俺は一気に試験官に詰め寄った。そして上段斬りを放つ。
「ふっ!」
しかし、その攻撃は簡単に盾で防がれた。まあ今のが決まるわけない。俺はそのまま返す刀で斬撃を放っていく。しかしどれも防がれてしまう。
「あいつすげーな」
「でも攻めきれない」
そんな声が聞こえてきたが、その通りだ。このままでは攻めきれずタイムアップになってしまう。残りの時間は1分程か。なら、もう使うしかない。
俺は一旦後ろに下がる。
「もう体力が切れたのか?」
「そうじゃないですよ」
そう言って、俺は刀の切先を地面すれすれに構える。そしてそのまま弧を描いて走り出した。
試験官も警戒していて俺の刀を見ている。だが、それはやってはいけないことだ。そしてそのまま試験官の前に来た。今だ!
「心証流秘剣ー焔」
俺は試験官から刀を隠し、そのまま斬り上げを放つ。
「な!?」
試験官は驚愕し、盾を出すことができなかった。そしてそのまま試験官は倒れた。
「……」
みんな黙り込んでしまった。
「あのー」
俺が審判の人に声をかける。
「あ……そこまで!」
そのまま実技試験も終了し、最後は今後の予定を伝えられて解散となった。
俺はさっさと帰ろうと思い、一番最初に学院を出た。
「ふう。正直、そんなに強そうなやつはいなかったな」
まあ現段階での話だから、学院に入ってから強くなるやつもいるだろう。それに実力を隠してるやつもいるかもしれないからな。
そうして俺は行きとは違い、少しゆっくりと孤児院に帰った。
そして試験の日から1週間が過ぎた。俺は今再びミリアス王国に来ている。理由は今日が入学試験の合格発表の日だからだ。学院の近くまで来るとたくさん人がいる。
「特待生で受かってるといいな」
そう思い、俺は学院の中へ入って行った。
俺達は学院の中にある第1闘技場に来ていた。ここで発表があるらしい。
暫く待っていると、この学院の教師の人達がやって来た。
「今から合格者の発表をします」
そうして教師達が合格者の名前が書かれた紙を張り出した。みんなそれを見て喜んだり悔しがったり泣いたりと、色々な反応をしていた。
「俺は……」
俺は最後に名前が書かれているはずだ。そう思って最後を見る。
「あれ……ない」
何回確認してもない。最初から確認してもない。どこにもない。
「……落ちたのか」
マジか……しゃーねえ。シスターには悪いけどやっぱ旅に出るか。
そう思って帰ろうとした時だった。
「難波レイ君はいますか?」
教師の人が俺の名前を呼んでいる。何だ?
「はい。僕が難波レイですが」
「ああ、君か。君は今回の入学試験の成績が最もよかったから、特待生としてこの学院に通って欲しいんだ」
「え?特待生?」
マジか。落ちたと思ってたんだが。
「落ちたんじゃなかったんですね」
「ああ。特待生の子は別の紙に書かれているよ。ほら」
そう言って指差された方を見てみると、特待生の文字の下に俺の名前が書かれた紙が今張り出されたところだった。
「そうだったんですか」
「君には特待生としてぜひこの学院に通ってもらいたいんだ。これに必要書類が入っているから1週間以内に提出して欲しい」
「分かりました。ありがとうございます」
そう言って俺は書類の入った封筒を受け取る。
「それでは失礼します」
「ああ。気をつけて帰りなさい」
そうして俺は帰った。シスターに報告しないとな。
「シスター、ただいま」
「おかえり。どうだった?」
「受かったよ。これ、特待生用の書類だって。シスターにも一緒に確認してほしい」
「あら!本当に特待生になったの!すごいわ!」
「ありがとう」
「じゃあ書類を確認する前にまずは晩ご飯にしましょう。今日はいつもより豪勢な料理を作るわね」
「うん。楽しみにしてるよ」
その後はシスターと晩ご飯を食べ、書類に必要事項を記入した。そして次の日に学院まで行き、書類を提出した。これで2週間後に俺は王立アセンカ学院に入学する事になったのだった。
2週間後。俺は孤児院の前にいる。これからはミリアス王国で学院が用意した家に住むので、俺は孤児院から出て行く。必要なものは学院が用意してくれるらしく、本当に何も持って行くものがない。そのため俺は小さな鞄だけ持っている。
「頑張ってね」
「ああ。今までお世話になりました」
「気をつけてね」
そうして俺はミリアス王国へ向かった。
「ここが俺の家か」
俺は今ミリアス王国にいる。そして王立アセンカ学院が用意した家に来ていた。
「結構でかいな」
2階建の一軒家で周りには家はなく、自然が多い。住宅街や商店街からは少し離れ、学院へは普通の人で徒歩10分程だ。それにでかい。俺しか住まないんだからもう少し小さい家でよかったのに。
「取り敢えず中に入るか」
中に入ると、玄関は広く、廊下も長い。1階は2LDKだ。2階は寝室、書斎、空き部屋となっている。
「……広すぎ」
広すぎる……何でこんなに広い家を用意したんだ……
「まあいいや。一先ず掃除でもするか」
学院が用意してくれた時に掃除もしてくれていたみたいだが、やることもないので掃除をする。
「それが終わったら修行するか」
俺は早速掃除を始めるのだった。




