117話
「勝った……のか……」
俺はそう思って、ドラゴンの背中からから飛び下りる。
ドラゴンの顔の方へと足を運ぶと、ドラゴンは目を瞑り動く気配はない。
「終わったんだな……」
俺は安堵し、その場で脱力する。
「難波さん!」
「終わったんですね!」
そこで、ローデンさんとケシリーさんがクロに乗って俺の方へ来る。
「はい。何とか勝ちま……」
その時だった。
「グウアアア……」
「!?」
ドラゴンは目を開け、こちらを見た。
そして、口を開けた。
「クロ、入口まで戻れ!」
「ヒヒーン!」
「え!?」
「うわっ!?」
そう指示を出すと、クロはすぐに来た道を引き返す。
俺も立ち上がると、一気に走る。
その瞬間……
「グアアアアアアアアアア!」
バン!
1発だけだが、火球を放った。
ドオォォォン!
火球が爆発し、周囲の温度が一気に上がる。
「くっ!」
俺は何とか回避して、クロの方を見る。
クロは、何とか火球が爆発する前に入口まで戻れたようで、ローデンさんとケシリーさんの2人も無事だった。
「くそっ、まだ倒せてなかったのか」
そう思いドラゴンの方を見ると、ドラゴンは飛びはしないがその場で起き上がり、こちらに向かって火球を放つ準備をしていた。
「飛べないなら、こっちにだってやりようはある!」
俺は一気に走り出し、ドラゴンに近づいて行く。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ボン!ボン!ボン!
ドラゴンはこちらに向かって3発の火球を放ってくる。
「ふっ!」
バアァァァァァァァァァァン!
俺はそれを避け、後ろで起こった爆発を無視してそのまま走る。
そしてドラゴンへと近づくと、俺は一気に刀を振るう。
「心証流奥剣ー旋風」
その場で回転し、一気にドラゴンの足を斬りつける。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
俺の攻撃はかなり聞いているようで、ドラゴンは少し後ずさる。
攻め手を緩めるわけにはいかない!
俺は今度はドラゴンの周りを縦横無尽に走り、刀を振るう。
「心証流奥剣ー吹雪」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ドオォォォォォォォォォォン!
何発か刀で斬ると、ドラゴンは俺の一撃の重さにドラゴンは耐えかねたようで、その場で倒れる。
「これで終わらせる!」
俺はドラゴンの顔の方へと向かった。
そして、ドラゴンの目の前で俺は体を半身にして、刀を持った左腕を後ろに引く。
そのまま一気に刀で突きを放つ。
「心証流秘剣ー楔」
グサッ!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
俺の刀はドラゴンの目に突き刺さり、ドラゴンはあまりの痛さに悲鳴をあげる。
そして次第に動かなくなり、そのまま消滅したのだった。
「……終わったのか……」
俺はドラゴンが消滅した事で、完全に終わったのだと理解した。
そして、目の前にはドラゴンの魔晶石があった。大きさは、直径で10メートル近くはありそうだ。
それを確認すると俺はその場で座り込み、覇王化も解除されてしまった。
「難波さん!」
「今度こそ終わったんですね!」
そこで、クロがローデンさんとケシリーさんの2人を背中に乗せ、俺の所へ向かって来ていた。
俺はもう何も言葉を発する事もなく、手を上げただけで返事の代わりとする。
そして一気に疲れが押し寄せてきて、俺はそのまま意識を失ったのだった。
……ん……ううぅ……
「……うぅ……」
「あ!気がつきましたか!?」
この声は……
「……ローデンさん?」
「はい!そうです!」
俺は目を開けると、俺の顔の前にローデンさんの顔があった。
どうやら、膝枕をされているようだ。
「すみません、今起きます」
「あ、そんなに無理しないでください!」
「いえ、もう大丈夫ですから。ありがとうございます」
俺はそう言って、起き上がる。
そして、周りを見渡すと……
ケシリーさんが、魔晶石の所で何かしていた。クロはローデンさんの隣で座っている。
「あ、難波さん!気がついたんですね!」
ケシリーさんが、俺の方を向いてそう言ってくる。
「はい。それより、何をしているんですか?」
「あ、はい、今はこの魔晶石を鑑定しているところです」
俺が聞くと、ケシリーさんはそう答える。
「え、鑑定という事は、それを持って帰るつもりですか?」
「え、持って帰らないんですか!?」
いや、そんなに驚かれても……
「流石にそれを持って帰るのは厳しいと思うんですけど……」
「私もそういったんですけどね」
「えー!?絶対持って帰った方がいいですよ!この大きさだと、数億円ぐらいの価値がありますから!」
「あんな事言って、聞かないんですよ」
ローデンさんも困っていた。
「……でも、確かにそこまでの価値となると、持って帰った方がいい気がしますね」
「そうでしょう!」
何でケシリーさんがそんなに乗り気なんだ……
まあその事は置いておいて、この魔晶石をどう持って帰るかだが……
俺は立ち上がると、魔晶石の方へと歩き出す。
そして魔晶石の前まで来ると……
「リベレイト」
俺は刀を出す。
これによって身体能力が向上したので、魔晶石を持ち上げようとするが……
「……無理か……」
流石に重くて持ち上がらなかった。
「やっぱり駄目ですか?」
「はい、どうもにも重くて……」
……いや、待てよ……
俺はある事を思いつき、試してみる事にする。
「我、手にするは覇王の力」
「力を求め、力に溺れる」
「我が魂、その力を掴み」
「赫く染まるこの世の果てへと連れて行く」
「オーバーロード・ソウル・ドライブ!」
その瞬間、俺の体は紅く輝き出す。
そしてその光が収まると、俺は紅い光を纏い紅いマントを羽織っていた。刀も紅く染まっている。
「そ、それって……」
ローデンさんとケシリーさんが驚いているので、俺は説明をする。
すると、ローデンさんは気がついたようで……
「それなら……」
「はい。この力を使えば、俺の力は通常よりも上がっています。なので、この魔晶石も運べると思います。しかし、運べたとしてもまだ問題があるんですが……」
「え、まだ何かあるんですか?」
ケシリーさんが聞いてくる。
「はい。それは、この魔晶石が通路を通れないという事です」
俺が言うと……
「あ……」
「確かに……」
2人も気づき、ケシリーさんは項垂れる。
「まあ仕方ない……」
俺がそう声をかけた時だった。
ゴゴゴゴゴッ!
「なっ!?」
「え!?」
「何ですか!?」
突然、部屋が震え出したのだった。




